あらすじ
伊藤若冲やチューリングが生み出した文化には、不思議な共通点がある。人間が創造する文化には、時代と場所を超えて自閉症的な側面があるのではないか。文化史の地層から「自閉文化」の鉱脈を掘り起こし、「健常」な近代を問い直す斬新な試み。
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Posted by ブクログ
世の中には「天才」と呼ばれる人たちがいる。
天才ゆえの苦悩、とかも目にしたりすることがある。苦しみ方も半端じゃなさそうだ(たぶん)。
天才ってどっか変な人たちだよねー、と私たちはわりと感じる(たぶん)。
何かに特化して才能を輝かせるためには歪な部分も出てくるんだろうねえ、なんて(たぶん)ちょっと憧れながら話したりする。
天才かどうかはともかくとして、さまざまな偉業を成し遂げた「とんがった」人たち。
彼らの中にはいわゆる発達の偏りを持った人たちが少なくないと考えられている。
また、物語の登場人物たちの中にも不思議な「とんがり」を持つ人たちがいて、彼らが物語のテイストを左右したり、独特の"味つけ"をしてくれたりもする。そんな中にも「もしかしてこの人って」と思わされるエピソードを持つキャラがいたりする。
本書は別に天才についての本ではないが、絵画や音楽、文学など"文化"を生み出した人物たちの「なんだか自閉っぽい感じ」や、創作物の登場人物の振る舞いや考え方に「自閉っぽさ」を扱っている。
それだけでなく、社会構造の中で近年見られるようになってきた「自閉的なものと相性がよさそうな、または通底する何かを持った事象」についても広く触れられている。
私自身はすでに故人となっている人たちの事績をもとに"診断"めいた論考をするのはあまり好まない。それでも、自閉症のお子さんを持ち/かつ、著者自身も周囲から「自閉っぽさ」を指摘される立場から実に多様な分野から例を引いた上で展開される「自閉症と文化」についての本書の挑戦は興味深かった。
扱われている内容があまりに広く、多少散漫な印象を受けるのは本書が複数のメディアに書かれたものをまとめて構成されているからというのもあるだろう。いっぽうで、著者自身の持つ「自閉っぽさ」に起因するある種のコレクション欲とも関係しているのかもしれないなあ、と感じたりもした。
「コンビニ人間」(村田沙耶香)の主人公は読みながら確かに「ぽい」なぁ、と感じていたのだが、さらに本書で触れられているライトノベルの「世界観がすでに"ぽい"」作品も読んでみたい気持ちにさせられた。
ガチの学問的ポジションからはどう映るかわからないけれども、私には興味深い一冊だった。
アートや文学をもうひとつ違った角度から眺めてみたいと思う人には面白く読める、と思う(たぶん)。
Posted by ブクログ
膨大な量の参考文献とそこからの引用による考察は大変興味深いものがあった。
自閉症ではないかとされているのは、
伊藤若冲
アラン・チューリング
ジュゼッペ・アルチンボルト
ルイス・キャロル
コナン・ドイル
エリック・サティ
アンディ・ウォーホル
グレン・グールド
物語の登場人物で自閉症的描かれてる人物として、
村上春樹初期作品『1973年のピンボール』主人公
村田沙耶香『コンビニ人間』恵子
ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』ハンプティ・ダンプティほかアリス以外のキャラクター
コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ
落語の与太郎
他にラノベ作品が数作紹介されていたが割愛。