まずもって、一読したくらいで全容を理解できるような書物ではない。いや、理解できる日など来るのだろうか。それでも、このバガヴァッド・ギーターには現代を生きる私達にとっても活きる教訓のかけらたちが散りばめられている。
たとえばサンニャーサ(放擲)行為者は行為にのみ意識を注ぎ、行為の結果は行為の根源である
...続きを読むブラフマンに返すという考え方。
とかく「成果を出さなければ」という圧力が、外からも自分の心の内側からも湧き上がってくる。その結果、「成果が出せそう」な手元のこじんまりとした範囲でできることを探してしまうことになる。
そうではなく、ひたすらに行為に意識を注ぐことこそが行為の結果、成果につながるのかもしれない。賽は投げられた、果報は寝て待て。
この岩波文庫版は解説が充実している。また、本書の背景となるマハーバーラタについてもかいつまんだ説明がなされている。バガヴァッド・ギーターとはなんぞや、という興味をもったときに手に取る一冊として最適なのではないか。