<ポイント>
・現実をありのまま、認める。
・日々変化するため、執着しない。
・物事には、反応ではなく、対応である。
・「幸せ=現実-期待」
・苦しみ=痛み×抵抗。不毛な抵抗はやめる。
<ピックアップ>
〇絶え間なく変化するこの世界では、変化に抵抗したり否定したりするのではなく、再解釈し適応する能力が、ウェルビーイングにとって不可欠(推薦の言葉)
〇変化と混乱は例外的な出来事だと思われがちだが、実際はどちらも通常の出来事。あらゆるものが変化していて、自分も例外ではないことに気づく。人生は流動的なものである。私たちが思うほど、あるいは願うほど人生は安定しているわけではない。変化は痛みを伴うこともあるが、様々な利益ももたらしてくれる。
〇変化を今までとは全く異なる視点でとらえて対応する方法、これをぶれない柔軟性を習得すれば、痛み、いらだち、不安を最小限に抑えられるし、多幸感や持続的な充実感を味わいやすくなる。さらに、あなたが充実を注ぐ活動や仕事で、より良いパフォーマンスを長く維持できるようになる。
〇変化に抗おうとしても無駄。変化に抗おうとすると、健康的な人であっても疲労困憊して燃え尽き症候群や無気力に陥ることがよくある。
〇ホメオスタシス(ウォルター・キャノン)。人間は自由に生きるにいは内部環境の安定性が不可欠である。ホメオスタシスの現代的な定義は「生命システムが、比較的変化が少なくて安定した内部環境を維持しようと、変化に抗う傾向」である。ホメオスタシスは「秩序→無秩序→秩序」のサイクルを特徴とする。ホメオスタシスは、限られたケース(発熱など)で正確なお出るといえるが、当てはまらないケースも多い。新しいものに可能性を見出すよりも、古い秩序に過度なまでにしがみつこうとする傾向はある。そのような戦略も一時的には快適かもしれないが、長期的にはうまくいかなくなる可能性が高い。
〇アロスタシス(スターリングとエア)。混乱が起きると、生命システムは安定性を求め、最終的に新しい形での安定性にたどり着く。アロスタシスを「変化を経て獲得した安定性」と定義した。
〇ホメオスタシスが「秩序→無秩序→秩序」というパターンを特徴とするのに対して、アロスタシスは「秩序→無秩序→再秩序」を特徴とする。
〇ホメオスタシスでは、健全なシステムは”人生を揺るがす出来事”のあと、元の状態に戻って安定性を取り戻す(つまりX→Y→X)と考える。他方でアロスタシスでは、嫌煙なシステムは新たな状態で安定性を取り戻す(つまりX→Y→Z)と考える。
〇「主人公は安定した家庭環境で育つが、何かしらの激動または”人生を揺るがす出来事”が起きて、安心できる環境を去らなければならなくなる。主人公は思い切って新しい世界へ飛び込み、そこで障害や難題に直面する。やがて故郷に帰ってくるが、主人公のアイデンティティは同じものでありながらも変容している。この英雄の旅の原型は、仏教の釈迦であり、『ライオンキング』のシンバである。自分自身を何度も再構築することで、強くて耐久性にあるアイデンティティを維持している。
〇「非二元論」。「これかあれ」ではなく、「これであり、あれでもある」という考え方。世界は複雑で、多くのことは様々な背景があり、真実はしばしば矛盾の中に見つかる。
〇ぶれない柔軟性を身に着けることは、有望な新たな秩序にたどり着くこと。核となるアイデンティティを失わないよう維持しながら、順応し、進化し、そして成長すること。ぶれない柔軟性を持つ人は、変化をたまたま自分の身に起きたひどい出来事とは捉えない。人生に絶えず付きまとう現象、自分自身も常に参加しているサイクルだと考える。変化や混乱を対話すべき対象と捉え、あなたと環境とがダンスしているようなもの。ダンスの腕前が上がれば上がるほど、より幸せで健康で強い人間になれる。
☆第1章
〇変化は混乱をもたらす。変化に適応するのは決して容易ではない。変化は、苦痛、困惑をもたらし、健康や人間関係に悪影響を及ぼす。
〇仏教の中核的な目的は、万物が常に流転する世界で、人間が財産や計画や自画像にしがみつこうとして起きる苦悩に対処する。老子は、人生とは不確実と不安定に満ちた流動的な道であり、その根源はエネルギーの流れである。
〇2500年間で変わらない唯一のことは、変化が心と体にとっていかに負担であるか、そして変化に抵抗することがいかに不毛で不健康であるか、ということである。
〇仏教、老荘思想、ストア哲学、そして実存主義。すべてが、変化は絶え間なく起きるという必然性を受け入れて対処することを学べば、有意義で充実した深い人生を送ることが可能。変化に抵抗することは健康に悪影響を及ぼす。変化への拒絶を拒めば、変化によって健康、長寿や成長が促される。つまり、人生の流れに心を開いて変化を受け入れる。これは簡単ではない。「いったい何が起きているのか?これにどう対処できるか?」と自問し、素直に答えを出すことで、自分のストーリーを形作れるようになる。
〇トーマス・クーン『科学革命の構造』の中で、科学の進歩とは、「秩序→無秩序→秩序の再構築」と説く。
〇変化を恐れることは、色々な意味で人生を恐れること。
〇フロム『生きるということ』
存在志向の人は、自分の中の深い部分、例えば、自分の本質、中核的な価値観、どんな状況であろうとも対応できる能力などを自分のことだと認識する。所有志向(物や身分はいつ失ってもおかしくないため、人はもろい存在)は静的で、変化を拒む。存在志向は変動的で、変化を受け入れる。絶え間なく変化する現実を考慮すれば、後者が有利。
〇現実をしっかりと受け入れる。現時点ではこれが不変の現実だと受け入れる。
〇仏教には、人生は楽あれば苦ありという言葉がある。後者を経験せずに、前者を経験することはできない。
〇ぶれない柔軟性の一番中核的な要素は、人生の流れに心を広くこと。
〇ポイント「人生の流れに心を開く」
・二元論から脱却する。白か黒かではなく、白でもあり黒でもある、と考える。
・変化を拒むと、短期的には気分が良いだろう。しかし、人生の深みや味わいは失われ、能力が開花する可能性も狭めてしまう。長期的にみれば、必ず後味が悪くなる。
・多くの問題は変化に抵抗することで生じる。
・人生の流れに心を開き、変化を心から受け入れる境地に到達しよう。そうすれば、物事がうまくいき始め、現実的かつ生産的にあなた自身の道を進めるようになる。
・所有思考ではなく、存在思考を身につけると、多大なメリットが得られる。忍耐強さと柔軟性が増し、変化に振り回されなくなる。所有物に支配されなくなる。
・窮地に陥った時に、心理的免疫システムを働かせよう。すべてをありのままに受け入れたら、現実はどう見えるだろうか?これまでとは異なるやり方で現実に対処できないだろうか?
・変化がなければ、私たちの生活は退屈でつまらないものになるだろう。有意義な人生を送るには、変化に対処するしかない。
☆第2章
〇現実は期待によって捻じ曲げられる。幸福だと感じるかは、期待から現実を差し引いた結果で決まる。現実が期待と一致する、または期待以上だと、気分が良くなる。現実が期待を下回ると不満を覚える。
〇ぶれない柔軟性を身につける上で最も重要なことは、適切な期待を定めること。盲目的楽観主義や有害な思い込みに陥ったり、暗い見通しで絶望したりすることなく、適切な期待を抱く。
〇脳には、予測マシンのような働きがある。マシンのシナリオと現実が合致すればするほど、気分が良くなり、エネルギーの消費量も少なくなる。
〇「幸せ=現実-期待」という心理学的な方程式は、本質的には、生物学的な(つまり脳の)予測がどれだけ正しいかにかかっている。
〇ヴィクトール・フランクル
「悲痛な状況下での楽観主義」、八方ふさがりの絶望的な状況下でも充実感と意味を見出す。
人生における3種類の悲痛がつきまとう。
→痛みや苦痛。これは人間が肉と骨でできているが故に起きる辛さ。
→罪悪感。人間には選択する自由があるため、望んだ通にならないと自分の責任だと感じる。
→先を見通す能力。自分の命を含めた大切なものは全て変化して終わるという事実を直視する。
〇悲痛な状況下での楽観主義とは、避けられない痛みや喪失や苦しみと向き合いながらも、希望を忘れずに生きる意味を探す能力のこと。人生に苦難はつきものであること、はかなさに傷つくこともあることを認識し、受け入れ、そんな人生を予測しつつも、前向きな態度で人生を突き進むこと。フランクルは、「苦しみの中でさえも、意味は見つかるといいたいのだ」「もしその苦しみが避けられるものならば、それを取り除くことが意味のある行為になる。なぜから不必要な苦しみを味わることは、英雄的というよりもマゾヒスト的だからだ。他方で、苦しみをもたらす状況を変えられない場合でも、どんな態度を取るかを選ぶことはできる」と。
〇辛い中に喜びがある、変化は苦痛だけでなく希望ももたらす。
〇賢明な希望と賢明な行動とは、状況がどうなっているかを明確に見きわめて、ありのままに受け入れること。そして、希望的な態度で、「ふうむ、これが現在起きていることか。よし、私にコントロールできることにフォーカスしよう。コントロールできないことに執着しないよう心がけて、自分にできることを全力でやろう。これまでに何度も苦難に直面してきたし、自己不振と絶望感にさいなまれたことも何度もあるが、いつも乗り越えてきたじゃないか」と思えるようになる。
〇基本的に、希望もないのに行動するのは不可能だ。何かしら有益な結果が得られるという思いがなければ、そもそも行動する利湯がない。
〇苦しみ=痛み×抵抗。不毛な抵抗はやめる。
〇重要なことは、たとえ最初に難しそうだとか、やりたくないと思ったとしても、期待を更新して現実と向き合うこと。
〇柔軟でぶれないマインドセット
1つ目は、拒否と抵抗という負荷を手放すこと。人生の流れに身を任せ、「真に不変のものは変化だけだ」という事実を受け入れ、物事をありのままにみられるようになる。2つ目は、人生は困難なものだと予測する。困難だと予測すればすべてが楽になる。はかなさをどう経験するかそしてはかなさにどう対応できるかは、はかなさをどう捉えるかにかかっている。柔軟でぶれないマインドセットを身に着けるのは、背景や複雑さを踏まえたうえでより正確に物事を捉えることで、モノの見方(神経科学者が「予測力」と呼ぶもの)を強化するため。先入観や妄想がなくなれば、前よりも気持ちが軽くなり、物事をうまくできる。
〇ポイント「困難を想定する」
・アロスタシスには予測的な要素がある。ホメオスタシスが期待とは無縁であるのに対して、アロスタシスは期待が経験を形作る。
・幸せ=現実ー期待
・常にバラ色の眼鏡で「ポジティブに考えるべきだ」という社会的な圧力がる。だが、現実的な期待、物事は絶えず変化するし、良くなる時もあれば、悪くなる時もあるという想定を持った方が、気分が良いしうまくいく。
・脳は絶えず、次に何が起きるのかを予測し、現実に合わせて予測を調整する。予測が外れた時は、できるだけ早く現状に合わせて予測をアップデートとするほうがうまくいく。
・悲痛な状況下での楽観主義で物事を見られるようになれば、様々なメリットを享受できる。人生には悩みや苦しみが付きまとうだろうが、それでも動じることなく不屈の意志で前進しなければならないと気づけるようになる。
・大きな試練に直面した時は、極端な楽天家になっても、絶望感や虚無感に飲み込まれてもいけない。どちらもうまく現実に適応できないからだ。賢明な希望と賢明な行動にコミットするために、できることをやろう。「好むと好まざるとにかかわらず、これが現実なんだ。自分にコントロールできることに集中して、できることに最善を尽くし、この山を乗り越えて見せる」と思えるようになるだろう。
・「苦しみ=痛み×抵抗」。抵抗するのをやめれば、それだけ気分も行動力も飛躍的に良くなるだろう。
☆第3章
〇何かに打ち込むあまりにそれをアイデンティティと混同すると、不安やうつ病、燃え尽き症候群に陥りやすくなる。自我がひとつのものに結びつくとそれに執着して、切り離すのが難しくなる。流動的な自己認識を持つために自我を弱める必要はなく、ただ手綱を緩めて視野を広げるだけでいい。
〇自己を独立的であり相互依存的でもある。状況によっては、独立的な自己、つまり唯一無二で強い影響力を持つ主体的な自己を発揮するほうがうまくいくことがある。例えば、自分で色々ことをコントロールできる環境で、ほぼ単独で大きなプロジェクトをとやる場合など。他方で、他者と協力しながら働いているときや、多くのことをコントロールできない不安定な環境で働くときは、協調的で順応しやすい相互依存的な自己を発揮するほうがうまくいきやすい。
〇一番重要なスキルは、現在の自我の発現が自分の役に立つときはそれを認識し、役に立たないときはそれを捨てることを学ぶ。
〇流動的であることを認識している自我、時機が来たら、自己を見失うことなく、手放さなければならないことをしっている自我。我々が問題を抱えるのは、強いアイデンティティがあるときではなく、強いアイデンティティがひとつの仕事や人、概念にこだわり、それに執着するときだ。自分の考えに執着するときも同じである。
〇一人一人の中に多様性がある。
〇ポイント「流動的な自己認識を育む」
・まるで水のように、流動的な自己認識は隙間があればそこに入って、隙間を満たすことができる。必要であれば、同じ流儀のままで形を変え、隙間から流れ出ることもできる。
・流動的な自己認識は二元論ではない。むしろ-
→多様化されるか統合されるかのいずれかではなく、多様化され統合されるもの
→独立的か相互依存的かのいずれかではなく、独立的でもあり相互依存的でもある。
→分離しているかつながっているかのいずれかではなく、分離していてつながっていてもいる。
→いつもの自己(本を読んている自己、状況をコントロールして交差点を渡ろうと決断する自己。これがなければ毎日の生活もおぼつかない)か究極的な自己(食べているもの、かつての経験、祖先の遺伝子、吸っている空気、周りとのつながり)かのいずれかではなく、いつもと同じであり、究極的でもある自己。
・自分のアイデンティティを非二元論に概念化し、様々に矛盾するアイデンティティを受け入れられれば、その分気持ちも楽にあり、人生もうまくいく。
・自分を流動的に捉えれば、内的な変化も外的な変化も怖くなくなる。アイデンティティが柔軟でぶれなくなり、長年にわたる困難な道のりにも、「秩序→無秩序→秩序の再構築」のサイクルが何度起きようとも、めげずに粘り強くいられるようになる。
☆第4章
〇自分のアイデンティティは川と同じ。堤防は柔軟でぶれない境界線を表している。境界線は、目に見えるはっきりした道筋を作りながら、水の流れを保持し、調整する。境界線は、複数のアイデンティティを一つにまとめ、長い時間をかけてそれを形作る。
〇核となる価値観(コアバリュー)=深淵や基本的な理念。例えば、正確さ、健康、コミュニティ、精神性、責任感など。
〇コアバリューを建設的に実践できない場合、コアバリューを守るために戦うことを考えてみてもいい。
〇適応する。これは、健康や寿命や卓越性、能力を存分に発揮すること、気持ちよく善行することなどを実現するには、自分の主要な特徴、コアバリューを守り、それを促進できるように適応する必要がある。だからと言って、いつも同じ方法でコアバリューを実践するわけではない。ここで柔軟性が不可欠になる。
〇ポイント
・コアバリューとは生きる上での主義のこと。コアバリューはアイデンティティを守る強固な境界線となって、どう多様化するか、どう統合するか、己に小道を進むにはどうしたらいいかを導いてくれる。
・コアバリューは3~5ほどあるといい。それぞれを具体的に定義して、日々の生活の中で実践する方法をいくつか考える。
・足元の地盤が変わりつつあると感じた時、あるいは次の一手をどうしたらいいかわからないときは、「どうすれば、自分のコアバリューに沿った方向に進めるか?」と自問するといい。それが不可能なら、「どうすればコアバリューを守れるか?」を考えてみる。
・柔軟性とは、自分に誠実でありながら、かつ変わりゆく環境と調和しながら、自分のコアバリューをどう実践し、どう適応するかを絶えず調整し続けること。
・コアバリューは時間経過とともに変わる。現在のコアバリューに従って社会で生きていけば、ごく自然に新しいコアバリューが見つかる。
・「初期の柔軟性、その後の硬直性」とは、変化と無秩序の期間にはとりわけ価値観に基づく行動が重要になるということ。価値観に従った行動は、未来を形成を形成するうえで大きないインパクトを与える。
☆第5章
〇できることは、できるだけ自分の価値観に従って効果的に行動するようにしながら、変化とどう付き合うかを学ぶこと。
〇残心。目の前のことで頭がいっぱいな状態は危険である。次の行動に備えるために意識を傾け続けること。目の前で起きていることだけでなく、周囲で起きていることにも集中する。視野を広げたり狭めたり、様々な角度から物事を見るなどして柔軟に物事を見ること。
〇予期せぬ突然の変化に直面すると、扁桃体が活性化する。脳は、主体的な対応と反応を同時に行うことができないため、脳の機能が前者に取り組む間は、後者のような怒りのスパイラルに陥れない。主体的な対応に関わる神経回路は筋肉のようなもので、使えば使うほど強くなる。意図的な行動を取るたびに、ドーパミンが放出される。あれをしろこれをしろと指示する影響力は、思考よりも感情のほうが圧倒的に強い。そのため、人は気分が良くなる行動を繰り返す傾向がある。ドーパミンが放出されると、たとえ困難で不安定なことでさえ、気分がよくなってやり続けようという意欲が湧いてくる。ドーパミンはワクワク回路の燃料のようなもの。このワクワク回路に注がれる燃料が多くなればなるほど、怒りの回路優勢になる可能性は低くなる。ワクワク回路とこの回路の燃料となるドーパミンは、計画を立てるときや、主体的性を発揮して目標を達成しようとコツコツと段階を経るときなど、多くの行動に関わっている。その結果、不確かな状況に対して意図的に対応すると、気分が良くなり、次回はさらに慎重に対応する可能性が高くなる。ワクワク回路が優勢な時、怒り回路は自動的に閉鎖される。
〇人間は怒りやパニックなどの反応的な感情に負けてしあうことがある。この感情を、劇場を爆発させたあと、ほとんどの人は気分が落ち込む。仏陀は怒りを「甘い先端を持つ有害な根」と称している。
〇怒り、パニックといった反応的な感情を解決しないまま長期間放置すると、人は燃え尽き症候群、慢性疲労、うつ状態に陥りやすくなる。こうした心の状態は、ワクワク回路を活性化させるのが極めて困難になる。
〇認知療法では施行によって心の状態を変えるが、行動療法では行動によって心の状態を変える。わずかでも生産的な行動を取れれば、ワクワク回路が有効になり、明日以降も同じような行動を取りやすくなる。視点を変えて、どんな感情であれ、それを抱えたまま何らかの行動を取ろう。すると、気分が良くなる。行動活性化という。何かを始めれば自然と気分も上がる。
〇何から始めていいかわからない人は、自分のコアバリューを考える。次に、活性化エネルギーを戦略的に使うにはどうしたらいいかを自問する。どんな行動を取ればコアバリューを後押しし、あなたに良い刺激を与えてくれるのか?とりあえず行動して、何が起きるか見てみる。
〇怒りを燃料として生産的な行動へと邁進する。コントロールできるものとそうでないものを区別して、コントロールできるものに集中し、機械的に反応することなく、主体性を発揮して対応する。それを繰り返せば、いわゆる自己効力感と呼ばれる意識が発達する。これは、困難のさなかでも、自分は現実と向き合って意図的な行動を取れれるはずだという、実体験に基づいた新年から生まれる確かな自信である。変化に対応する自信がない人は、全てをコントロールしなければならないと思い込み、変化を脅威と感じるようになる。物事をコントロールできないと感じると、人はつい機械的に反応してしまう。しかし、自分なら変化に対応できるはずだと自信を持てば、徐々に平静を保てるようになる。
〇自己効力感を高める4段階プロセス
人が反応するときは、①パニックになって、②前進するために闘おうとする。
主体的に対応するときは、①間をおいて、②状況を整理し、③計画を立ててからようやく、④進む。
反応は早い。人は何かを感じた瞬間に反応する。対応はもっと時間がかかる。何かが起きてから、それについてあなたが何かをする/何もしないまでの間に間がある。その間、つまり距離をおく間に、反射的に沸き起こる感情を落ち着かせ、状況をより正確に理解しようとする。これが状況の生理である。そして、あなたの価値観に沿った計画を練り、そして実行する。
①間をおく
自分の感情に名前を付ける「感情ラベリング」。ラベリングすることで、距離を作り出してくれる。
②状況の整理、③計画
ありのままを受け入れる。調べ、自分と経験とを同一視せず、広い視野から経験を眺める。距離を置いて広い視野から状況を眺めるための方法として、ひとつには、予測不能な状況や変化に直面した時は、友人があなたと同じ状況に陥っているところを想像する。そのとき、どんなアドバイスをするかである。また、瞑想も役に立ち、傍観することを学べる。
④進む
実験だと思って行動する。
〇ポイント
・変化と混乱の時期には、コントロールできないものとできるものを区別する。コントロールできるものに集中。コントロールできないもののために時間やエネルギーを浪費してはいけない。
・定められた道筋に固辞すると、最高の結果を出しにくい。何かに固辞する代わりに、包括的な広い視野で好奇心を持って周囲を見渡す意識、つまり残心を発達させる。
・怒り回路が優勢になって反応しそうな状況から、主体的な対応ができるワクワク回路が優勢な状況に切り替える一番いい方法は、4段階プロセスを実践すること。
①自分の感情に名前を付けて間をおく。
②その出来事を自分と同一化せず、距離を置いて自分の状況を観察する。
③一歩距離を置いて更に広い視野で全体を見渡しながら、手持ちの選択肢を評価する。
④小さなステップを踏んで前進する。各ステップを実験だと思って、調整しながら前進する。
・機械的に反応するのが習慣化してしまったときは、”自己効力感”を発揮させる。自己効力感とは、変化や困難のさなかにあっても、自分は現実と向き合って主体的に行動を取れるはずだという、実体験に基づいた新年から生まれる確かな自信のこと。自己効力感が発達すればするほど、変化や混乱が怖くなくなる。
・あなたが情報源にしているメディアは、あなたの気質を形作る。反応を促すメディアよりも、主体的な対応を促すメディアに優先的にアクセスする。あなたの健康や社会の健全さはそうした姿勢にかかっている。
☆第6章
〇諦めることで進むべき道が見えてくる。といっても、人生を諦めることでもない。修復しようとか、問題を解決しようとか、コントロールしようとか、自分の悲惨な状況を理解しようと試みることを、諦めることである。降伏ほど謙虚な行動はない。自我を抑えるには降伏するのが一番効果的である。長い目で見ると、降伏することは人間にできる最も生産的な行動のひとつ。意味付けや個人野的な成長を望まなくなってようやく、本当の意味で前に進み始めた。
〇人は途方にくれたり、打ちひしがれりすると、”根本からの精神的な方向転換”をする準備が整うという。つまり、「自分がいの何かに『自分の進む道』をゆだねる瞬間のこと。自分にはコントロールできないことを認め、導いてほしいとか助けてほしいと宇宙にお願いする。そうすることで、方向転換するだけで意思決定が一変し、今後の生き方ががらりと変えてしまう。
〇ボランタリー・シンプリシティ(自発的簡素)、つまり、雑然としたもの、物理的なものも、心理的なものも、社会的なものも、を意図的に人生から追い出して、人生をシンプルにする。
〇自分を責めることにエネルギーを浪費しない。自分をいつも思いやるようになると、怖いもの知らずになる。自分にやさしくなれれば、いざとなれば自分が自分を支えてくれると確信しながら、こんなところへも行けるようになる。セルフコンパッションが必要である。
〇ポイント「意味を見出し前進する」
・成長と意味はそれぞれの予定でやってくる。人生に起きる入内な変化や混乱を処理するには、心理的免疫システム(病気やケガから身を守るために身体が免疫システムを発達させたように、心も同じ機能を発達させる)が機能するまで待とう。
・困難な時期には時間が過ぎるのが遅く感じられる。そのことをしっているだけで、忍耐強く踏ん張れるようになる。今日はひどい気分でも、未来は今ほどつらくないだろう。
・強引に意味付けしたり成長したりはできないが、これらを引き出すための具体的な戦術がいくつかある。
→謙虚さと降伏を実践する。と言っても何もしなくていいわけではない。修正できない状況やコントロール不能な状況を諦める、ということだ。
→支援を求め、支援を受け入れる。極端な楽観主義や生産性にとらわれるあまり、友人を疎かにしたり、コミュニティづくりを忘れたりしないよう気をつける。
→ボランタリー・シンプリシティ(自発的簡素)を心がけ、ルーティンや行事をつくろう。
→“真の疲労(心身とも疲労困憊状態)”と”偽の疲労(マンネリに嫌気がさして、心身のシステムによって疲労感があるかのように騙される状態)”を区別する。前者には休息が、後者には積極的な行動が必要。
→苦しみを自分や他者の思いやりに変えられるよう、自分にできることをしよう。
・「秩序→無秩序→秩序の再構築」の重要なサイクルを乗り越えるために、次のサイクルは少しだけ乗り越えやすくなる。
☆おわりに
〇変化を受け入れるための5つの問い
以下の問いを自問するだけで、ぶれない柔軟性を発揮して人生を形作れるようになる。
問1 変化の可能性を受け入れるほうが得策なのに(変化を避けられない場合もある)、絶対に変えたくないと執着してしまう部分はどこか?
→それを手放す。苦しみ=痛み×抵抗。ずっと同じでいてほしいと願い執着すると、事態はさらに悪化する。
問2 非現実的な期待を抱かずにいられないのは、人生のどの部分か?
→物事はずっと同じであり続けるだろうと期待すると、その期待が打ち砕かれてみじめな人生を歩むことになる。現実から期待を差し引いた結果があなたの幸福感となる。
問3 執着しやすいアイデンティティはあるか?
→一つの活動にすべてをかけるのはかなわないが、状況が変わった時のために、ほか脳可能性も用意したほうがいい。
問4 人生の難局をくぐりぬけるときに、コアバリューをどう役立てるか?
→変化や混乱や不確実な状況に直面した時、自分のコアバリューに従う方向へと舵をとったら、どうなるか、自問する。
問5 どんな状況になるとつい反応してしまうのか?自分自身がどんな状態の時に反応しやすくなるか?
〇ぶれない柔軟性を確立する10の方策
方策1 非二元論思考を身に着ける
→「誰かから何かを聞いたら、それは本当だろうかと自問してはいけない。それは何の真実の一部だろうかと自問する」「今現在、この考え方・アプローチは役に立っているか?」それがイエスなら続け、ノーならやり方を変える。
方策2 存在志向でいく
→所有志向は持っているもので自分を定義する。所有物、アイデンティティは失う可能性があるから、所有志向は本質的にもろい。何かに以上に執着すると、やがてそれに支配されるようになる。他方、存在志向は、自分の奥深くにある永続的部分を自分のアイデンティティと重ね合わせる。永続的な部分とは、コアバリューやどんな状況でも主体的に対応する能力である。存在志向は変動的で、変化人対応する際に有利に働く。特手の人、場所、概念、モノに角に執着していると気づいたら、自分は、「私は、X,Y,Zを持っている人間」ではなく、「わたしは、X,Y,Zをやる人間だと」と考える。
方策3 現実に合わせて期待を頻繁にアップデートする。
→人間の脳には予測マシンのような働きがある。適切な期待を持つよう心掛け、不確かな時は保守的で慎重すぎるぐらいの予想がいい。現実の世界にフォーカスする。
方策4 悲痛な状況下での楽観主義を実践し、賢明な願望と賢明な行動を心がける。
→世の中をありのままに受け入れる。今起きていることはこれだ。わたしは自分にコントロールできることにフォーカスし、最善を尽くす。これまでにほかに苦難や、疑心難儀な時期や絶望的な時期も経験したが、乗り越えてきた」と考える。
方策5 自己認識を積極的に多様化させて統合する
→複雑性を手に入れるには多様化と統合の両方が必要である。
方策6 独立的なレンズと相互依存的なレンズで世界を見る。
→唯一無二の個人として、また対人関係から自分と捉え、他人との興津店を見出し、それぞれの状況に適応する。独立的なレンズは、物事をコントロールしやすい状況で何かを実現しようとするときに有効に働く。相互依存的なレンズは、もっと無秩序な環境下にいるときに有利に働く。
方策7 4段階プロセスを使って変化に対応する。
→出来事と間をおく。状況を整理し、計画を立てて、やってみる。
方策8 混乱期には平穏を維持するためにルーティン(行事)をやる
→ルーティンをやると、日常的な感覚と落ち着きを取り戻せる。
方策9 行動活性化を利用する。
→気分が落ち込んでいるとき、関心が湧かないとき、それに浸ることを自分に許す。他方、何をはじめることで気分が上がることがある。
方策10 無理やり意味や成長を求める必要はない。やってくるまで待とう。
→自分にやさしく忍耐強く接する。そしてほかの人に助けを求める。
☆コアバリューのリスト
達成、冒険、感謝、気配り、正確さ、威厳、自主性、バランス、美しさ、帰属意識、大胆さ、構築、挑戦、善良な市民であること、コミュニティ、思いやり、適性、一貫性、貢献、技術、創造性、好奇心、決断力、勤勉、洞察力、規律、意欲、有効性、効率、共感的理解、公平さ、友情、楽しむこと、成長、幸せ、誠実、謙虚、ユーモア、知性、正義、親切、知識、リーダーシップ、学習、愛、忠誠心、熟達、意味、率直、楽天主義、忍耐、パフォーマンス、粘り強さ、落ち着き、実践、クオリティ、評価、評判、敬意、責任感、安全性、役に立つこと、巧みさ、安定性、地位、成功、サステナビリティ、自制、信頼、豊かさ、知恵