藤井讓治の作品一覧
「藤井讓治」の「江戸開幕」「江戸時代の官僚制」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「藤井讓治」の「江戸開幕」「江戸時代の官僚制」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
岩波新書の日本近世史シリーズ第1巻は、「戦国乱世から太平の世へ」。著者は、そもそも「天下」という言葉はどういう意味を持ったのかという問題から本書を書き起こし、織田信長の入京前夜から家光没(1651)までのおよそ100年余の歴史を叙述する。簡潔だがポイントをはずさない筆致は爛熟の極みである。そして、現在の近世史研究の成果をうまく取り込み、通説部分とそうでない部分もわかりやすい。
「戦国乱世」が治まり、「太平の世」が成るということは、国内的な部分と対外的な部分と両面があるが、とくに前者について天皇との関係を中心に近年の近世史の研究成果がふんだんに取り入れられているように感じた。また教科書的な常識であった諸概念についても学界の知見からきちんと批判的に論じられており、高校レベルの日本史の知識を見直すきっかけにもなるだろう(たとえば、「惣無事令」はなかったとする知見。あるいは、ちょっと古い常識だが、「慶安の御触書」の位置付けなど)。一時期、日本の「鎖国」を東アジア世界の「海禁」政策の中に位置付ける議論が盛んになったが、そのあたりも東アジア世界と共通の部分を含みつつも日本的な「鎖国」としてとらえるべきであろうとされている。16世紀から17世紀初頭の世界史的な文脈にあってもヨーロッパの重要性の再確認を促している。
経済史については豊臣政権期の金銀使用の拡大を銭貨の枯渇という側面を認めつつも、領主財政の爆発的拡大と流通経済の急速な拡張を強調した点やいわゆる「田畑永代売買禁止令」の位置付け(幕府が飢饉対策として「百姓成り立ち」に介入してくる)などがとくに興味深い。
蛇足ながら、寛永二〇年に出された2つの郷村仕置定のうち七カ条の第三条に「一身上よき百姓は田畑を買取り、いよいよ宜しくなり、身体ならざるものは田畠を沽却せしめ、なおなお身上なるべからず候あいだ、向後、田畠売買停止たるべき事」とあり、飢饉対策の1つとして出されたものだそうだ(p.217)。富める者が益々富み、貧しい者が益々貧しくなっていくのは、田畠売買に起因するのだからそれをやめなさい、という施策は反市場経済的な格差是正策としても読め、面白い。
Posted by ブクログ
普段あまり考えることが無い、信長・秀吉・家康(及び15代将軍・義昭そして秀忠も含め)などの天下人と正親・後陽成・後水尾各天皇の関係を詳細に解き明かしているこの本も興味津々だった。信長は右大臣を返上し、左大臣、太政大臣、関白、将軍のいずれも辞退。彼にとっては天皇の権威は利用するもので、自分がその上にあるという意識だったと頷ける気がする。ルイス・フロイスは天皇への謁見を信長に依頼した際に「自分が日本国王だ!」と応えられたと書いているそうである。そして、秀吉・家康も天皇を利用しただけで、内心軽んじていたとしか思えない。しかし、天皇はあくまでも天下人の力に頼るべく、いじらしいまでの従順ぶりである。
天正という年号は信長が望んだもので実質決めたようなものだった!信長は天皇を廃止すると考えても不思議でない考えの持ち主だが、天皇制に手を付けなかったのは奇跡のように感じた。正親町という名前には新鮮な感じを持っていたが、単に安直に「住まいが正親町通に面していたから」決められたとは苦笑いである。禁中並公家諸法度が実は重要な朝廷操縦であったとはこれも驚き。