作品一覧

  • コモングッド―暴走する資本主義社会で倫理を語る
    4.5
    1巻2,090円 (税込)
    著者のライシュがこれまで展開してきた「新しい資本主義」(政府か市場かの二者択一ではなく、市場メカニズムの根幹となる市場のルールそのものを見直してサテナブルな資本主義を構築する)から一歩進んで、「よき市民社会をつくるためには、何が必要か」に焦点を当てた本。 50年ほど前から、富と権力をもつ一握りの人々が、さらに多くの富と権力を手中に得ようと、社会に広がる「信頼」を搾取し始め、かつてはコモングッドと定義され、履行されてきた暗黙のルールが浸食されることになった。「私はどんな手段を使ってでも可能な限りの富と権力を手中に集める。慎み深く責任を持つなんていうのは負け犬がすることだ」と。 本書は、同じ社会を生きる一員として、人々はそもそもお互いにどんな義務を負っているのかについて再考し、どんな「理想」を共有すべきかについて考える。今よりもはるかに機能する社会、よい社会を取り戻したいのであれば、今は失われてしまった人々の間にあった共通の善、つまりコモングッド(良識)を取り戻さなければならない。 本書はアメリカ社会の話をしているが、アメリカに限定した話ではない。互いにつながっているという感覚を失い、お互いの共通認識としての「理想」をも失っている現代のすべての市民社会において、共通して考えなければならない問題である。そしてコモングッドを取り戻すため、市民として互いに負う義務を学ぶ市民教育を徹底できるか、と著者は訴える。われわれのよりよい社会の将来は、自分の実入りをよくするための「私的投資」としての教育に終わらず、よりよい市民社会を支える公的投資、「みんなのための市民教育」ができるか、にかかっているのである。
  • 最後の資本主義
    4.1
    1巻2,420円 (税込)
    ライシュの提案する、新しい資本主義の形。政府か市場か、の二者択一ではなく、市場メカニズムの根幹となる市場のルールを見直すことで、資本主義を壊すことなく、サステナブルな資本主義を構築できる。  市場メカニズムのルール自体が、勝者だけが勝ち続け、富が一方的に上方に移動するような仕組みになっている。ここにメスを入れずして、ゲーム終了時の所得再分配の率だけを議論しても意味がない。ルールそのものを、そして資本主義そのものを、一部の勝者のためだけに利するものではなく、大勢の人が生き残っていけるようなものにしていこう。  このままでは、人間の働くことの価値はますます小さくなり、稼ぐことのできるものは資本のみとなってしまう。技術が発達し、ロボットがどんなにすばらしい財・サービスを提供できても、それを買うことのできる層は消滅する。そしてロボットが代替するのは単純労働だけではないのだ。頭脳労働でさえも、ロボットにとって代わられる時代が来ている。  今こそ、新しいルールの下で資本主義を立て直さなければならない。そうでないと、資本主義はその土台部分から壊れてしまう。

ユーザーレビュー

  • コモングッド―暴走する資本主義社会で倫理を語る

    Posted by ブクログ

    原著は2018年発行。ごくまっとうなことを述べていると思うが、世の中はますます悪いほうに。まさかトランプがもう一度大統領になるとは思わなかっただろう。

    「コモングッド(共益)」とは何世代にもわたって積み上げられた「信頼」の集合体である。
    世の中のゲームのルールは「コモングッド」を尊重するものから、「何が何でも手段を選ばず勝ってやろう」に代わってしまった。
    ・「手段を選ばず」勝つ政治
    ・「手段を選ばず」利益を最大化する人々
    ・経済を不正操作するためなら「手段を選ばない」人々

    【原題】THE COMMON GOOD
    【目次】
    第1部 「コモングッド」とは何か
     第1章 シュクレリ
     第2章 私

    0
    2025年02月10日
  • 最後の資本主義

    Posted by ブクログ

    政治献金や天下りをエサに自分たちに有利なように市場のルールを変更する各業界の強欲さに呆れ返る
    法律の成立を妨害し、法律を骨抜きにし、あるいは執行させないよう予算を削らせる
    身勝手の極地だろう
    歪んだ資本主義ではなく、資本主義を歪めたのだ
    こんな市場を誰が信じるというのか
    ビジネスマンとしても大統領としてもトランプがでてきたのは当然だと思えた
    市場万能という神話は誰がルールを決め、ルールを執行しているかを見過ごさせるというのはもっともな指摘だ
    富裕層は嫌がらせのためにこんなことをしているのではない。
    ただただ自分のことしか考えていないだけなのだ
    昔のように下位層で連帯し、歪められたルールを元に戻

    0
    2017年12月22日
  • コモングッド―暴走する資本主義社会で倫理を語る

    Posted by ブクログ

    本書はアメリカ社会について書かれているものではあるが、訳者の指摘する通り、日本にも当てはまるものだと思う。

    かつて、市民の間で信頼の元、共有されていた「コモングッド(共益、公共善、良識)」といった価値観が、
    「勝つためなら何でもあり」の政治と「大儲けするためなら手段を選ばない」経済により、蔑ろにされ衰退してきてしまった現代において、
    「コモングッド」を取り戻すためにはどうすればいいのか、というのが本書のテーマである。

    日々のニュースを見るだけでも、政治家や大企業にたいして、公益を重視する公正で良識ある存在だと思うのは、かなり難しい。
    「どうせ悪いことしてるんでしょ」と冷笑しながら見る方がは

    0
    2024年11月19日
  • 最後の資本主義

    Posted by ブクログ

    ライシュ氏の本はすでに日本語版で何冊か出ていますが、2017年時点では本書が最新になります。原題はSaving Capitalism、つまり資本主義を救え、ということです。ライシュ氏の主張を一言で言えば、今の資本主義は大多数の人間のための仕組みではなく、少数の富める人間のためのシステムになってしまっているから、そのルールを修正することで資本主義を健全な形に戻そう、ということです。その意味では、訳者解説の中にもありましたが、本人は共産主義者でもアナーキストでもなく、資本主義礼賛者であって、今の「ゆがんだ」資本主義を「健全な」資本主義に戻す必要がある、というのが主眼になっています。

    また彼の主張

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    2023年04月30日
  • 最後の資本主義

    Posted by ブクログ

    資本主義の根幹である自由主義は、所有権、独占、契約、破産、執行の5つで構成されているが、それらは富裕層、大手企業に利するようにルールが歪められており、中間層が没落しているというのが、本書の一貫した主張。
    市場の失敗を抑制する手段として、公共事業の実施、財政政策、などの政府による介入があるが、政府自体も富裕層や大手企業など、自由市場から利益を享受しているグループと結託している。それ故に、政府も過度な自由主義を推進することになり、中間層・貧困層と富裕層との格差は拡大してしまう。
    能力主義と自由主義が合わさることで、中間層・貧困層と富裕層の分断は一層進んでいる。多くの富を持つことが、価値であると考え

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    2022年08月21日

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