この世のどこかに「自由市場」という概念が存在しており、そこに政府が「介入する」のだ、という考え方ほど人々の判断力を鈍らせるものはない。政府なくして自由市場は存在しない。文明とはルールによって成るもの。
法律のどこを見ても、「株主が企業の唯一の所有者であり、したがって企業の唯一の目的は彼らの投資価値
...続きを読むの最大化にある」とは書かれていない。
これは、1980年代に企業の株主利益を最大化したい乗っ取り屋が経営者達に対し、採算性の悪い資産を売却し、工場を閉鎖し、借金をもっと引き受けて社員を解雇するよう要求し始めた頃に出てきたもの。
1978年から2011年にかけて、新しい大企業が支配力を強めていくのに伴い、新規企業の参入割合は半減した。
モンサントの市場独占により、大豆畑1エーカー当たりの平均作付け費用は、1994年から2011年の間に325%増、とうもろこしの作付けコストは259%増となった。そして、種子の遺伝子的な多様性は劇的に減少した。
個人の収入を決定づけているのは、相続、コネの有無、先入観等その人の能力以外のもの。能力主義では全くない。
納税者が社会的意義のある職業をもっと強く支援する方法として、社会福祉や幼児保育、高齢者介護、看護、法律相談、教育などの職業を選択した卒業生についてはその学費ローンを免除するのがよい。
CEO報酬は1978年から2013年の間に937%増加し、同時期の労働者の賃金上昇はわずか10.2%。
最も報酬の高い役員上位5名に対する報酬額がその企業の法人所得に占める割合は、1993年には平均5%であったが、2013年には15%を上回る。さらにこれらの報酬のほとんどは法人所得税から控除されていた為、残る普通の人々が所得の割に高い税金を払い、税収の穴埋めをしてきた。
2001年から2013年にかけて、S&P500インデックス企業による自社株買い額は3.6兆ドル。CF総額の3分の1。
2003年から2012年にかけて、自社株買いが最も多かった上位10位のCEOは、報酬の70%をストックオプションもしくはストックアワードで受け取っていた。
高額のCEO報酬を出している上位150社のPERは、同業他社よりも10%低い。業績も平均15%低い。さらに、高額報酬のCEOの在任期間が長ければ長いほど業績が悪化している。
2013年銀行上位5行に出された640億ドルの補助金は、この5行の年間利益総額とほぼ同額。この補助金がなければ、267億ドルもの賞与の原資はおろか、利益の全てが失われていた。彼らが賞与をもらう事ができたのは、彼らの能力ではなく、米国の政財界において特権的な立場にいるから。
1950年代初頭、GEは全てのステークホルダーにとってバランスのとれた最善の利益を追求する事で有名であった。
企業経営は全ての人々の利益になるような経済を期待して国民から託される職務。
米国の富裕上位1%層に向かう国内総所得の割合は1960年代の10%から2013年には20%を超えるまでに上昇したが、ドイツのそれは40年間11%のまま。
ドイツのガバナンスは、取締役会の上に監査役会があり、監査役会の半数は社員の代表者で構成されている。この為、労働者の権利が受容的。
労働者の所得の低下は、彼らが経済力や政治力を持っていない事に起因する。
最低賃金が高いほど、従業員の離職率が低い。
低賃金で働く労働者の給与が引き上げられても、競争にさらされているので商品価格が上昇する事はない。
貧しい人は向上心がないから貧困から抜け出せないのではなく、機会とそれを獲得する政治力がないから。
最も裕福な米国人上位10人のうち、6人が遺産相続によるもの。
システムが不公平で独断に満ちており、勤勉が報いられないと人々が感じると、私たち全員が損をする結果になる。マイナスサムゲーム。
この30年間、企業を動かす誘因の全てが一般労働者の賃金を引き下げ、取締役の報酬を引き上げる結果につながった。
カリフォルニアでは、CEOの報酬がその企業の平均労働者の賃金の100倍であれば、法人税率が8.8%から8%に下がり、25倍なら7%に下がる。200倍であれば9.5%、400倍であれば13%に引き上げられる。
平均的労働者の賃金に対するCEO報酬の比率開示義務はドッドフランク法。
年間生産性上昇率に合わせて労働者の賃金を引き上げる経営者には低い税率を課し、引き上げない経営者には高い税率を課す方法もある。国全体の経済的利益と労働者の収入を連動させる。
カリフォルニアでは、低賃金の仕事を多く下請けに出すほど高い税率を課し、企業が雇用者を個人請負業者として不正に分類する事や、かつて社内で働いていた低賃金労働者を他者に転属させる事を禁じている。
従業員持株制度や利益分配制度、または従業員が会社を所有する形式に協同組合を組織する事に優遇税制を適用して、従業員により直接的なオーナーシップを与える方法もある。
企業とは契約と知的財産の集合に過ぎず、株主に所有されているわけではない。
企業の取締役には自社の株式価値を最大化する信任義務があるという考え方は法的根拠のないフィクションにすぎない。株主は企業の役員を選ぶが、役員には株主利益を最優先しなければならないという法的義務はない。
2014年スーパーチェーンのマーケットバスケットの取締役会は、CEOのアーサーT.デモーラスを解任した。それは彼がステークホルダー全員が利益を享受できる合同会社とみなしていた為だが、これに対し社員と顧客がデモやボイコットを起こし、最終的には取締役会は同社をアーサーに売却した。
パタゴニアは、ベネフィットコーポレーションという形態で組織されている。株主と共に社員や地域社会、環境の利害を考慮する事を定款に定めている。
60年前の米国では当たり前だったステークホルダー資本主義
1980年代に定着した株主資本主義は、労働者の賃金を下げ、地域社会が荒廃した。
1990年から2008年の間に、高校を卒業していない米国白人女性の平均寿命は5歳短くなった。
ベーシックインカムがあれば、人々はあらゆる種類の芸術や趣味の追求に意義を見出せ、社会は芸術活動やボランティア活動による成果を享受できる。大多数の人が肉体的、精神的な活動よりも怠惰を貪る事を選ぶとは考えにくい。むしろ、多くの仕事が「天職」、すなわち働くことが単なる金稼ぎの手段ではなく、個人としての深い関与であるとみなされた時代に回帰するだろう。→hanahanaそのもの!
次は民主主義に対する挑戦。将来を決定づける議論は政府の「規模」に関する議論ではなく、政府が誰の為にあるのかという議論。
人々が幅広く繁栄を分かち合うように設計された市場か、ほぼ全ての利益が頂点にいる限られた人々に集中するように設計された市場かという選択をする事。
事後に再分配を行わなくとも、公平な分配がなされていると大多数の人々が受け止められるような経済を生み出す市場のルールを設計する事。