西谷格の作品一覧
「西谷格」の「一九八四+四〇 ウイグル潜行」「この手紙、とどけ! ~106歳の日本人教師が88歳の台湾人生徒と再会するまで~」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
これぞ体当たり取材。
中国に監視されている新疆ウイグルに、
出版社の支援も何もない、単身で乗り込み、
そこに住む人たちの「ホンネ」を聞き出そうとする著者。
しかしそこはまさに監視社会。
いたるところに監視カメラがあり、当局がいる。
それ以上に、住人そのものが疑心暗鬼で、
ホンネなどいえるわけがない。
それどころか著者が建物を撮影しようとすれば、
当局以前に住人自身が「やめろ」という。
中国にウイグルの言葉とイスラム教を奪われた住人達。
突然収容され「再教育」される住人達。
そして当局の手は著者にも伸び、
スマホデータを消されるのはもちろん、
眠らせないで尋問が続く。実質拷問だ。
ようやく許され日本に帰って、
日本にいるウイグル関係者に取材する。
ここでもなかなか本音は聞けない。
むしろ逆の考えを聞く。
沖縄の若者が標準語を話すのをどう思うのか、と。
ウイグルも元は仏教だったがイスラム教になった、
それをどう思うのかと。
中国のやり方を一概に悪く言えないのではないかと。
確かに、、、
言葉を、宗教を揃えることは国力をあげることにつながる。
これは動かしがたい。
そのほうが全体のパイが増え、一人一人が豊かになる。
そういう側面はある。
それこそアダム・スミスの分業。
生産性は格段に上がる。しかし、達成感、仕事の満足度は失われる。
トレードオフ。
これを人の生き方、でどう見るか。
明治維新初期、日本も国民に対し、今の中国のようなことをやってきた。
神仏分離で神社仏閣をやたら壊した歴史がある。
いまだ続く学校教育の原型もこのころにできている。
(だからこそ今の時代に合った教育スタイルに変えることを考えるべきなのだが)
そうして欧米列強と肩を並べた事実はある。
だけど、、、
この本のタイトルの前段一九八四は、まさにジョージ・オーウェルのそれ。
監視社会。
それを地で行くのが新疆ウイグル。1984年から40年たった今日に実現したのだ。
中国本土も似たようなものなのだろう。
日本もそこまではいかないが、犯人の追跡が「防犯カメラ」である程度できる現実がある。
全体と個。
理屈はわかるが、本能的に嫌だな。当局に監視されて自由を奪われるのは。
でもなあ、自分の考えを持たない人間が増えているのも事実。
阿部監督問題がその典型例のようにいわれているけれど。
考えない人は管理していいのかなあ、、、
でもそうなると、為政者にとって、考える人は邪魔になるだろうな、、
まえがき
第一章 110番したら54秒で警察はやってくる──ウルムチ
第二章 新疆人は砂とともに生きる──ケリヤ県
第三章 〝神なき宗教〟を信じる人びと──ホータン
第四章 女の子は後ろを振り返らない──ヤルカンド
第五章 タイガーチェア──イリ
第六章 ここには自由がある──カザフスタン前編
第七章 中国の影──カザフスタン後編
第八章 それでもウイグル人である──日本
あとがき
Posted by ブクログ
ウイグル潜行とあるが、新疆ウイグル自治区そのものは観光として行けるらしい。考えてみれば、中国に渡航できるのだからウイグルにも旅行できて当然ではある。さっきツアーを見たら一週間で50万円ほどだった。
ただ、著者は職業を偽って取材しているので潜行という表現で正しい。ちなみに、新疆ウイグル自治区は警官&監視カメラだらけとはいえ、旅行するだけなら問題はなく(写真は撮りにくそうだが)、著者のような取材記者となると俄然厳しくなるようだ。そのせいもあって著者は一時拘束されることとなる。
帯で「世界最悪の旅」とあるのは一時拘束のことを示しているのだと思う。解放はされたが、中国には5年間入国禁止になってしまったそうだ。
じつは具体的な「最悪」はそれくらいなのだが、抽象的な「最悪」はところどころで出てくる。ウイグルに着いて最初のタクシー運転手が異常なほど日本語がうまかったり(ウイグルに日本人観光客など来ない)、新疆のウイグル人たちが一様に口が重くよそよそしかったり、別の国であるカザフスタンでも当局からの監視があったりする。なかなか背筋の寒くなるような話が続く。
しかし、抽象的な「最悪」と書いたことを撤回するような形になるが、本書は新疆ウイグル自治区の現状を「最悪」と断じることはない。当然、だからといって中国の治安維持全振りで人権侵害が行われているいまの状態を肯定もしない。
これを日和見と非難することも可能だが、本書を最後まで読むと、そのような非難は無意味であることに気づくと思う。
Posted by ブクログ
今回、ウイグルの問題についての本を読み、さまざまなことを考えさせられた。中国による新疆ウイグル自治区での弾圧について知ると同時に、自分たちの歴史についても振り返らざるを得ないと感じた。日本も過去の歴史の中で、似たような問題を抱えていたのではないかと思う。
また、現代の日本に目を向けると、クルド人問題などもあり、単純に「一方が悪で、もう一方が善」と言い切れるものではないと感じた。どの問題にも複雑な背景があり、簡単な二元論では捉えきれない。
しかし一方で、すべてを相対化してしまうと、何も判断できなくなってしまう危うさもある。だからといって、極端な善悪の二元論に陥るのも違う気がする。
こうした問題は個人の善悪だけでなく、歴史や政治、社会などの構造が絡み合って生まれているものだと思う。だからこそ、簡単な答えを求めるのではなく、バランスを取りながら考え続けていくしかないのではないかと感じた。
Posted by ブクログ
2023年の新疆ウイグル。
ビジネスホテルに到着すると空港のようなX線ゲートで手荷物検索。街中を歩くと警官の数が異常に多く、交番のような警察官詰め所が数百メートルおきにあり、安ホテルに泊まろうとすると人民警察の職務質問を受けなければならなく諦める。モスクの写真を撮ると、どこからともなく警官が現れて削除させられる。監視カメラはほぼすべての店舗の入り口と電柱に備え付けられていて、タクシーの中ですら撮影、盗聴されている。
ウイグル人たちは決して本心を話さない。誰が政府と通じているかわからない、疑心暗鬼。日本の戦中の隣組のように互いに監視し合う世界。
新疆ウイグルでは強制収容所のことなど聞けるはずもなく、隣国ウズベキスタンへ。そこで強制収容所からの生還者に話を聞く。その話は悍しいものである。
しかし、隣国でもまた日本でも「本心」を語れないウイグル人がたくさんいる。彼らの家族や一族が新疆ウイグルにいる場合、ウズベクでも日本でも彼らが何かを話す、何か行動すると全てが中国政府に筒抜けで、その家族や一族に被害が及ぶ。そんなことが本書で語られる。
2023年の中国は、オーウェル「一九八四年」を凌駕する監視社会だった。著者は自身は「親中」でも「反中」でもないという。現在の中国政府のウイグルに対する統治について「こうするよりほかにないかもしれない」と思うことすらあると吐露している。
しかし、僕は怖い。