谷崎由依の作品一覧
「谷崎由依」の「あたらしい名前」「鏡のなかのアジア」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
- 作者をフォローする
- フォローすると、この作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
「谷崎由依」の「あたらしい名前」「鏡のなかのアジア」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
小説・文芸
Posted by ブクログ
ジョージアで奴隷として生活するコーラ。ある日同じ農園にいるシーザーに声をかけられ、共に北へ逃亡する。
逃亡手段は「地下鉄道」(史実では南部に住む奴隷制度反対者たちが奴隷を北へ送る活動をする際の暗号として使われていたが、本作では比喩ではなく地下鉄道に乗って逃亡する)。
一旦は逃げおおせたかと思われる場面が何度もあるが、執念深い奴隷狩りリッジウェイに追いつかれてしまう…。
各章には、地名や人名が使われていて、作者はコーラが各地で経験する物語を『ガリヴァー旅行記』になぞらえて表現したそう。人名の章も、メインストーリーだけではわからない、その人が抱えるものを映し出していた。
最後の方にあるメイベルの章が私的には効果抜群だった。
農園、ジョージアといえば『風と共に去りぬ』をイメージしながら読んだが、『地下鉄道』は南北戦争勃発より30年ほど前の話。
黒人、白人、アイルランド移民…一括りにはできない人の思想、歴史について、色んな視点から考えてみたいと思った。世界史学び直したい。
Posted by ブクログ
19世紀、まだ奴隷制度が存在する時代、一部のアメリカの反奴隷制度の人々が黒人奴隷を逃がすために築いたネットワークが「地下鉄道」という名前で呼ばれていた。
この物語はその地下鉄道が本当の地下鉄道として存在したら、つまり、What if actual "The Underground Railroad" exist?という反実仮想を描いている。
つまりSFである。そして文章もSFエンターテインメントとして読みやすくできている。ただ、単にSFとして気軽に読み始めると大火傷を負う。
確かにSFで、確かに「地下鉄道」なる鉄道などは当時ない。
ただ、ここで描かれている奴隷制度は、紛れもなく歴史的に存在した奴隷制度であり、この奴隷制度のもとで人間とは思えない扱いを受けた人々、本作はフィクションではあるが、このフィクションのすぐ隣に実際にその体験をした人々がごまんといるフィクションである。ここで描かれている痛みは空想でもなんでもない。確実にこの痛みを受けた人々が存在するのだ。
コルソン・ホワイトヘッドは実に巧みなストーリーテラーである。ぐいぐいと読ませる。ただ、ぐいぐいと読めない。
本当に胸が苦しくなる。特に序盤から中盤にかけて、何度この本を読むのをやめようと思ったことか。何度読書を中断したことか。
奴隷制度を導入した白人憎しという単純な構図ではない。
人間がただ単に生活をする中で、欲が生まれ、力関係が生まれ、いつのまにか上下の関係が生まれている。
一方で、人間は理性を持っていると自覚している。上下関係、人を見下すことは人間として美徳ではないということを理解している。
理解しているからこそ、その上下の関係に理由をつける。人間世界において上下関係は良くない。でも、私たちが見ているあの人々は、人間ではない。だからいいのだ。
反吐が出るような屁理屈がここに生まれる。
唾棄すべき理屈が、ここに生まれる。
主人公のコーラは、奴隷として扱われていた南部の農場から地下鉄道で北へと逃げる。
北の世界は一見自由に見える。平等に見える。でもその実そうではない。
どこへ行ってもディストピア。自由とはなんなのか。きつい。
読後、これがフィクションで良かった、ってならない。
なぜなら同じ世界が本を閉じても眼の前に広がっているから。
「奴隷制度」というわかりやすい形の悪魔の制度がなくなっただけで、問題はなにも解決していない。
暴力は形を変えて残り続けている。
アメリカだけではない。この力関係は、私たち日本人の中にもある。
人間に本質的に備わっている。
作中、逃亡奴隷のことを白人が「瑕疵」と呼ぶシーンがある。
違う。人間の瑕疵なんだよ。そういうのを良しとする感情。人間の欠陥。
私たちに唯一できるのは、その瑕疵が自分たち全員に備わっていることを自覚すること。
それに気づかせてくれたこの物語の意義はとても大きい。
ピューリツァー賞を受賞しただけのことはある。
本当に苦しかったけど、最後まで読んでよかった。
Posted by ブクログ
ハヤカワ文庫の80冊に入っていた本作。何気に手に取ったが読んで圧倒された。
19世紀アメリカ、黒人奴隷の少女コーラが自由を求めて逃亡する物語。
もう衝撃的過ぎて驚くばかり。息付く暇が無いほどスリリング。残酷な描写も多くテーマが重い。私は黒人奴隷の歴史を何も知らなかったのだと気づかされた。読んで良かった。
「地下鉄道」とは昔の奴隷逃亡支援組織の名称で架空の物らしい。著者は本作でフィクションとして地下トンネルを走る鉄道を描き、これを利用して逃亡する物語に仕上げている。フィクションにする事でエンターテイメント化し、読者層を広げ、黒人奴隷の歴史を知らしめる事に成功している。(私が読んだぐらいなので)
黒人は奴隷船で運ばれ、二束三文で売られる。ジョージアの綿花農園での酷い扱いには読んでいて辛くなる。命がけで逃亡する理由がよくわかる。しかし、逃亡した後、状況は良くなる所かもっと悪くなるんだよね〜。これでもか!ってぐらいに。奴隷狩りを仕事にしている白人も居る。捕まえに来るから安心できない。
州ごとに黒人を取り巻く状況は違う。助かった〜、自由を得た〜と思ったのもまやかし。結局は白人の都合の良い体制になっている。特にノースカロライナは恐ろしかった。
逃げるコーラは賢く強い女性。様々な人々により彼女は助けられる。その中には白人も居れば黒人も居る。バレれば死刑が待っている事を知りながらも手助けをしている。刑の執行のやり方がムゴイのよ。虐待の様子もそうだけど、人間扱いしてない。
だから、黒人の反逆を恐れるのでしょう。人口が増えるのを恐れ、文字を学ぶのを恐れ、集会を恐れる。終盤のランダー氏の演説は意味深い。アメリカだけではなく、全世界のテーマとも言えそうだ。私個人としても国や歴史、人種問題を学ぶ必要があると感じた。
合間に入る人物エピソードがいいんだよね。それぞれに人生がある。特にエセルの章には救われた。
コーラは自分を置いて逃げた母を憎んでいたけど、逃げおおせた事に希望を見出していたんだろうね。最後に母のエピソードがあり、読者には真実が明かされる。
終盤がこれまた凄くて2度読みしました。
最近、ハヤカワ文庫の棚を見る事が増えた。読みたい本がまだまだある。80年の歴史は素晴らしいですね。