作品一覧

  • 自閉症が文化をつくる
    3.0
    1巻2,530円 (税込)
    伊藤若冲やチューリングが生み出した文化には、不思議な共通点がある。人間が創造する文化には、時代と場所を超えて自閉症的な側面があるのではないか。文化史の地層から「自閉文化」の鉱脈を掘り起こし、「健常」な近代を問い直す斬新な試み。
  • 「自閉症」の時代
    3.8
    近年、「自閉症」について多くの書物が書かれ、論じられるようになっています。これは、21世紀になって突出してきた現象で、20世紀にはなかったものです。しかもこれは、日本に限った話ではないのです。 著者は、21世紀という時代の1つの特徴が、この「自閉的傾向」の突出化には現れているのではないかと考えています。その1例に伊藤若冲のブームがあります。前世紀まで若冲は「奇想の画家」として、美術史においてはアウトサイダー的な存在に過ぎませんでした。ところがその彼が、今では昨今の「日本美術ブーム」を引っ張る存在になっています。あるいは、『君の名は』『天気の子』が立て続けに大ヒットになったアニメ作家の新海誠。彼の作品もその「自閉症的」傾向が初期の段階からしばしば指摘されていました。 この2人に共通するのは、ディテールへの過剰なまでのこだわりです。それゆえに画面は異常なまでに高精密になり、と同時に非常にフラットなものになります。一言で言えば、非常にデジタルな感じがするのです。デジタルとは、完璧なコピーと同一なものの繰り返しが可能になる技術ですが、この「高精密」で「完璧に同一なもの」の繰り返しこそは、まさに自閉症者が大好きなものです。現代アートに革命を起こしたアンディー・ウォーホールを早い例として、「ミニマルアート」と呼ばれるものの現代美術、現代音楽における流行も、この同じ時代の「好み」に即したものなのではないでしょうか。 そしてこの時代精神をもっとも端的に表すのが、コンピュータの存在です。開発の祖に当たるチューリング、ノイマンから始まって、スティーブ・ジョブスやフェイスブックのザッカーバーグなど、IT、AIに関わる科学者、技術者に「自閉症的傾向」が強いことは、つとに指摘されている通りです。というか、そのような人たちの存在があってこそ、コンピュータ的なものは、ここまでの洗練を見たのです。いまや「デジタル的なもの」は、否応もなく21世紀人の感性の基盤になった感があります。とすればその底に自閉症的な美意識が伏在しているのは、むしろ当然ではないでしょうか。 本書は、上記の視点のもと、21世紀という時代そのものの「自閉症的傾向」を明らかにするものです。
  • 精神分析と自閉症 フロイトからヴィトゲンシュタインへ
    4.5
    1巻1,815円 (税込)
    フロイト、ヴィトゲンシュタイン、自閉症理解の変更を迫る画期的試み! 永らく精神分析の「躓きの石」であった自閉症。両者の不幸な出会いを、フロイト思想の原点「心理学草案」に戻ることによって解消し、さらにはヴィトゲンシュタインの思考を媒介に、新たな自閉症理論を構築する。(講談社選書メチエ)

ユーザーレビュー

  • 「自閉症」の時代

    Posted by ブクログ

    979

    多くの著名人を横軸で繋げてくれた本で面白かった。(exジョブズ、新海誠、コンビニ人間、若冲、グレン・グールド、チューリグ、ヴィトゲンシュタイン、メルヴィル、ジョン・ケージ、村上春樹、涼宮ハルヒの憂鬱)

    竹中均(たけなか ひとし)
    1958年生まれ。早稲田大学第一文学部社会学科卒業、大阪大学大学院人間科学研究科社会学専攻博士後期課程単位取得満期退学。阪大博士(人間科学)。現在、早稲田大学文学部教授。 専攻は理論社会学、比較社会学。著書として、『柳宗悦・民藝・社会理論 カルチュラル・スタディーズの試み』(明石書店)『精神分析と社会学 二項対立と無限の理論』(明石ライブラリー )『自閉症

    0
    2023年10月26日
  • 精神分析と自閉症 フロイトからヴィトゲンシュタインへ

    Posted by ブクログ

    副題の「フロイトからウィトゲンシュタイン へ」何が手渡されたのか、というあたりが気になって手にとった。内容も素晴らしいのだけど、巻末の謝辞の最後の一言まで丁寧に書かれていることにも驚く。

    まず、フロイトの最初期の草案についての解説と、自閉症についての解説が続く。

    最後のまとめとしてウィトゲンシュタインを登場させるのだが、この章が丁寧ではあれどやや駆け足なので、ある程度はウィトゲンシュタインについて「知っている」のが必要となるかもしれない。特にフロイトも自閉症についても一般的な認識があれば読み進めるに問題ないと思う。

    自閉症について、ニコラス・ハンフリーは『喪失と獲得』において、洞窟壁画は

    0
    2018年12月19日
  • 「自閉症」の時代

    Posted by ブクログ

     自閉症については今までインターネットの記事やテレビ番組の特集などで知ることができたが、それらは自閉症の人と家族がどう苦労して大変な生活を送っているかというものを視聴者に伝える、社会問題提起のような側面があった。
     しかし、この本では自閉症者が持っている特徴的な症状から過去の自閉症が疑われる有名人の実例など詳しく書かれていて、自閉症とはということを詳しく知ることができた。
     今まで自閉症は障害であり、「普通の人」よりも劣っているという感覚を持っていたが、この本を読むことで自閉症者は時間的に未発達な人間なのではなく、空間的に別の枠組みで共存してる少数派の人間であるだけなのだと考えるようになった。

    0
    2020年09月23日
  • 精神分析と自閉症 フロイトからヴィトゲンシュタインへ

    Posted by ブクログ

    初期フロイトの思想を考えなおし、精神分析の観点から自閉症について考えるための新しい視角を提供している本です。

    著者は、初期フロイトの「心理学草案」というテクストに着目します。これまでは、快感原則と現実原則の調停に関して、社会的規範をどのように内面化するのかという観点から解釈されてきましたが、著者はそうした解釈を「量の大きさ」解釈と呼び、これに対して「変化速度」解釈という立場を打ち出しています。それは、快感原則は単純に内因性の興奮の外延量に基づくのではなく、内包量すなわち「強度」に基づいているというものです。この立場では、快感原則と現実原則の調停は、内因性の興奮の最強度の部分を「抑圧」し「緩和

    0
    2017年12月23日
  • 自閉症が文化をつくる

    Posted by ブクログ

    世の中には「天才」と呼ばれる人たちがいる。
    天才ゆえの苦悩、とかも目にしたりすることがある。苦しみ方も半端じゃなさそうだ(たぶん)。

    天才ってどっか変な人たちだよねー、と私たちはわりと感じる(たぶん)。
    何かに特化して才能を輝かせるためには歪な部分も出てくるんだろうねえ、なんて(たぶん)ちょっと憧れながら話したりする。

    天才かどうかはともかくとして、さまざまな偉業を成し遂げた「とんがった」人たち。
    彼らの中にはいわゆる発達の偏りを持った人たちが少なくないと考えられている。

    また、物語の登場人物たちの中にも不思議な「とんがり」を持つ人たちがいて、彼らが物語のテイストを左右したり、独特の"味

    0
    2023年09月07日

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