カスガの作品一覧

「カスガ」の「コミケへの聖歌」ほか、ユーザーレビューをお届けします!

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  • コミケへの聖歌

    コミケへの聖歌

    小説・文芸

    3.9
    1巻1,980円 (税込)
    二十一世紀半ばに文明は滅んだ。山奥の僻村イリス沢に生き残った少数の人々は原始的な農耕と苛酷な封建制の下で命を繋いでいる。そんな時代でも、少女たちは《イリス漫画同好会》を結成して青春を謳歌していた。文明の放課後を描くポストアポカリプス部活SF。 第12回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作

ユーザーレビュー

  • コミケへの聖歌

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    本に挟まってたチラシを見て、これは買いだ!となった。
    「二十一世紀半ばに文明は滅んだ。山奥の僻村イリス沢に生き残った少数の人々は原始的な濃厚と過酷な封建制の下で命を繋いでいる。そんな時代でも、少女たちは《イリス漫画同好会》を結成して青春を謳歌していた。文明の放課後を描くポストアポカリプス部活SF。」
    これは、買うでしょ。がっこうぐらし感ある。きらら系ポストアポカリプス。ポストアポカリプス系きらら。

    ディストピア時代、30年続いた暗黒時代で本や文化的な代物はほとんどが焼かれ処分され、時にはそれを守ろうとした人ごと焼かれたという、ちゃんとしたディストピア。いや、これはディストピアではなく、単にポストアポカリプスか。なんかもうディストピアの定義がよくわからなくなってくる。
    そんな中、荒れ果てた廃屋を部室として、女の子4人が漫画、同人誌を書き、今も続いているかわからないコミケを目指すことになる。

    そんな序盤だけで相当面白い。
    でも、別に平和な暮らしができているわけではなく、ディストピアに達してすらいない文明。一応禁忌というわけではないようだが、漫画という趣味に勤しんでいるこの子達が焼かれることにならないか、怖い。

    しかし、思ったよりだいぶポストなアポカリプスだった。
    表紙を見ると、みんなちゃんと制服を着てるから、結局はキャッキャウフフしながら東京を目指してハッピーエンドなのかな、心休まりそう!とか思ってたら、全然そんなことなかった。制服に気を引かれたけど、よく見ると普通に背景は廃屋だったし。

    まず学生とかそういう概念がなく、主人公たちみんな毎日働いている。制服はただのファッション…いや、ファッションすら存在しないから作業着というか。ありものを着ているだけというか。
    主人公は医者の卵として村で日々働き、医者である母の跡継ぎとして当たり前のように将来的には医院を継ぎ、子供を育ててずっと医者の系譜をつなげていく。
    しかも夜這いの風習が普通に復活しており、主人公たちも当たり前のように夜這いを受け入れ、そしていつかは子供を産むという、自由恋愛なんて存在しない社会。

    話が進むと主人公はまだマシな方で、「部員」たちの生活も垣間見え、ますますコミケなんか行ってる場合じゃねーだろ、むしろ行かないでくれという気持ちになってくる。
    きららジャンプが出てくる雰囲気は全くなかった。

    そして中盤になるとなんか普通に主人公以外でコミケに行く雰囲気になったと思いきや、なんか色々な新事実が判明して、なるほど?となってる間にいつの間にか主人公も一緒にコミケに行くことになって終わるという、いささか駆け足に感じる終わり方だった。面白かったけどね。

    しかしまあ、最初はディストピア小説かと思って読み始めたけど、結局ポストアポカリプスであって、ディストピアではなかった。割と色々崩壊してて、特に統制とかされてなかった。普通に文明が昔に巻き戻っただけだった。ディストピアとはなんぞや、ポストアポカリプスとはなんぞやというのを、おかげで再認識できた。やっぱり文明には文化が必要なんだ。
    どうも最近は自分が疲れているのか、優しい創作しか読めなくなってて、ディストピアやポストアポカリプスであってもホラー感はなく毎日を楽しくおかしく生きていくような作品ばっかり読んでたから、やっぱ崩壊というスパイスはいいよな!くらいの勢いだった。全然そんなことなかった。

    書こうと思ったら続きは書けるだろうけど、絶対ハッピーエンドにならないだろうな。読みたいような読みたくないような…

    0
    2026年02月10日
  • コミケへの聖歌

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    人間の現行文明の儚さを感じた。そう。人間は、一度失えば転がり落ちるように全てを失う程度の文明しか持っていないのだと。改めて認識させられた。途中の野盗と集落の戦闘描写などおかずになる文章がぐいぐいと引っ張っていく。ものの哀れ、諸行無常。そして結末に続く余白として、女の子四人がこうなってしまった世界を旅をして無事でいられるわけがないというのが、よりせつない。

    0
    2026年01月27日
  • コミケへの聖歌

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    火山噴火によるカタストロフィーを契機に核戦争が勃発、日本は反知性・科学主義の独裁国家になり、その後内乱の結果東京はじめ都市は消滅。山間へき地にかろうじて人が生き残るも文明は後退し、領主ー大借地農・中借地農ー作人ー野盗等からなる身分制・封建社会になったディストピア。
    マンガ同好会の部活のまねごとをする4人の少女の話から始まるが、4人にも身分の差と身分による役割が隠されている。現状打破や一時的逃避のため、村を脱出し廃京のコミケに行こうとする。

    0
    2025年11月26日
  • コミケへの聖歌

    Posted by ブクログ

    ポストアポカリプス小説は古今東西多々あれど、文明が崩壊した日本において、お伽噺と化してしまった在りし日のコミケを夢見る4人の少女を描いた作品はまずないのではないでしょうか。
    通常よく見るポストアポカリプスSFの展開としては、原因となったAIの暴走との人類存亡をかけた戦いや、核戦争後の生存者を見つける旅や、種の保存を命題とした壮大なものが多くみられますが、本作は表題にあるように「コミケ」へ行くことが題材。とても日本的で、サブカルチックな命題であり、これこそジャパニーズSFでしか成しえないSFといえるでしょう。
    かといって、内容は決してコミカルでライトなだけではありません。
    むしろ、徐々に失われていく文明。そのアーカイブの消失により器具の取り扱い法や病気の対処は口伝でのみ伝えられ、二度と修復できない文明の遺産を壊さないように使っていく。いま、もし電気もガスもなく、上下水も管理できなくなり、物流が停止し、一次生産が人手でしか維持できなくなったとき、われわれの生活はどうなるかという恐怖が克明に書かれています。
    なかでもこの小説では、特に文化度の低下による倫理観の退化を顕著に描かれています。恐らくは文化レベルが室町時代かそれ以前程度まで落ちているのでしょうか、貨幣制度はなくなり、多くは自給自足ができる最低限の人間が集まるだけとなっています。中には小作を使って中規模な村を形成し、昔の野武士集団が山賊をとなったように徒党を組んだあぶれ者が、そういったコミュニティを定期的に襲うようになっている。そんな世界で生きている4人の少女が立場の違いを超え、うち捨てられていたマンガという在りし日の文明の欠片によすがを求め、そのマンガの中の生活に憧れを抱いて現実の厳しさを紛らわせている。いまではこの4人だけが、在りし日の文化的な生活を知っている4人であり、作品中で一番啓蒙的なはずなのに、現実は厳しく実際は高校生活すらがSFであり、夢物語であるということを思い知らされてしまいます。
    しかし、いつの日か日本各地の漫画家が理想を描いたマンガが一堂に会するマンガの祭典、「コミケ」に行くのだという夢をかなえるために、マンガという聖書を手に文化を啓蒙していく使徒として、4人はコミケという理想郷を目指して過酷な旅を始める、いわば第二の創世記たる物語となっています。

    思えば作者のカスガ氏の作品に触れたのは、四半世紀近くも前のインターネットサイト「朝目新聞」。そこに掲載された「明日のナージャ」のパロディ漫画を見たのが最初でした。
    その後氏の作品を追い求めるものの、当時北海道の最東端近くに過ごす貧乏学生には手に入れる手段も、その方法を教えてくれる知恵も同志も無かったため、ただただ検索サイトで見つけた、筒井康隆の「虚航船団」を題材にした氏の一連の作品群等をみて、その無念を晴らすような日々でした。
    しかし、上京後にやっと手に入れたスマートフォンで氏のSNSアカウントを見つけフォローすることができ、そのおかげで見逃すことなくいまこうしてこの作品を手にしている。そういった自分の実体験は、この小説の内容と登場人物の想いに少なからず被っているようで、感に堪えません。
    コミケという一見サブカルで一段低く見られがちなマンガ文化というものが、この作品の世界においては至上の娯楽であり文化的要素となっている。しかし4人の少女以外には中傷され、愚にもつかない扱いをされている。これはひと昔前の小説や俳句に対する扱いと全く被るもので、「学校に行き文章を学ぶと本を読むようになり、仕事をしなくなる」と真剣に懸念した当時の父母と同じ心境のようです。またそれに対抗して啓蒙活動にいそしんだのが正岡子規や夏目漱石であり、主役の4人はいつかこれらの文豪と並び、文化の担い手になるのではないでしょうか。
    形態は変われども漫画や小説は、ただの娯楽ではなくて、何か心を動かす力があるという力強いものでありということをこの小説で感じ、4人の聖歌も必ず成果が生まれるように思います。
    マンガも描かれるカスガ氏の小説。いつか自身でのコミカライズを期待しております。

    0
    2025年03月08日
  • コミケへの聖歌

    Posted by ブクログ

    いい意味でタイトルに裏切られるような作品だった。文明崩壊後のムラの封建社会という厳しい環境下でコミケを希望とする主人公たちがどう生きているのかを残酷な部分も含めて描いているのが読んでいてしんどい。最後の最後に明かされる主人公の母の話も、そんな母の期待を裏切る主人公もつらい。だからこそ、ラストは清々しく感じられるかもしれない。たとえそれが絶望の始まりだとしても。

    0
    2026年06月14日

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