あらすじ
ジョー・バイデンが副大統領当時に手を付けた
“核兵器と同じ目的を達成する非核手段”とは何か?
◆ロシア・中国が先行する新型兵器
◆極超音速ミサイルが日米に突きつける課題
マッハ5以上のスピードでコースを替えながら飛翔する「極超音速ミサイル」は、迎撃は不可能といわれており、中国とロシアではすでに開発、配備されたと考えられている。この「極超音速ミサイル」の登場が、第2次世界大戦後、70年以上にわたって続いた核を搭載した弾道ミサイルによる『恐怖の均衡』という時代の終焉を意味すると言われている。それは、日本の安全保障にとっても大きな転換期となることは間違いない。バイデン大統領が正式に就任し、世界と日本の安全保障環境にも新しい常識が生まれるだろう。日本の平和はどう守っていくのか?フジテレビで防衛問題を担当する報道局上席解説委員の能勢伸之氏による解説で、その行方を考えるヒントとなる1冊だ。
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Posted by ブクログ
国と国や複数国家が参加する様な共同体同士の戦争において勝敗を決めるものは、各国が持つ兵力、兵員数であったり、武器の能力である科学技術力に大きく左右される。太平洋戦争で日本の敗戦を決定づけたのは、広島と長崎に投下され、多くの市民、いや都市ごと破壊した原子爆弾であった。それ以前の戦局においても航空機や船舶の生産力に止まらず、VT信管と呼ばれる現代戦における近接信管をいち早く取り入れたり、レーダーによる敵捕捉、暗号解析の能力など、あらゆる面でアメリカは敵国である日本を圧倒していた。ポツダム宣言受諾後の日本は米軍占領下の下、二度と戦争を起こさない様に軍隊を持つことを許されず、航空機の生産すらも禁じられた。その後朝鮮戦争時の国内治安維持という名目で現在の自衛隊にあたる警察予備隊が設立されたものの、その時点での日本の軍事力は皆無に等しい。その後ソ連や中国もアメリカに遅れをとりながらも核兵器の開発と保有に成功したが、核兵器を使う事は、反撃により自国を滅ぼす事にも成りかねず、相手に戦争を起こさせない抑止力は武力対武力の「力の均衡」から自らをも滅ぼしかねない「恐怖の均衡」へと変遷する。
一時期は核保有力の数量においてソ連がアメリカを圧倒することもあったが、ソ連はユーラシア大陸に跨り複数の国家と国境を接する国であったから、自国防衛の観点からは仕方ない面もあった。だが、最終的に民主化の波には逆らえず、1991年にソビエト連邦が崩壊すると、唯一の超大国アメリカ一強の時代となる。アメリカが独り強大な国である以上は、誰も逆らわず(世界の警察を名乗るのも理解できる)、それはそれで平和をもたらす要因となる。だがそれも長くは続かない。ロシア、中国の近代戦における技術力はやがてアメリカに追いつき、更には部分的な能力ではアメリカを超えるレベルになっている。かつての核兵器対核兵器の均衡が破られ、次のステージに入っている。
本書はその次を担う新たな力の均衡の主役にミサイル、その中でも飛翔速度がマッハを遥かに超える極超音速ミサイルを主に取り扱っている。その分野では直近のウクライナ戦争でも使用されたとされるロシア連邦の極超音速空対地ミサイル「キンジャール(短剣)」でその存在感が高まったことが記憶に新しい。同ミサイルはマッハ10の最大速度を持つと言われており、航空機から放たれたそのミサイルは核弾頭も搭載可能だ。極超音速ミサイルではロシアや中国が技術的にアメリカを先行していると言われているが、軍事研究と技術は常にイタチごっことされるから、対抗技術が登場し、その戦力を無効化する時代もやがてはくる。本書は2021年に寄稿されたものであるから、日進月歩のミサイル技術もすぐに追いつけ追い越せである(今はその均衡も変化しているかもしれない)。対して近隣にロシアや中国、加えてミサイル技術開発と試射に余念がない北朝鮮が存在する日本は、アメリカ頼みの状況に変化がない。島嶼防衛として配備を進めるものの、いざ発射されたミサイルを打ち落とせるか、更には専守防衛の観点から敵基地ミサイル施設を破壊できるかについては、常に疑問が付き纏う。いやこれはもう打たせてしまったら確実にアウトな状態である事に間違いない。失敗を繰り返すロケット技術もそうであるが、北朝鮮が弾道が読めないミサイルを日本海や太平洋に向けて撃っている姿を目の当たりにして、撃たせない努力を続けるしかない。そうなると多少なりとも反撃能力を持つ事にも意味が見出せるが、物価高に苦しみ今日の生活にも困る国民の厳しい目に晒されるから、八方塞がりだ(だからと言って防衛予算を無意味に増やす事に私自身も同意しないが)。
かつてミサイル技術はスピードと航続力、そして精度と破壊力が重視されて進化してきた。今はそれに加えて敵に撃ち落とされない防御力=回避力が重視される。回避は勿論撃ち落とされない能力だから、これまでの様に楕円を描くまっすぐな軌道では意味がない。ミサイル自身が複雑な上下運動をする様な複雑な軌道を描き、かつ超音速以上で飛翔する必要性が生まれた。そしてミサイル防衛は敵国の発射を捕捉する「目」の役割を担うレーダー、弾道を予測して追尾しつつ最終的に予測しながら破壊する能力が進化した。この予測も前述した複雑な軌道を予測するために、更に網の目の様にレーダーを張り巡らさなければならない。そして複数のミサイルを放って弾幕状に撃たなければ破壊も困難になっている。そしてミサイル発射台が固定基地であるなら、破壊される恐れがあることから、航空機、潜水艦、北朝鮮の様な列車からの発射で更に回避力を高める。軍事技術がイタチごっこである事は、軍事費が国民生活を逼迫する事は目に見えているが、恐怖の均衡の中でこれを怠れば、恐怖が現実になるかもしれない、こんな事を各国のトップは感じているのだろう。
本書を読む事で、その均衡を成立させる技術を理解すると共に、世界平和がそうした恐怖が恐怖を支配する先にしか存在し得ない状況を思い知らされる。誰かが止めれば平和になるか、一国の努力ではなく、世界が漏れなくその方向に同意しなければ意味も実現性もない。その事実を目の当たりにし、さて自身がそれに対してどう考察するか、きっかけを与えてくれる一冊であった。
Posted by ブクログ
アヴァンガルドやキンシャールなどのロシアの極超音速ミサイル/滑空体は、核兵器の運搬手段で有り、米国のMDを突破することを目的としているようだが、等の米国は元々ロシアの戦略核にはMDではなく戦略核による抑止と報復で対校しているので、ここは『恐怖の均衡』が崩れることはないと言える。
ただし、中国の中距離核+極超音速兵器は、A2AD戦略の貯めに、日本や台湾並びに、日本や台湾を救援に来る米軍を狙ったものであり、コレは「新たな脅威」と言える。そして、米軍は新たな迎撃システムの構築と、独自の極超音速兵器の開発で対校しようとしているが、なお研究開発段階であり、一歩で遅れていると言える。
ただし、極超音速滑空体がプラズマに包まれた速度のママ、移動目標を狙える仕組みが実在するのかどうかは疑いの余地があり、中国が戦術核で米艦隊に打撃を与えた場合、米軍の書く報復は避けられないのではないだろうか?また、台湾にある巨大なレーダーシステムは、開戦劈頭の弾道弾攻撃で無力化されるのは必至で有り、平時からグレーゾーン事態までしか役に立たないのでは?とも思った。
最後に:ちょっと読みにくいので☆一つ減
Posted by ブクログ
著者の一連の作品と同様、あまり読みやすくはないが、HGV等の極超音速兵器に関する、専門的な技術的内容以外の基本的情報はまとめられており、基本的知識の把握には役に立つ。
以下、要点。
・極超音速兵器の発端はオバマの核なき世界の実現の構想。非核で核と同様の目的を達成するための手段が極超音速兵器。このため米側の極超音速兵器は全て通常弾頭。ロシアや中国は核弾頭と通常弾頭両方。
・極超音速兵器は技術的にはロシアと中国が先行。米国もようやっと危機意識。
・対極超音速として、米軍はNDSA。ロシアもレーダー等を開発。中国は不明。
・南シナ海は、中国のSLBMの聖域確保という意味合いもある。
以下、参考になった情報。
・グローバルダブルゼロへの中曽根総理の貢献。アジア地域のINF配備が米ソの取引材料にされそうになっていたところ、中曽根総理の提案により、アジアも欧州同様INF全廃となった。
・中国のDF-17はリフティングボディ。星空-2はウェーブライダー
・米側の核への対抗の基本はMADによる相互抑止。BMDはアジアや中東での中距離以下のBM脅威対抗用であり、米本土へのICBM対抗用ではない(GBIはあるが数が足りない)。このため、ロシアがHGV等によりBMDを突破する手段を保有しても、核抑止という観点では何ら影響はない。