能勢伸之の作品一覧
「能勢伸之」の「北朝鮮のミサイル攻勢 防衛策の鍵はシステム構築にあり【文春オピニオン 2018年の論点SELECTION】」「極超音速ミサイルが揺さぶる「恐怖の均衡」 日本のミサイル防衛を無力化する新型兵器」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「能勢伸之」の「北朝鮮のミサイル攻勢 防衛策の鍵はシステム構築にあり【文春オピニオン 2018年の論点SELECTION】」「極超音速ミサイルが揺さぶる「恐怖の均衡」 日本のミサイル防衛を無力化する新型兵器」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
能勢さんの新刊。キーワードは集団的自衛権とデータリンク
今までの政府見解/国会答弁では『一般的な情報伝達は集団的自衛権の行使に抵触しない』が、米海軍が導入したNIFC-CAによるデータリンクは共同交戦を可能とするレベルのモノなので、集団的自衛権に関する政府見解を改めないと導入できないのではないか?というのがテーマ(語られていないが、こっちが本命なのでは?と読んでて思った)集団的自衛権をあくまでも厳格に認めないと、経済的、効率的に我が国の防衛ができないが、それでも厳密に認めないことが是なのか?という趣旨。(と、読んだ)集団的自衛権に関する政府見解の推移は必見。
Posted by ブクログ
北朝鮮が頻繁にミサイルを試射し能力を増強しつつあるが、米軍はイージス艦や早期警戒機、地上レーダーの探知能力や、ミサイル撃墜能力、そしてそれらをネットワークで連携する能力を向上させてきた。短時間で到達するミサイルをしかも複数のそれを撃墜させるには、そうせざるを得ないであろう。
日本を防衛するためには、米軍のそれらと自衛隊とのリンクも必要になるだろうが、それが集団的自衛権など法律解釈の見直しなり変更なりの検討が必要な理由である、との説明である。
本書は、現在の日本を取り巻く軍事情勢を分かりやすく解説した好著である。本書に書かれたくらいの知識を知らずして集団的自衛権などの議論をすることは的外れになるであろう。
Posted by ブクログ
防衛省と自衛隊との違い、様々な内部部局やそれぞれの会議の役割など、国防という重要な問題について知らないことが多かったので勉強になる。難解ではなく読みやすい。
警察予備隊から防衛省にいたるまでの変遷、情報公開の必要性など。
情報公開などは、国防に関してはあまり表に情報を出さない方が防衛に資するのかと思っていたがやり方しだいなんだな。
戦争とか軍事とか嫌いだからミリタリー分野なんて知る必要はない!じゃなくて、平和を望むからこそミリタリー知識が必要なんだという主張は納得。
この本が出た後にも日本版NSCの設置法案や集団的自衛権の閣議決定、自衛隊の海兵隊機能の強化の動きなど、防衛に関する新たな動きが出ているので注視していくことが必要だが、そのための基礎知識としても有用な一冊。
Posted by ブクログ
国と国や複数国家が参加する様な共同体同士の戦争において勝敗を決めるものは、各国が持つ兵力、兵員数であったり、武器の能力である科学技術力に大きく左右される。太平洋戦争で日本の敗戦を決定づけたのは、広島と長崎に投下され、多くの市民、いや都市ごと破壊した原子爆弾であった。それ以前の戦局においても航空機や船舶の生産力に止まらず、VT信管と呼ばれる現代戦における近接信管をいち早く取り入れたり、レーダーによる敵捕捉、暗号解析の能力など、あらゆる面でアメリカは敵国である日本を圧倒していた。ポツダム宣言受諾後の日本は米軍占領下の下、二度と戦争を起こさない様に軍隊を持つことを許されず、航空機の生産すらも禁じられた。その後朝鮮戦争時の国内治安維持という名目で現在の自衛隊にあたる警察予備隊が設立されたものの、その時点での日本の軍事力は皆無に等しい。その後ソ連や中国もアメリカに遅れをとりながらも核兵器の開発と保有に成功したが、核兵器を使う事は、反撃により自国を滅ぼす事にも成りかねず、相手に戦争を起こさせない抑止力は武力対武力の「力の均衡」から自らをも滅ぼしかねない「恐怖の均衡」へと変遷する。
一時期は核保有力の数量においてソ連がアメリカを圧倒することもあったが、ソ連はユーラシア大陸に跨り複数の国家と国境を接する国であったから、自国防衛の観点からは仕方ない面もあった。だが、最終的に民主化の波には逆らえず、1991年にソビエト連邦が崩壊すると、唯一の超大国アメリカ一強の時代となる。アメリカが独り強大な国である以上は、誰も逆らわず(世界の警察を名乗るのも理解できる)、それはそれで平和をもたらす要因となる。だがそれも長くは続かない。ロシア、中国の近代戦における技術力はやがてアメリカに追いつき、更には部分的な能力ではアメリカを超えるレベルになっている。かつての核兵器対核兵器の均衡が破られ、次のステージに入っている。
本書はその次を担う新たな力の均衡の主役にミサイル、その中でも飛翔速度がマッハを遥かに超える極超音速ミサイルを主に取り扱っている。その分野では直近のウクライナ戦争でも使用されたとされるロシア連邦の極超音速空対地ミサイル「キンジャール(短剣)」でその存在感が高まったことが記憶に新しい。同ミサイルはマッハ10の最大速度を持つと言われており、航空機から放たれたそのミサイルは核弾頭も搭載可能だ。極超音速ミサイルではロシアや中国が技術的にアメリカを先行していると言われているが、軍事研究と技術は常にイタチごっことされるから、対抗技術が登場し、その戦力を無効化する時代もやがてはくる。本書は2021年に寄稿されたものであるから、日進月歩のミサイル技術もすぐに追いつけ追い越せである(今はその均衡も変化しているかもしれない)。対して近隣にロシアや中国、加えてミサイル技術開発と試射に余念がない北朝鮮が存在する日本は、アメリカ頼みの状況に変化がない。島嶼防衛として配備を進めるものの、いざ発射されたミサイルを打ち落とせるか、更には専守防衛の観点から敵基地ミサイル施設を破壊できるかについては、常に疑問が付き纏う。いやこれはもう打たせてしまったら確実にアウトな状態である事に間違いない。失敗を繰り返すロケット技術もそうであるが、北朝鮮が弾道が読めないミサイルを日本海や太平洋に向けて撃っている姿を目の当たりにして、撃たせない努力を続けるしかない。そうなると多少なりとも反撃能力を持つ事にも意味が見出せるが、物価高に苦しみ今日の生活にも困る国民の厳しい目に晒されるから、八方塞がりだ(だからと言って防衛予算を無意味に増やす事に私自身も同意しないが)。
かつてミサイル技術はスピードと航続力、そして精度と破壊力が重視されて進化してきた。今はそれに加えて敵に撃ち落とされない防御力=回避力が重視される。回避は勿論撃ち落とされない能力だから、これまでの様に楕円を描くまっすぐな軌道では意味がない。ミサイル自身が複雑な上下運動をする様な複雑な軌道を描き、かつ超音速以上で飛翔する必要性が生まれた。そしてミサイル防衛は敵国の発射を捕捉する「目」の役割を担うレーダー、弾道を予測して追尾しつつ最終的に予測しながら破壊する能力が進化した。この予測も前述した複雑な軌道を予測するために、更に網の目の様にレーダーを張り巡らさなければならない。そして複数のミサイルを放って弾幕状に撃たなければ破壊も困難になっている。そしてミサイル発射台が固定基地であるなら、破壊される恐れがあることから、航空機、潜水艦、北朝鮮の様な列車からの発射で更に回避力を高める。軍事技術がイタチごっこである事は、軍事費が国民生活を逼迫する事は目に見えているが、恐怖の均衡の中でこれを怠れば、恐怖が現実になるかもしれない、こんな事を各国のトップは感じているのだろう。
本書を読む事で、その均衡を成立させる技術を理解すると共に、世界平和がそうした恐怖が恐怖を支配する先にしか存在し得ない状況を思い知らされる。誰かが止めれば平和になるか、一国の努力ではなく、世界が漏れなくその方向に同意しなければ意味も実現性もない。その事実を目の当たりにし、さて自身がそれに対してどう考察するか、きっかけを与えてくれる一冊であった。