これは、楽しい本です! 美しい本です! そして、恐い本です!
「マジカルプランツ」とは「食虫植物」のこと…
食虫植物とどのようにして出逢ったらいいか、どのようにして
つきあったらいいか…丁寧に書かれています。
で、何より美しい…ページを開くたびにあらわれる写真に、
まるで宇宙に放り込まれたような浮
...続きを読む遊感さえ味わえます。
「マジカルプランツ」とは、著者の造語であるようですが、
まさに「マジカル」な世界が展開しているのです。
おしゃれで、美しくて、楽しい…ホント素敵な入門書なんです!
でも、世間には、そんな本はいっぱいある…借りもののネタを
並べても、そうした本はできるでしょう。
でも、本書は、そんなところにとどまらない…
そこが、すごくて、恐いところなんです!
一本、筋がピシッと通ってる…著者の理念がしっかりと
全編を通じてあるんです。もしかしたら、こうした本には
そぐわなかもしれない…でも著者は、あえて突き通してる!
長い引用になりますが…「はじめに」では…
ー食虫植物は他の植物との生存競争の中、貧栄養の地で育つことを
余儀なくされました。そしてそんな土地に適応するために
からだの一部をトラップ(罠)に変え、己の姿を
変えることで補虫という能力を身につけました。食虫植物には、
野性的な美しさ、儚さがあります。これをきれいな鉢に植え、
おしゃれに仕立てることで、独特の世界を創造することが
できるのです。
食虫植物の魅力を「儚さ」と云う…それが美しいと云ってる…
ここがすごいです! 「儚」って「人」の「夢」と書くでしょ?
これこそが、著者の云う食虫植物の魅力なんです。
さらに、「あとがき」では、こんなふうに述べてます。
ー本来、園芸は植物を思うままに矯正してゆくサディスティックな
もので、人間的かつ芸術的(破壊・創造的)な、業深いものだと
思います。植物をよい状態にはしたいけれども、そこは私の
エゴだということも忘れたくない。ただし、植物は
私のエゴをものともしないほど、複雑で謎に満ちている。
つまり、ままならぬことを教えてくれます。
生きてるだけでもままならないことの連続で、自分の無力さを
繰り返し痛感させられる。でも、だからこそ、なんです。
著者は、食虫植物を通じ、人が生きてあることの深淵を
かい間見てる…どうですか? 恐いでしょ?
この本は、食虫植物のみならず、人の世が、いや宇宙までもが、
「マジカル」であることを思わせてくれるんです。
なんだか、ボク…めちゃくちゃに感動しました!