「ブログ文章教室」となっているが、もっと幅広く「文章」というものの本質について深い考察をしている。著者は作家なので文学について見識が深いのは納得なのだが、そこにITやウェブの分野での経験も加わることによって独特の文章読本となっている。というよりも、インターネット上での書き込みが一般化して現在では、
...続きを読むむしろこうした視点での「書き方講座」のほうが普通なのかもしれない。
鉛筆で書こうがキーボードで打ち込もうが文章の本質は変わらない。ただ「書く」という行為を一つの「運動」としてみた場合、やはり筆記具をクルクル回しながら考えるのとパソコン画面を見ながらのそれでは頭の動き方も異なる。そうなれば文面に現れてくる思想の色合いもズレてくることは容易に想像できるだろう。しかし著者はそれでも文章、というよりもっと広く「自己表現」というものの原点を論じる。このへんが「初心者のブログ教室」的な類似本にはない特徴。自分の思想をどう表現するか。ここまで踏み込んだ文章教室は著名な文豪が書くものでも稀ではないだろうか。
「オレは機械が苦手だから」とか「変色した古本なんて読みにくいから」という理由によって、貴重な情報を逃していることはないだろうか。自分に必要な情報はどこに潜んでいるかわからない。デジタルだろうとアナログだろうと、それは表現の一手段にすぎないのである。それは文章も絵画も音楽も映画も彫刻も表現の一手段であることと同様なのだ。あらゆるものに分化した現状で物事の本質に迫るには、こうした手段の垣根を取り払うことが必須ではないかと思う。
キモは「表現」というもの一般についての考察だが、ブログの発展史やブログ本の出版を手がけた著者の経験の記述も興味深い。