著者の福田康隆さんは、1972年生まれ、早稲田→日本オラクル→セールスフォース→セールスフォース日本法人で活躍。その後マルケト→アドビ→ジャパンクラウドコンサルティングの代表。
「The Model」はよく聞くし、ざっくりと理解したつもりにはなっていたのだが、ちゃんと本読んで見ようと。この本は、初版は2019年。
感想。
最高でした。
備忘録。
・長らく日本では、生産管理は細かくやるのに、営業管理はされてなかった。
・長らく日本では、営業マンはプロセスの全てをカバーしてきた。自分で商談を探し、自分で提案書を作り、自分で受注し、クレームが発生すれば自ら真っ先に足を運んで対応する。
・これを分業し、高度なリード管理と営業プロセスにする。マーケティング(webサイトや展示会、リード獲得、DM)、インサイドセールス、営業(クオリファイ、提案、交渉)、カスタマーサクセスに大別する。
・分業すると同じリズムの仕事に集中できる。目の前の顧客へと対応、新しい顧客の捜索、この二つを同時にやるのは短距離走と長距離走を交互に繰り返すようなものだ。
・分業はキャリアパスにもなる。インサイドセールス(反応営業)→インサイドセールス(ゼロからの架電)→フィールドセールス(SMB)→フィールドセールス(エンタープライズ)へと。エンタープライズ営業の即戦力を獲得するのは難しい。未経験者を採用して、この順番でキャリアステップさせていく。
・新規リードを大別すると、既に具体的に購入を検討するフェーズにあるのは全体のうち10%にすぎない。残りの25%は学生やパートナー企業などによる情報収集で購入見込みはなし。残りの65%は将来の購入可能性はあるが今すぐではない客だ。この65%を育てる(ナーチャリング)必要がある。商談に至らなかったり、失注したりした客。この65%をリサイクルする流れを作ることが肝要。なぜなら、新規のリードはいつか頭打ちになるからだ。しかも、この65%は、新規リードを獲得するようなコスト(展示会とか)をかける必要がない。
・一方で、この「ザ・モデル」を、単に「マーケティング部隊が獲得したリードを、インサイドセールス部隊が素早く架電でフォローし、商談として進められるものを営業部隊に渡す分業体制」とだけの理解に留めると、実行段階で行き詰まる。世の中はどんどん変わっている。
・一つ目は顧客の購買プロセスの変化。一昔前は、購買の主導権はサービスベンダー側にあったが、インターネットの普及や情報の氾濫により顧客側が完全に主導権を持つようになった。顧客側が情報を拾い、比較検討することが容易になった。
・だから、単にガンガン営業するのではなく、顧客の調査や検討ステージに合わせたコミュニケーションができることが重要だ。ここは、古くからOne to Oneマーケティングの概念としてあるが、暗黙知的な位置付けだった。今はそんなことない。
・もう一つのポイントは、営業効率の改善には限界があることである。ソリューション型の営業は受注率ご3割あれば優秀と評される。SFAなどを導入すると、2割だった受注率が3割程度に引き上がる程度で、これが6割とかにはならない。また、売上拡大を狙うときには、アーリーアダプターから次の新しいターゲット顧客に切り替えるので、ここで受注率が一時的に下がる。
・これらを解決するのは「今は商談には繋がらない」と判断したリードを放置せず、リサイクルすることである。これを組織的に出来るかどうかで、ビジネスの組み立てが劇的に変わる。「リード以上、商談未満」のステージにある客に、定期的なフォローを漏らさないことが大事。
・また単なる分業から、協業型にするマネジメント力も大事。CRO(チーフ・レベニュー・オフィサー)が売上極大化の責任を担い、マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスを牽引するべし。
・リードをクオリファイする時に、リードスコアリングという考え方がある。スコアを絶対的に信じるのではなく、あくまで「優先的に当たるべきリードを見つけやすくする仕組み」にすぎないことは理解しておこう。確率論の話だ。
・リードを「商談フェーズに入った」と見極めるのに、長らく「BANT条件」が使われてきたが、実はソリューション型の商材では機能しないことが多い。ソリューション型の場合、そもそも予算化が簡単にされないことが多いし、だから決裁者も決まってないから、needも timeもなかなか決まらない。
・コツは、顧客のビジネス上の課題→問題点→解決策→導入効果、のステップを丁寧に進めることだ。よくあるのは顧客のビジネス上の課題から、問題点へのシフトが強引なケース。
・ソリューション型の営業の場合、自ら競合のソリューションと比較選定してあげるアプローチも有効。相殺(どちらも強み)、差別化(自社が強い)、弱点(競合が強い)をプロットし、差別化ポイントを意思決定基準に誘導するべし。これを、自社ではなく意思決定者の身になって考えるのも重要。
・商談期間を短くするのはよく知られるポイントだが、簡単なコツは面談の前にポイントを伝えておくこと。「お会いしてから伝えます」とアポを取り、面談の場で初めて説明するから、面談の場では有能な意見がもらえず「持ち帰ります」と言われてしまいフェーズアップしない、あるいは時間だけかかるケースはとても多い。
・マネジメントが見るべき商談中リストの項目。マネジメントは管理するのではなく、各案件の現場で何が起こっているのかを理解し、改善に向けたコミュニケーションをすることが必要。①受注予定日(いつまでもざっくり期末のままだと逆算して具体化されていない)、②金額、③フェーズ、④競合、⑤フェーズ滞留日数(動かせていないことがハッキリわかる)、⑥ネクストアクション(いつまでに何するかを具体的に書いてあるか)。
・マネジメントは営業一人一人の報告特性を理解して全体を把握しよう。保守的な人、アグレッシブな人、適当な人など、この性格は簡単には変わらない。全体を統制するよりも、個性を理解してマネジメントがアジャストする方がはるかに現実的だ。
・マネジメントは、ビジネススクールなどで教えられている経営理論を軽視せず、しっかりと勉強すべし。理論だけで成功するはずもないが、セオリーを知っていて判断する人と、セオリーを知らないでカンで判断する人の成功率は圧倒的に違う。
・セールスキャパシティはちゃんと考えよう。1人いくら売り上げるから、人数を倍にすれば売上も倍、にはならない。新しく採用した人が戦略になる期間、新しくリードを積み上げる期間などを考えると、倍になるには時間がかかる。