作品一覧

  • 犬の心臓・運命の卵

    犬の心臓・運命の卵

    小説・文芸

    3.6
    1巻693円 (税込)
    ヒトの脳下垂体と睾丸を移植された犬が名前を欲し、女性を欲し、人権を求めて労働者階級と共鳴し、ブルジョワを震撼させる(「犬の心臓」)。繁殖力を高める生命光線を浴びて、大量発生したアナコンダが人々を食い荒らす(「運命の卵」)。奇想天外な空想科学的世界にソヴィエト体制への痛烈な批判を込めて発禁処分となった、20世紀ロシア語文学の傑作二編を新訳で収録。
  • 巨匠とマルガリータ(新潮文庫)

    巨匠とマルガリータ(新潮文庫)

    小説・文芸

    4.0
    1巻1,320円 (税込)
    ある春の晴れた日、モスクワに悪魔が現れた。黒魔術の教授を名乗る悪魔は、グラスでウオッカを飲む巨大黒ネコら手下を従え、首都に大混乱を巻き起こす。一方で文壇の権威に酷評され絶望に沈む巨匠。彼に全てを捧げるマルガリータは純愛を貫くべく悪魔の助けを借りる。スターリン独裁下の社会を痛烈に笑い飛ばし、人間の善と悪、愛と芸術を問いかける哲学的かつ挑戦的な世界的ベストセラー。

ユーザーレビュー

  • 巨匠とマルガリータ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    4年前、ロシアとウクライナの戦争が始まったタイミングで読んだ「タ暮れに夜明けの歌を」(奈倉有里)のなかで紹介されていて、(素晴らしい名著です)必ず読みたい!と思いながら時は過ぎ。。カラマーゾフの兄弟を読んで、亀山郁夫先生の講座聞いて、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチの本をいくつか読み、この度新訳が出たタイミングでやっと読むことができた。まだ戦争は終わっていない。

    これは...これはこれは…!!

    大好物なものだらけ。モスクワを舞台に、悪魔達が暴れ回る。首がとび、人々の気が狂い、書類は消えて、ネコは酒を飲む。。
    「そう、要するにこれが地獄です。」
    並行して語られる、ナザレの人イエスの処刑の物語。翻訳メモにもあったが、この物語の語り手が悪魔になったり、気を狂わされた人の夢になったり、巨匠と呼ばれる人物の作品となったりする非常に凝った構成で、そこもすごく良かった。
    悪魔に対しての神、としてのイエスという訳ではなく、「人間の欠点の中で最も重要なもののひとつは臆病」ということをあぶり出す仕掛けのように読んだ。

    空を飛んだり、月へ向う階段を登っていったり、地下への階級を下りたり、果てしなく遠い地底からやってくる死人を見下ろしたり。
    高低差を感じる場面が多くあり、躍動感にふり落とされそうな感覚になった。それがまた非常に楽しい、、、
    「悪魔の大舞踏会」がもう、本当に本当に素晴らしくて、マルガリータの目線で足をガクガクさせながら読んだ。

    純粋にこのめちゃくちゃで残酷で、なのに可笑しくて少し悲しい物語を楽しんでから、巻末の訳者による翻訳メモとあとがきを読む。
    この作品に込められた1930年代当時のスターリン批判がどのように描かれているか。
    ロシア人特有の言い回し、「悪魔は知っている」の意味。
    エルサレムの物語の背景。
    プリムス・コンロ、共同アパートなどソビエト連邦時代のこと。←スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチの「赤い時代の人々」を読んでいたときにたまに出てきたような気がした。
    実際のモデルとなった建物の話。
    更に更に、今回の新訳の底本とした1990年版と、1973年版との違いまで、丁寧に説明してくれている。
    これを読んでからまた読み返すとまたまた新しい読み方が広がって、、

    ロシアに行きたい。パトリアルシエ池のほとりに行きたい。戦争なんか早く終わってほしい。

    0
    2026年08月12日
  • 巨匠とマルガリータ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    猫の絵のカバーが愛らしく、手に取る。

    物語は1930年代のモスクワと、「ナザレの人」がポンディオ・ピラト総督によって処刑される、約2000年前を描きながら進む。それがラストには交錯し、綺麗に混ざり合って終わる。
    壮大なファンタジーの中に、ユーモアから神学論までが散りばめられている。
    悪魔が現れ、その手下の、表紙のような可愛らしい猫ではなく、太った嘘つき猫が活躍し……タイトルの巨匠が現れるのは読み出してからかなり先で、マルガリータが現れるのは第二部まで待たなければならない。
    それでも人がどんどん消えていく場面などは、スターリン時代の旧ソ連を暗示するようで、ただのファンタジーとは読めない。笑える場面の下に、どこか拭えない暗さ、陰のようなものがある。
    読後に面白かった、だけでは終わらない時代の、歴史の靄が残る。

    そもそもこの作品は著者が1940年に死ぬまで書かれ、生前は発表されず、死後26年後にやっとソ連では発表された、検閲ありで、という。いまだに未完でもあり、また新しい完全版が今後発表かもしれないとの、訳者の言葉が。

    話は大きく個人的な問題に変わるが、新品のこの本を手にして、ちゃんと買う前に確認したつもりだった。
    しかし家に帰って開いてみると、本の中のページの一枚が折れ、しわくちゃになっている。ペリペリとそっと開いてみると、そのページの紙だけがいびつに大きく、本からひょっこりと、不恰好にはみ出している……。

    うーん、これは経験したことある人も割と多いのかもしれないが、本や雑誌で稀に存在する事象。テンションが下がり、読むのも後回しにしていた。

    ふとネットで調べてみると、いるわいるわ、同じ体験をした人。そして……ん? もしかして「福耳」と呼ぶのだろうか? こういう本から紙が飛び出たりするミス……それなら、なかなか味のある名前を付ける人もいるもんだ、と妙に納得。

    圧制下の中でこの作品を書いた著者への敬意と、大きすぎてしわくちゃで、それでも何とか読める「福耳」ページ。
    しかしこんな不恰好な福耳って(笑)
    本当に忘れられない一冊になった。

    0
    2026年02月26日
  • 犬の心臓・運命の卵

    Posted by ブクログ

    注訳がとても良かったです。
    ブルガーコフのいたソ連はめまぐるしく変わり、革命に内戦等、街や建物も次々と代わる時代だったそうで、内容もバタバタしてます。

    犬の心臓はまず倫理に反する内容だし、痛烈過ぎて胸が痛かったです。
    可愛いボロボロの犬が、下品な悪党になるなんて...。
    めまぐるしく変わる母国を皮肉りながらも、戯曲の要素もあり色々と知れたし楽しめました。
    なかなかマニアックな内容でした。

    運命の卵はパニック小説でした。
    犬の心臓の後だから結構後味悪いです。
    大量のカエルと鶏と人が死に、カエルが可哀想でした。

    何だかんだと言って、ブルガーコフは動物愛護主義者だったように思えます。
    犬の気持ち、カエルの気持ちを純粋に描写されているところが、唯一ほっとできる瞬間だと思います。

    0
    2016年10月11日
  • 巨匠とマルガリータ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    これまで知らなかったが、ウクライナの作家による有名な作品とのことである。
    『巨匠とマルガリータ』の題の通り、「巨匠」とマルガリータが再会し共に暮らすようになるまでを描いているが、その過程でウォーランドとその配下の悪魔たちが街を引っ掻き回しめちゃくちゃにするエピソードが複数描かれる。「巨匠」とマルガリータの登場も、序盤から暫く待たねばならず、個人的にはこの過程が本当に必要なのか疑問に感じてはいたが、このエピソード(段階)の要不要などどうでも良くなるくらい物語が面白く引き込まれた。翻訳メモに曰く、この作品が長い時間をかけて書かれたために物語に矛盾が生じているとのことだが、それも気にならなかったほどである。
    総計700p超えとボリュームのある1冊なので時間のあるときに読むことをおすすめする。

    0
    2026年05月13日
  • 犬の心臓・運命の卵

    Posted by ブクログ

    『犬の心臓』
    1924年。野良犬のコロは、医師プレオブラジェンスキー教授とその助手ボルメンタール博士によって、人間の睾丸と下垂体を移植される。やがてコロは徐々に人間化し、言葉を話すようになり、共産主義思想に染まり、教授や博士のようなブルジョワ階級を嫌悪するようになる。そして「コロフ氏」として市民権を得るのだった。

    共産主義者となったコロフ氏は、自分こそがこの家、この国の主役だとばかりに傲慢になり、女性を騙して結婚しようとしたり、それを止められると医師たちを当局に密告しようとしたりする。そんな彼にうんざりした教授と博士は――。

    語り口が少し不思議で、最初は犬の視点で物語が進み、やがて手術のあたりから三人称に切り替わる。作者ブルガーコフは、ロシア当局から「生かさず殺さず」のような監視を受けていたと言われており、この語りの不安定さは意図的な手法というよりも、発表の見通しも立たない中で、共産主義体制や粛清を風刺したいけれど、あまりに露骨にはできないという事情がにじみ出た“メモ”のような作品なのかもしれない。


    『運命の卵』
    1928年。動物学で両生類・爬虫類研究のペルシコフ教師は特別な赤い光線を発見した。卵細胞にこの光線を当てるとあっという間に孵化し、急成長する。だが大変狂暴で貪欲になる。
    光線の噂は広まり、政府情報機関発行紙を名乗る記者もやってくる。
    そのころロシアで鶏の疫病が流行した。政府は卵の売買、食べることを禁じるが人間にも被害が出てあっという間に国中に広まる。ついに国中の鶏が殺傷処分された。(『鶏ペスト」と書かれるけれど今で言えば鳥インフルエンザでしょうか)
    ペルシコフ教授のところに政府公文書を持ったロックという男(ロックは『運命」と発音が同じ)がやってくる。教授の光線機械を鶏復興のために使用するというのだ。教授は『まだ研究の途中だ。それに両生類・爬虫類で研究をしているのだから、鶏に使ったらどうなるかもわからない」というが、鶏ペストの混乱を「資本主義国家からの攻撃」と認定する国家とは何が何でも養鶏を復興させなければいけないのだった。
    ロックは、音楽家から革命軍に加わり、今では国営農場長になっていた。つまり動物学には全く不案内。農場に光線機械を持ち帰り、外国から届いた卵を機械に掛ける。
    だがその卵は、本来ならペルシコフ教授が発注した実験用大蛇(ボア)の卵だった。教授のものが農場に、農場にいくはずのものが教授のもとに届いたのだ。
    卵から孵った大蛇たちは、にゅるにゅるして狂暴で光線の作用であっという間に繁殖して国中大パニックに!
    ===
    この小説が書かれたのは1924年。ロシアでは1920年代から30年代にかけて設置されたトロイカ(行政や司法執行のため特別な権限を持つ委員会)が、スターリンの大粛清の後押しとまった。
    時代背景がわかればもっと直接的に何を象徴しているか、何を皮肉っているのかわかるんだろうなあ。
    研究だけで浮世離れした教授、研究結果だけが欲しくて熟練者は不要の国家、門外漢を役職につけて全く不案内な専門的なことをやらせる(そして失敗)、GPU(ゲーペーウー。国家政治保安部で秘密警察でKGBの前身)の監視、物はすべて国家の物なので取得物は委員会に提出するシステム、思わぬ役職に就いた者の時代遅れの服装、国家の肩書を持った者同士の探り合い。

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    2026年02月07日

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