専門分野は異なりますが、長年、美術史家としてご活躍されているお三方の趣味や好みが満載の内容です。良い意味で、忖度がないような美術鑑賞の対談集です。
あるひとつの章の大見出しは、「おっぱいとエロとエロスの話」です。。。
基本的に健康面の心配を軸に(!?)、真面目でかたい内容ではなく、どんどん読み進んで
...続きを読むいけます。特に常設展をフューチャーしている部分は納得。私は2020年1月にゴッホ展で見たゴーギャンの作品《水飼い場》を地元の島根県立美術館のコレクション展で再び見たとき、その再会に不思議な感覚をおぼえました。会期末間際で超絶混雑していた上野の森美術館で見た絵が、そこではじっと絵の前で立ち止まっていても誰の邪魔になりません。同じ絵なのに、見る場所や時間や環境でこんなにも向き合い方が変わってしまうものなのかと驚きました。
本書の”はじめに”で、
[美術は「役に立たないもの」と思っている我々が書いたこの本は、当然ながら、役に立たない本です。とにかく、本書を手にとっていただいた方は、この本を役立てようなどとはゆめゆめ思われませんように。]
と書かれています
私は今、40代前半で初老の域に達していないため、どんな美術書を開いても何かしら吸収してやろうと読んでしまっています。本書もなかなかスルーできない文章があちこちにあります。つい、線を引いたり書き込みしたくなります。アカデミックな読み物を期待している人には期待はずれかもしれませんが、居酒屋で隣のテーブルに聞き耳をずっと立ててしまうトークを聞いているみたいです。やはりせっかくなので、大いに美術鑑賞のお役に立てようと思います。