313P
金成隆一
茨城県出身。2000年朝日新聞入社。2005~09年の大阪社会部ではトラック運転手の同乗ルポや事件の取材に没頭。2009~10年米国留学。2011年に社会部に戻ると、東日本大震災を機に米公文書館に通い、1950年代の米政府の対日本「原子力平和利用」政策を調査報道。その後、教育担当になり、オンライン教育の急速な発展を米国やモンゴル、ドイツで取材。2014~19年ニューヨーク支局員として国連本部や米社会を担当。戦闘部隊の強化など、変容する国連平和維持活動(PKO)をコンゴ民主共和国から報道。2016年大統領選では前年からラストベルトに通い、草の根のトランプ旋風を伝えた。2019~20年は東京経済部で通商政策を担当。2020年3月に機動特派員になり、米大統領選を取材。2021~23年は欧州総局員(在ロンドン)として、ロシアの軍事侵攻を受ける前後のウクライナや英イングランド北部の社会を取材。帰国後の23年9月から2年間は大阪社会部でデスク勤務しました
第36回大平正芳記念賞特別賞(『ルポ トランプ王国』『ルポ トランプ王国2』で)
2018年度ボーン上田記念賞(大統領選など一連のアメリカ報道で)
第21回坂田記念ジャーナリズム賞(「教育のオープン化」報道で)
仕事で大切にしていること
いまいち理解できない現象について、現地取材を通して、自分で考えて、背景や構造を伝える努力を大切にしたいです。
「サイレント・マジョリティーが吐き出す不満 トランプの集会後、会場の外で支持者に話を聞くと、堰を切ったように不満を吐き出した。多くが、日々の暮らしに根差す不満だった。自らの体験に基づいているので真剣そのものだ。 元教師のマリリン・マックウィリアムス( 59)がまず口にしたのは、「壁」への熱い支持だった。 「トランプは壁を建設してくれる。彼の主張がストレートなのが好き。(保守系)フォックスニュースでいつもトランプを見ているけど、見れば見るほど、彼のことが好きになるわ。こんなに大きな国の中で、彼がこの街に来てくれたことがうれしい。テキサスは不法移民問題が深刻なので選んでくれたと思う」 「街でスペイン語が当たり前になっていることが不気味。ここはアメリカなのよ」と憤りも口にした。食料品店に並ぶ商品のスペイン語表示が増えているだけでなく、時にスペイン語の表示の方が英語より大きいことが気に入らない。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「彼はポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)で批判されることを恐れていない。とても強い。経営者として常に判断を迫られてきた。そんな経験が豊富な指導者がこの国には必要なのよ」と語った。ここまではトランプへの前向きな評価と言える。 ところが、ここからは社会への不満一色になった。 「国境を守らないと国が崩壊するわよ。不法移民の流入を食い止めるべきよ。私たちは彼らにあまりにも多くの自由とお金を与えすぎた。福祉に依存するようになり、その重みでアメリカが沈みそうよ。税金を払う人がどんどん減ってきて、自宅のソファで日中からテレビを見る人が増えたら、オシマイでしょ。彼らのフードスタンプ(政府が生活困窮者に発行する食料配給券)を支えているのは、私たち働いているアメリカ人。彼らは一時的な困窮から脱する方法としてではなくて、福祉に依存することをライフスタイルにしていて、生涯それで暮らしていくつもり。それは許されない」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「今の政治家は、みんなうさんくさい。代表がヒラリー・クリントンだ。(国務長官時代に公務で私用メールアドレスを使った問題では)すべてのメールを捜査当局に提出したと言いながら、その後にまた別のメールが見つかった。信用できない。でもトランプは全部ホンネだ。彼が言うことは、彼が本当に考えていることだ。時に言い過ぎるけど、それも含めて憎めない」 この街で、最も支持されていたのは、トランプの「壁」だ。ベンジャミンも「普通の政治家はあんなこと言わないけど、このあたりじゃ多くの人が考えていることだよ。壁ができて、不法滞在のメキシコ人を追い出せば、私たちに仕事が戻ってくる。仕事を取り戻せる」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「今の政治家は、みんなうさんくさい。代表がヒラリー・クリントンだ。(国務長官時代に公務で私用メールアドレスを使った問題では)すべてのメールを捜査当局に提出したと言いながら、その後にまた別のメールが見つかった。信用できない。でもトランプは全部ホンネだ。彼が言うことは、彼が本当に考えていることだ。時に言い過ぎるけど、それも含めて憎めない」 この街で、最も支持されていたのは、トランプの「壁」だ。ベンジャミンも「普通の政治家はあんなこと言わないけど、このあたりじゃ多くの人が考えていることだよ。壁ができて、不法滞在のメキシコ人を追い出せば、私たちに仕事が戻ってくる。仕事を取り戻せる」 言い回しまで、トランプに似ている。 「キミは知らないと思うけど、ここはホントに不法移民が多い。そして私たちの社会保障制度を利用し、政府から吸血鬼のように金を吸い上げる」 演説会場からどんどん支持者が出てくる。その様子を見てベンジャミンが言う。 「みんなトランプが大好きだ。中には不法移民に家族を殺害された人までいる。不法にアメリカに滞在している人が、社会に負担をかけるのは間違っている。テキサスの人々は、この国の政治家がおかしなことばかりすれば、本気でアメリカからの離脱を主張するからね。トランプが大統領にならなければ、テキサスを独立国にする動きを活発化させたいね」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
トランプ支持者は反知性的、田舎の貧乏人ばかり、みたいに思い込んでいる人には、ぜひジャーナリスト金成さんの名著『ルポ トランプ王国』を読んで見て欲しい。取材を照れくさそうに受けるトランプ支持者達のほとんどはごく普通の労働者たちなんよ。
同性婚で盛り上がってるツイッターを見て、トランプ当選前夜のアメリカを取材した名著『ルポ・トランプ王国』でブルーカラー労働者が『政治家たちは俺たち労働者の雇用問題よりもTGがどちらのトイレを使うべきか?といったような話ばかり議論するようになってしまった』と嘆いていたのを思い出した。
「グリーンビルでは「ほとんどの人が失業中」という。「結局は雇用だね、雇用が一番の問題だ。仕事さえあれば、だれもドラッグなんてやらないよ。仕事にいかなきゃならないからね」 「若者は仕事がないと大変なことになる。トランプには海外から入ってくる鉄に高い関税をかけてもらって、競争をフェアなものにしてほしいね」 ディーンは最後に、共和党元大統領のブッシュの批判も口にした。 「この国の最大の問題は、職業政治家の存在だ。業界から献金をもらっていて、庶民よりも業界の利益を優先する。政治家にも、レーサーのような、スポンサーのロゴ入りスーツを着用させるというアイデアはどうだろうか? 一目で、あいつは製薬業界の代弁者、こいつは軍需産業の代弁者とわかるだろ?」 ディーンのアイデアに、周囲のトランプ支持者は「最高のアイデアだ」と盛り上がった。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 トマスの携帯電話には、職場の写真も保存されていた。人間の背丈の 2倍ぐらいの太さのパイプが写っていた。そこで男性が何やら作業している。トマスが自分の仕事を説明してくれた。 「ここに写っているのがオレだ。ガスの大型パイプラインを屋外で溶接している。きつい仕事だぞ、毎晩、疲労で手を握ることすらできなくなる。こうやってグーにして握れなくなる。手が痛む、毎晩痛む。もうこれ以上、働けないって思って、やっと休暇をとってバルバドスに行った。あのときのオレには、バケーションが必要だったんだ」 これまでパスポート不要のカナダには行ったことがあったが、本格的な海外旅行は 42歳で初めてだった。トマスの話は、いまの暮らしへの不安に移った。 「キミは保険に入っているか? そうか、日本の人はうらやましいな。オレはこんなに働いているのに、勤務先が掛け金を払えないと言い出して、ついに無保険になった。もう 42歳だろ、心配だよ。いつ病気になるか、わからないじゃないか。 42歳にして人生初の無保険だよ」 するとテーブルの反対側に座っていた、酔っぱらった白人の中年男性が話に入ってきた。「オレの勤務先は宅配便の配送センターだが、保険は最高だ。病院に行くことも心配にならない。大企業だから独自の保険を運用しているんだ」 トマスがうらやましがると、男性は肩を落とした。「でも時給は 13ドル(約 1500円)。ここ数年間は上がっていない。保険はいいが、(ほかの仕事にくらべると)時給は低いんだ」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「トマスは、州立大学で経営学の学位を取得したが、「ちっとも活かせていない。もし 20年前に自分の人生を巻き戻せるなら、自動車整備とか溶接とか、もっと自分の手を使ってやる技術を身につけたかった。まさに今、毎日やっていることをきちんと学びたかった」 学費の返済残高は今も 8万ドル( 920万円)。毎月 700ドル(約 8万円)の返済に苦しむ。 「 42歳でまだ、役に立たなかった学位の取得費用の返済に苦しんでいる。子どもの養育費、食費、ガソリン代、時々の飲み代を払うと、手元にほとんど残らない。笑い話じゃないんだ」 「学生は大学に通って、借金をつくり、肥えるのは大学だけ。学位なんてフェイク(偽物)だ」「トランプに何を期待するか? アメリカを再び偉大にしてくれりゃ、それでいいんだ」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「ミシェルの実家は、ヤングスタウンで約 40年続くサンドイッチ屋だ。彼女も高卒後ずっと店で働いてきた。彼女の話は、「学歴社会」への疑問と批判だった。 「祖父がサンドイッチ店を成功させたの。でも実は、彼は大学を追い出されたのよ。成功に学歴なんて関係ないのよね。彼を見ていて「人生っておもしろい」って思い、大学に進むのはやめた。祖父は「大学費用は出す」と言ってくれていたけど断った。スモール・ビジネス(自営業)の一家に育ったから、実業家のトランプに惹かれているのだと思うわ」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「アメリカって結局はみんながだまし合っているんじゃないのって思う。ジノの話を聞いたでしょ? 彼も州立大学を卒業しているのに、いまの稼ぎはゼロ。大学なんて若者に借金させてカネ稼ぎしているだけじゃないの? いまの私には何が正しいのかわからないの」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「私は、自分がハシゴの下の方の横木 ( the lower rung of the ladder) だと自覚している。なぜ、アメリカの億万長者は、アメリカ人の業者を使わず、さらに安い不法移民を使うんだ。自分の財布のことばかり考え、地域のことなんてちっとも考えていない。ブッシュ家のような、共和党のエスタブリシュメントも同罪だ。不法移民が増えても、銀行員などの高学歴エリートたちは仕事を奪われる心配がないだろうが、オレたちには深刻なんだ」 「私はここで生まれ育ったアメリカ人だ。私は、稼いだカネを、ここで使う。赤ん坊のミルクを買い、子どもの服やおむつを買う。カネは地域に循環する。社会ってのはそんなもんだろ? でも不法移民はため込んで、南の方に送金するばかりだ」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「ここから現職の政治家の批判と自分の宣伝に切り替わる。ライバル候補のクリントン批判も続く。クリントンは「現状維持」、自分は「変化」の象徴である、という単純な構図だ。 「数百万人の労働者たちが貧困と苦悩の中に置き去りになっているのに、政治家は何もしませんでした。私たちの仕事がなくなり、高い失業率に苦しんでいるというのに、彼らは何年もの間、傍観してきました」 「多くの地域では今も回復の兆しはありませんし、今後も回復しないでしょう。私が大統領にならない限りは。私が大統領になれば、すぐに回復します。政治家は私たちの生活手段を奪いました。愛する仕事が何千マイルも遠くに送られていくのを眺めていました。ペンシルベニア州の多くの街々はかつて栄えましたが、グローバリゼーションはミドルクラスを全滅させました。まだ取り返せます。しかもすぐに」 「しかし本当の変革を目指すなら、威圧的な政治家や政治の王朝は拒絶せねばなりません。彼らは現状を維持させるためには何でもやります。システムを不正に操る人間はクリントンを支持します。彼らは、クリントンが政権に就けば、現状を維持できることを知っているからです。街は貧しいまま、工場も閉鎖されたまま、そして国境は開きっぱなしになります。クリントンとグローバルな金融業界にいるクリントンのとりまきたちはアメリカ人が夢を描くことを断念させ、より良い未来のために一票を投じることを阻もうとしているのです」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「アメリカニズムよりもグローバリズムを崇拝した指導者たちのせいです。今こそ、経済的独立を宣言するときです。それはドナルド・トランプに一票を投じるということです」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「公立学校で聖書を読む。そんなキリスト教の信仰を基盤とする、白人中心のアメリカ社会が当たり前だった世代にとっては、「白人のマイノリティー化」が予測されるまでに至った、今のアメリカはまるで別の社会に見えているのだろう。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「オバマを一般論としては支持するけど、今のアメリカには「変化」が必要です。 アメリカには途方もなく裕福な人々がいる。それなのに税金をほとんど払っていない富裕層がいるって本当でしょうか? 私がもし富裕層になれたなら、きちんと納税して社会に貢献するけど。今の社会はバランスが悪い。あまりに不公平がまかり通っている気がします。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 実はオバマケア(医療保険制度改革)の負担が苦しい。保険の仕組みは複雑でよくわからないけど、私の身に起きている影響については、自分でよくわかっています。思っていた以上にオバマケアは負担額が大きかった。オバマケアが導入される以前に戻して欲しい。私たちには一定の(オバマケアに入る、入らないという)選択肢があるべきだと思う。みんなが社会保険に入るべきだとも思っていたけど、あまりに負担が大きすぎる。今の私は健康で、保険を必要としていない。それでも高いお金を負担しないといけない。 今のアメリカは生活費も高すぎます。サービスも食料も、何でも高い。月末にお金が残らない。私はきちんと働いているというのに、普通の暮らしを営むことも難しい、もう 3年間もバケーション(長期休暇)で家族旅行にも出られない。昔は 1年に 1度、 1週間ぐらい太陽の近くに行っていた、(南の方の)暖かい地域へ。ここニューハンプシャーは寒いでしょ。少しずつお金をためてね。でもそれが難しくなっている。パンの値段も上がっている、食料品が高い。最近安くなったのは、ガス代ぐらい。でも、それが元に戻ったらどうなるのよ?」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 私はアランにも同じ質問をした。「自分をミドルクラスと思いますか?」 アランは笑って否定した。 「答えはノー。ミドルクラスは消滅しかかっている。十分な収入を得て、子どもを育てて学校に送り出すことができないんだから。ウェストバージニアはアメリカの貧しい地域だ。この街の人はバーニーやトランプに惹かれる。私にとってのミドルクラスとは、アメリカン・ドリームを信じて生きられることだ。有力者や企業経営者が富の大半を持って行ってしまう社会では、アメリカン・ドリームも死に絶えている。まじめに働けば、まっとうな暮らしを送れることを望んでいるだけなのに」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 なぜ、アメリカでは社会主義が支持されないのか。ドイツの社会学者ヴェルナー・ゾンバルトは 1906年の著書で、アメリカの労働者たちが社会主義に傾倒するには裕福すぎる点を以下のように指摘した。 「次に述べることは間違いがない。アメリカ人の労働者は心地の良い環境で暮らしている。概して彼らは抑圧的なまでに劣悪な住環境というものに縁がない」「男性は紳士のように、女性は淑女のように身なりを整えているため、自分たちと支配階級を隔てるギャップに外見上は気づかない」 「こういった状況では、特に快適な生活水準が永久に続くと明確に保障され、また今日に至るまでこの生活水準が変わらないと確信できてきたのであれば、「既存の社会秩序」への不満が労働者の心の中に宿らないことも何ら不思議ではない」 そしてゾンバルトは有名な結論を導く。「全ての社会主義の理想も、ローストビーフとアップルパイの前では失敗に終わるのである」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「何よりもトランプの強みになったのは、おかしな話だが、その暴言と傲慢なキャラクターを最初から前面に押し出したことにある。よく知られているように、立候補の演説でメキシコ移民を「(アメリカに)麻薬と犯罪を持ってくる強姦者」と呼んだ。その後もイスラム教徒の入国の一時禁止など暴言を連発。連邦地裁判事がメキシコ系であることを理由に「私の訴訟を担当するべきではない」と真顔で主張した時には、「アメリカは多民族国家だぞ」などと批判を越えて呆れる声が相次いだ。 私はこれらの暴言には、トランプが意図的に吐いていたものもあるのではないかと感じている。主要メディアから批判され、注目を一身に集める。「エスタブリッシュメント」の1つと見られているメディアから批判されてもトランプは困らない。むしろ批判の嵐の中で平然と振る舞うことで、抵抗勢力に立ち向える改革者という演出を図ったのではないか。彼にとって、エリートや主流派からの逆風は、長期飛行のための「浮力」のようなものだった。 何よりも暴言を吐き続けることで、支持者は慣れていった。「トランプがまたおかしなことを言っている」と笑って受け流す人が少なくなかった。もちろん眉をひそめる支持者もいたが、だからといって支持が、「エスタブリッシュメントの代表」というイメージが定着してしまったクリントンに流れる様子はなかった。 トランプは振る舞いも巧みだった。人前で慌てない。ステージではゆっくり歩く。どんな質問を受けても、ふんぞり返っている。知識のない分野でも、まるで熟知しているような口調で語る。集会では「私は軍幹部より「イスラム国( I S)」を知っている」と言い放った。 全米が注目する候補者討論会では、終了後に記者の囲み取材が発生し、テレビ局が生中継する。そのため主流派の多くの陣営は「失言」を恐れてか、候補者本人ではなく側近を出していた。しかしトランプは大勢の記者の目の前に堂々と姿を見せ、質問も受けていた。主流派の候補者たちが失言に怯える中、連日のようにインタビューにも応じる。こんなことが可能だった背景には、長年のテレビ出演で鍛えた即興でのやりとりの能力に加え、いまさら何をいっても失言にならないという究極のリスク管理があったと思う。」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著
「 「オバマは、スピーチは美しいがね、製造業のために成果を出せたかな? いいかげん、ワシントンを揺さぶる候補者が必要だ。」」
—『ルポ トランプ王国-もう一つのアメリカを行く (岩波新書)』金成 隆一著