筆者の立川談春は、立川談志の弟子。本書は、談春が談志に弟子入りし、真打ちになるまでのことをエッセイにまとめたもの。
驚くほど面白い。
落語家の世界、特に天才・立川談志について書かれているので、題材として面白くない訳がないのであるが、ストーリーとしての面白さばかりではなく、談春という人は、とんでもなく
...続きを読む文章が上手で読ませる。
また、色んな意味で、過不足のない、絶妙なバランスのエッセイだと感じた。
まず、文章の抑制の効かせ方が素晴らしい。落語家の子弟関係は簡単な関係ではない。お互いに愛憎半ばするはずであるが、師匠の談志についての記述が、これ以上書くと愚痴や悪口になるぎりぎりのところで留まっており、かつ、談春の談志に対する敬愛の念が滲み出ている。
談志についてのエピソードなら、いくらでもあるだろうに、それも、本筋に関係のないところは書かず、本筋と関係のある大事なことは全部書くという、過不足のなさを感じさせる。
落語について詳しい訳ではないが、談志と談春の落語なら、絶対に聞いて損はないのではと思えた。