作品一覧

ユーザーレビュー

  • 自分ひとりの部屋

    Posted by ブクログ

    1. 『ダロウェイ夫人』との幸福なシンクロニシティ
    先に読んだ『ダロウェイ夫人』の、あの意識の流れを用いた斬新な作風(挑戦)が、本書で語られるような「女性と文学の歴史」に対する深い洞察や敬意、そしてウルフ自身の「執筆への凄まじい覚悟(心意気)」の上に結実したものであると深く得心がいった。2冊を同時期に読めたことで、ウルフの挑戦の重みがより立体的に理解できた。

    2. 「シェイクスピアの妹」の仮定に込められた魂
    途中と最後の締めくくりに登場する「もしシェイクスピアに才能ある妹(ジュディス)がいたら」という仮定とウルフの主張に、魂が込められていて激しく心を揺さぶられた。
    本来、創造的なものを生み出したいという欲求、頭の中のイメージを形にしたいという「意欲や欲求」は、男性も女性も等しく備わっているもの。
    にもかかわらず、男性がそれを自由に表現し生きがいにできる一方で、当時の女性の前に立ち塞がる壁は絶望的なまでに高かった。社会からも取り合ってもらえず、誰にも理解されない苦しみを、一人胸の内で握り潰すか、あるいはその葛藤に苦しめられて命を絶ってしまう構造があった事実に胸が締め付けられる。

    3. ウルフの「厳しい優しさ」:慰めではなく自立の鼓舞へ
    凄惨な現実に対して、ウルフは単なる「共感・慰め・配慮」といった、甘い歩み寄りの態度を取らない。
    むしろ、そうした過酷な現実があるからこそ、「女性は年500ポンド(お金)と、鍵のかかる自分ひとりの部屋を持つべく努力しなさい。それがあなたの自由と幸せになるから」という、強固で厳しい主張を突きつけている。
    この「厳しさ」こそが、ウルフの真の優しさ。ウルフ自身がその孤独な闘いの最前線に立ち、努力し続けていたからこそ、「お互いに慰め合っているだけでは、この冷酷な現実には立ち向かえない」という本質を知っていたのだと強く感じた。

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    2026年06月12日
  • 自分ひとりの部屋

    Posted by ブクログ

    ヴァージニア・ウルフは、わたしの母校で英文科を選択すると、避けて通れない。彼女のエッセンスは、すべての学びのベースになる。
    文学とフェミニズムの変わり目に位置し、当時の試みや思想の体現者ではないかと。
    フェミニズムの台頭と言っても 決して 男女同権のために男性を叩いたということではなく どうやって社会に向き合って自分がどの位置にいるのか 自分は何なのか、どのように生きていくのかということを常に考えて動いて発信した人そのものだと思います
    文学表現においては非常に感覚的で センシティブで難しくてよく分からない部分もありますが このエッセイに関しては非常に冷静でシンプルに書かれていてとても表現が分かりやすいというのが 逆に驚き
    ウルフの文学はわけわからんと思う人でも これは読んでみて欲しい
    そして フェミニズムをなんだかコワイと思っちゃう方には、こっちが本当だよ というのを知ってほしい
    それにしても、この本は日本での出版物にバージョンがいくつもあり、なんなら邦題も色々バリエーションがあるので、情報が分散してしまいますね。人気作だからのこその悩ましいところでしょうか。

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    2025年08月23日
  • 自分ひとりの部屋

    Posted by ブクログ

    この内容がほぼ100年前に書かれていた事に驚いていると、ヴァージニアウルフの語る主人公が自室に入る前に立ち止まり、100年後の世界を想像する場面が出てきて、こちらを覗く著者を想像する事ができた。

    また、女性の作家が作品を書く上で、差別に対する怒りを表現する事を、作品を捻じ曲げてしまうとして良しとしない内容の記載については、最近の映画や小説において社会問題を扱うものが多くあるが、それらの表現は捻じ曲げられてしまっているのだろうか?一概にそうは思えないが、今後は作品の内容や表現と根差している問題意識のバランスのようなものを考えながら読んでみたいと思った。

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    2025年05月24日
  • 自分ひとりの部屋

    Posted by ブクログ

    名著であり、100年前に書かれた驚き。あげられた理想は現代でも同じく課題になっているため、今読むにじゅうぶん値する。
    「自分の人生を生きよう」とウルフは女性に呼びかけ、あらゆることに阻まれることなく自由な経験を女性たちができるようになれば、世の中にどれだけ素晴らしい小説が女性の手によって生み出されるだろうか、と述べている。
    そのために必要なのはお金(ある種の余裕)と、1人になれる自分の部屋を持つこと。
    小説家を目指さなくても、そんな、女性が真に自由に生きられる世の中が来れば、社会も変わっていくだろうという、未来への期待が込められた批評。メアリー・ビートンという架空の人物に語らせた、物語風なのが面白い。

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    2025年03月02日
  • 自分ひとりの部屋

    Posted by ブクログ

    さすがの名著。女性と文学の歴史を主軸に、女性が教育や社会経験、そして経済的独立から遠ざけられてきたことが何を意味するのか。そして世に多くの書物はあれおよそ男性の目を通した「女性」しかほとんど描かれないことがどんなに歪んでいるか…などなど、フェミニズムについて明快に語っている。すごいと思うのは、その的確な着眼点と分析もさることながら、そうした諸問題への怒りや恨みを諌め、皮肉まじりだろうが同時代の男性識者の女性蔑視発言まで貴重なご意見として朗々と紹介するその余裕とちゃめっ気だ。まあ、言い換えれば、そのような「中立さ」を示しておかないと男性社会に受け入れられるのも難しかったのだろう。

    読んでいて思ったのは、作中でも紫式部だけ軽く紹介されているが、平安女流文学について。彼女たちが同時代のヨーロッパとは異なり(ギリシャローマにまで遡れば女性詩人はいたが)、女性でありながら優れた文学作品を世に送り出せたのは何故だったのだろう?作者が女性作家が活躍するに必要なものとしてあげる二つの要素、安定した収入と「自分だけの部屋」、前者はあっただろうがそれ自体はヨーロッパでも女官はいたはずだ。後者…もしかすると、平安時代の通い婚システムが貢献したのだろうか。多くの女性は、婚家ではなく実家で暮らせたはずで、それがより時代の下ったゴリゴリの家父長制下よりは自由が多い、執筆環境を生み出せる「自分だけの部屋」に繋がったのだろうか…?などと考えながら読んだ。紫式部や清少納言の実際の暮らしについてはよく知らないので、合っているかはわからない。

    本作から約100年。ウルフが現代を見たら何を思うだろうか。文壇での女性の活躍については、なかなか満足いただけるのでは。一方で、他の職業、たとえば棋士だったり、クラシック音楽だったりの世界では、私自身の寡聞の問題もあるがまだその限りではない気がする。他にも、彼女の語った社会的歪みで、まだまだ「あるある」として頷きながら読んだものは多い。それでも着実に、年500ポンド(概念)と「自分だけの部屋」を持っている女性は増えているし、私自身もそうだ。私自身が何かを生み出せているわけではないが、バトンを繋いでいくことで、「シェイクスピアの妹」を殺さない社会を作っていくからね、そうやって先人たちに手を振りたい気持ちだ。

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    2025年01月05日

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