3-2
・FOMCは年8回会合を開催し、短期市場金利であるフェデラルファンド金利に誘導目標を設定する。
・日銀は無担保コール翌日物の取引金利に誘導目標を設定及び、日銀当座勘定を調整することで短期金利をコントロール。加えて世界的に珍しい事例ではあるが、10年物国債利回りに概ね0%の誘導目標を設定することで、長期金利のコントロールもしている。(無制限に国債を購入することで対応)このように長短双方の金利をコントロールすることをイールドカーブコントロールと呼ぶ。
3-3
・債券市場と株式市場を合わせて、キャピタルマーケットと呼ぶ。キャピタルマーケットは発行体が新規で資金を調達する発行市場(プライマリーマーケット)と発行済の有価証券が投資家の間で売買される流通市場に分けられる。
・オーバーナイト金利=1日限りの金利。
・ターム金利=1ヶ月/6ヶ月と特定期間の取引金利。
・リスクフリーレート=国債等信用リスクが実質ゼロの先に対する金利。
・信用スプレッド=リスクフリーレートに債務者の信用リスクに応じた上乗せをする金利。
・ハイイールド債/ジャンク債=格付の低い債券。
3-4
・これまではLIBORが国債的な変動金利資料として利用されていたが、リファレンスバンクが故意に実勢から乖離したレートを報告していたことが発覚し、2021年に廃止。
・LIBORは銀行同士が短期のお金を貸し借りするコール市場での取引金利の水準から算出されるもの。
・後継金利として、リスクフリーレートが新たな指標金利として表れた。
・リスクフリーレートにも様々な種類がある。
・無担保コール翌日物の取引金利であるTONA(LIBORの反省点から日銀が実際の取引金利を集め、加重平均した値を翌日に確定値として採用。)は1日だけの金利である為、1日のレートを該当期間に渡って複利計算し算出される。この方式は後決複利方式と呼ばれる。
・この後決複利方式は文字通り後決めの為、金利の確定まで時間を要する。そこでTORFという前決で適用できるリスクフリーレートが開発された。
・具体的な算出方法としては例えば6ヶ月の場合、6ヶ月のTONAの金利と交換可能な6ヶ月のスワップレートを採用する。
・一方で上述したTORFやTONAではあくまでオーバーナイトの金利がベースの為、銀行間取引における貸し倒れリスクは勘案されていない。そこで、クレジットセンシティブな指標金利であるTIBORが近年は採用される機会が多い。(TORFやTONAの金利に銀行が倒産する信用コストが含まれている。)
4-1 債権の利回りとは
・金利は1)クーポンレート2)割引益の2種類がある。
4-2 債券利回りの計算方法
・単利回り=(クーポンレート+割引益/満期までの期間)/価格
・単利回りでは割引益の収益発生タイミングが意識されていない為正確性に欠ける部分がある。
・そこで複数の割引債を組み合わせて算出する複利利回りが投資家には一般的に採用される。
4-3債券価格と利回りの関係
・債券価格が下がると利回りは上がる。(割引益が多く出るから。)
・その為、銀行の借入金利が上がると、債券の利回りも併せて上げないと需給に適合しない為、債権の価格は下落する。
4-4 利回りが変化すると債券価格はどのくらい変化するのか
・債券に求められる利回りが変化した場合、債券価格はその利回り変化幅に債券の残像年数をかけた程度に変化する。
・固定利付債以外にも変動利付債がある。これは短期市場金利にクーポンレートが連動しており、短期金利の変動を受けない為、債券価格は基本的には変わらない。(発行体自体の信用リスクが高まると債券価格が上昇する場合はある。
5-1 景気と金利
・一般論として、景気が良くなり経済が活発化すると、借入需要が増加し、金利が上がる。
・然し乍ら、現状は景気が良くても金利の伸びは鈍化している。理由としては企業が手元資金に余裕があり資金調達ニーズが薄れていることに加え、国内の成長期待が萎んでいることが挙げられる。
・近年、国内での設備投資を抑制し、海外での成長性のある海外への投資をする企業は増加している。そうなると、外観ニーズは高まるが円ニーズは高まらない為金利は上がらなくなる。
5-2金余りと金利
・金余りは長年の金融緩和政策によって生み出されている。
・国は必要な財政支出を税収で賄えない場合は国債を発行する。2022年度末時点で国債の発行額は1026兆円にまで膨れ上がっている。本来、国債の残高が大きいと金利は上がるが日本は金余りの為、殆ど上がらない。
5-3物価と金利
・名目金利=実質金利+期待インフレ率
・債権の投資家にとってインフレは利息の目減りリスク。
・そのリスクを補う為に実質金利に期待インフレ率を加算する必要がある。例えば、物価の上昇予想が1%
の場合、2.5%の金利の場合はインフレリスクをカバーしているかつ、1.5%の実質金利を得ていることになる。その為、インフレ予想が高まると金利は上昇する。
5-4 金融政策の目的とやり方
・アメリカでは物価の安定に加えて、雇用の最大化を目的に金融政策を行っている。
・金融政策の一般的なやり方は無担保コール翌日物に誘導目標を設定して行う。具体的に述べると、金利を上げたい場合は日銀が保有する債券を銀行に売却する。そうすると、銀行の保有現金量が減少し、コール市場の金利が上がる。一方で下げたい場合は、銀行が保有する債券を日銀が購入し、銀行の手元資金を増加させる。
5-5 日銀とはどんな組織なのか
・総裁1人/副総裁2人/審議員6人の計9名で構成。いずれも任期が5年で、年に8回金融政策決定会合を開催する。
・銀行間のやり取りは全て帳簿上だけの処理であり、実際の資金は日銀にあるSMBC口座から三菱口座へと残高が振り替えられる。その結果、毎日各行の日銀残高は増減し、余った資金はコール市場で運用し、不足分はコール市場から調達する。
5-6 金融政策の波及経路
・銀行は日銀口座よりもプラスの無担保コール翌日物金利で運用する動機がある為、日銀金利がマイナス0.1%だった場合にはマイナス0.05%程度の水準に無担保コールはなる。
・長期金利(ターム物金利)はその期間にわたって無担保コール翌日物を借り続けた時の予想平均コストに近い水準となる為、ターム物金利は将来の金融政策の予想を反映する。加えて、期間の途中で大きな経済イベントが発生するリスクも抱えているため、前述した予想平均コストに加え、タームプレミアムを上乗せする。その意味では長期間の方が金利イベントが発生する予測が曖昧になるため、それに比例してタームプレミアムも上昇する。
・先行きの金融政策に不安感が高まると、先行きの不透明さから、金利が上昇する。逆に中央銀行が断固たる姿勢で金融政策を実施するとタームプレミアムの影響が小さくなり、上昇幅は減少する。
・注意点はただ単に債券は金融政策の予測をする訳ではなく、金融政策の妥当性を評価する。例えば、インフレ懸念が高まっている環境下で金融緩和政策を続けていると、将来どこかで大幅な金利引き締めがあることが意識され、短期金利は低いのに長期金利は跳ね上がるという事象が起こる。このような状況をビハインドザカーブと呼ぶ。
・逆に中央銀行も債券の金利水準に反応し政策金利を調整することもある。
5-7 イールドカーブの形成
・イールドカーブの傾きがキツくなることをスティープニング、緩やかになることをフラットニングという。
・利上げのベースが遅いと市場が判断すれば、より大幅な利上げを市場は予想する為、長期金利は上昇。一方で、利上げのペースが適切と判断されれば、過度な利上げは市場はしないと予想し、長期金利の伸びは緩やかになる。(フラットニング)
・フラットニングが進捗すると、市場は金融緩和をすると予想する為、長期金利が低下する。この状態は短期金利が長期金利よりも高くなっていることから逆イールドと呼ばれる。一般的には逆イールドは景気後退のサインと見做される。
・日本国債のイールドカーブは添付ファイルのように、歪な形をしている。これは現行の金融政策が10年国債利回りを+0.5%に設定している為である。
5-8 金利市場の将来予測力
・逆イールドになると景気後退がなぜ起こるかというと、銀行の利鞘が縮小し、積極的な貸出をしなくなるからである。一般的には預金金利は短期金利に連動し、貸出金利は長期金利に連動している。順イールドの場合は、貸出金利が預金金利を上回る為、銀行の利鞘は厚くなる。一方で逆イールドの場合は預金金利≒調達金利が貸出金利を上回ってしまう為、利鞘が薄くなり貸出を渋るようになる。
6-1 金利が経済に与える影響
・バブルを産み出す最大の要因は低環境金利。低金利環境ではレバレッジ投資のコストが下がる。その為、リスク資産への投資を促す効果があり、その結果としてリスク資産の価格が上昇する。その流れの中で、投資家たちの間でそのトレンドに遅れまいという感情を喚起させ、「買いが買いを呼ぶ」状況になる。一方で高金利はレバレッジ投資のコストを押し上げ、バブルの巻き戻しを誘う。然し乍ら、時には金利負担に耐えきれず資産の売却を余儀なくさせる為、それらの売りが資産価格の下落を招く。そうなると、「売りが売りを呼ぶ」悪循環に繋がりバブルの崩壊を引き起こす。要約すると、低金利がバブルを引き起こし、高金利がバブルを崩壊させる。
・一般的に国はバブルをコントロールする為に、金融政策を実施することはない。
6-2 為替相場は金利で動く
・相場を動かす要因は大きく分けて2つある。1つ目は貿易に伴う通貨の需給だ。一般的に貿易収支が黒字であれば、外貨の売りに繋がる為円高へ傾く。一方で貿易収支が赤字の場合は外貨の買いに繋がる為、円安へ傾く。2つ目は為替レートの変動から利益獲得を企図した投機的な取引だ。両者を比較すると取引量に大きく差があり、後者の登記取引が圧倒的に多い。その為前者の貿易の実需が為替に及ぼす影響は実際には少ない。
6-3 金利は株式市場でも超重要ファクター
・一般的に金利が下がると債券の利回りも下がる為、相対的に株式投資の魅力が高まり株価は上昇する。反対に、金利が上がれば、債券の利回りが上がり、相対的に株価は下がる。その仕組みを理論的に下添付ファイルを用いて説明。
・リスクプレミアムとは株式投資などリスクの高い資産の理論価格を計算する際にリスクフリー金利に加算する追加の利回りを指す。この水準は投資家のリスク回避のスタンスであれば上がり、リスクテイクのスタンスを取ると下がる。
・この計算式から言えるのはリスクフリーレートとリスクプレミアムの上昇及び、純利益成長率の低下は株価の下落を引き落とすことだ。少し具体的に説明すると、(1)金利が下がると株価は上がり、金利が上がると株価は下がる。(2)リスクテイクの意識が高まると株価は上がり、低まると、株価も下がる。(3)利益の成長期待が高まりと株価は上昇し、低まると株価は下落する。
・更に金利の上昇は市場にストレスを与え、市場のリスク回避の姿勢にする為、リスクプレミアムの上昇に寄与し、株価の下落に繋がる。