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  • 渚にて 人類最後の日

    渚にて 人類最後の日

    小説・文芸

    4.4
    1巻1,100円 (税込)
    第三次世界大戦が勃発し、世界各地で4700個以上の核爆弾が炸裂した。戦争は短期間に終結したが、北半球は濃密な放射能に覆われ、汚染された諸国は次々と死滅していった。かろうじて生き残った合衆国の原潜〈スコーピオン〉は汚染帯を避けてメルボルンに退避してくる。オーストラリアはまだ無事だった。だが放射性物質は徐々に南下し、人類最後の日は刻々と近づいていた。そんななか、一縷の希望がもたらされた。合衆国のシアトルから途切れ途切れのモールス信号が届くのだ。生存者がいるのだろうか? 最後の望みを託され、〈スコーピオン〉は出航する……。読者に感動をもって迫る永遠の名作。/解説=鏡明

ユーザーレビュー

  • 渚にて 人類最後の日

    Posted by ブクログ

    読後は悲しくて、何だかたまらない気持ちになる。
    核戦争後の世界のありよう。なんだか生きることの意味が感じられなくなる。現実感が希薄になる。この本を読めて良かった。核戦争が起きる前で良かった。断じて核廃絶だ。

    0
    2026年08月26日
  • 渚にて 人類最後の日

    Posted by ブクログ

    皆さんは、残り一ヶ月、残り一週間、そしてあと一日と、徐々に世界ごと滅びる運命に置かれたとしたら、どのように行動するだろうか?

    この作品は、そんな究極の問いの答えの一つを、静かにしかし厳かに示してみせる。

    北半球での核戦争が終わり、放射能が徐々に南半球をも侵食していく世界。
    絶対に逃れられない死へのカウントダウンの中で、残された僅かな時間を生きるオーストラリア南部の人々。

    このような状況に置かれたら、人はパニックを起こし、好き放題に背徳的に振る舞うのではないか、そう考える方も多いだろう。

    だけどこの作品は違う。多くの人は、まるで自分たちに死は訪れないかのように、普段通りの時間を愛する人や物とともに過ごし、そして宿命の時を迎えるのだ。
    そこにはもはや悪人はいないと言えるだろう。

    これは現実逃避ではない。
    目を離せば戦争を引き起こしている愚かな人類。
    だけどこの『いつも通りの穏やかな日常』は、まさにその同じ人類が放った、誇りに満ちた最期の輝きだったのだ。僕にはそう思えてならない。

    「こんなに立派で素敵な人たちが、なぜ、なぜ死ななければならないのか。これからもずっと、優しい日々を送ってほしいのに!」
    この小説を読み終えて、僕はこう叫ばずにはいられなかった。


    ここからはネタバレを挟む。
    主要な登場人物五人のうち、僕が最も感銘を受け、琴線を揺さぶられたヒロイン格のモイラ・デイヴィッドソンとその従兄、ジョン・オズボーンを中心に、彼女や彼たちの生き様を眺めてみよう。

    読みたい方、まだ読み終えていない方は、ぜひ最後まで読んでから再び来てほしい。


    モイラは当初は自由奔放で、あたかも単純明快な女性であるかのように描かれる。
    ブランデーに溺れ、今さえ良ければいいと、ただ享楽的に動いているだけのように見える。

    だけどドワイトに出会い、彼の頑なで少し不器用ではあるが誠実な人生観に触れて、彼女も少しずつ変化していった。
    荒っぽい言い方をすると、この作品は彼女の成長物語としても眺めることができるのだ。

    自由を象徴する一人の女性(モイラ)が、規律と誠実を象徴する一人の男性(ドワイト)を愛し、その過程で、さらに大らかな視点を手に入れる。
    このような美しくも尊い過程に、胸を震わせられない人が果たしているだろうか。

    放射能という終幕が、今まさに降り注ごうとしているオーストラリア・メルボルンで、僕ら読者が見出したモイラは、もはやかつての享楽的な彼女ではなかった。

    そこにいたのは、絶対に叶わぬ恋と知りながらも、ドワイトという男性を深く深く、自己犠牲的なまでの献身とともに最期まで愛した女性だったのだ。
    彼女は残された今この瞬間を、愛する人のために最大限に生きようとする女性として、生まれ変わったのである。

    愛車のハンドルを握り、悲しいまでに煌びやかな瞳で見据えた東の灰色の海と空の果てに、彼女はドワイトの姿を認めただろう。
    そうであってほしいと、僕は強く願う。それは彼女にとって最期の、そして最高の花束になっただろうから。


    科学者ジョン・オズボーンは、冷徹なまでに研ぎ澄まされた知性の象徴として描かれるが、それだけなら僕の胸中をここまで揺らさなかったはずだ。

    知的な彼だから、自分の死期を正確無比に知っていたに違いないのだ。
    そこで彼がやったことも、やはり、自分の内で愛せるものを創造することだった。

    彼は掘り出し物のスポーツカー・フェラーリを愛することに決め、深層に秘めたありったけの情熱をそのクルマに注ぎ込み、あまりにも過酷なカーレースに出場しようと決意する。
    そして死闘の果てに、見事な優勝を成し遂げてみせるのだ。

    これは人によっては、読み流しの対象になるエピソードかもしれない。だが僕はこのオズボーンもまた、格好いいと思った。
    この優勝は、自らの愛が本物であったということを、彼自身の手で証明したことに他ならないからだ。
    彼は知性を手にしたまま、より人間らしい男性として生まれ変わったのだ。

    彼は愛車のコックピットで、奇しくもモイラと同じく、ハンドルを握った姿勢で眠りにつく。
    愛するクルマの中で死ぬことができたというだけでも、彼と愛車にとっては本望だっただろう。

    けれど僕はその時のオズボーンの両眼が、モイラ、ドワイト、そしてホームズ一家をも、同時に見据えていてくれたらと願う者である。

    たとえどれほど身体が朽ち果てようとも、彼らの魂の絆はこれからも、強く、強く結ばれ続けるだろう。
    愛すべき登場人物たちよ、Rest in Peace.

    0
    2026年06月13日
  • 渚にて 人類最後の日

    Posted by ブクログ

    善良で、罪のない、20代30代の人たちが絶望の淵に追いつめられていく。残酷で胸が苦しくなった。

    しかし主人公とヒロインがとても気高く、小説全体に品格を感じた。
    彼らは絶望的な状況でもやけになったり、安易な道を選んだりしない。
    それぞれの選択と意志の強さに胸を打たれた。

    後半じわりじわりと恐怖がつのった。この世界に没入しすぎて緊張したのか、読んでいる自分まで腹痛に襲われたことが恐ろしく、読むのを一時中断。少しずつ慎重にページをめくった。結末にむけ覚悟をつくりながら。

    でも最後まで読んでよかった。立ち直れないほど悲しく辛くなるのではないかと心配したが、意外とそんなことはなく、読後は静かな余韻につつまれた。
    永遠の名作と呼ばれるのにふさわしい小説だと思った。
    こんな未来にならないことを強く願う。

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    2026年05月04日
  • 渚にて 人類最後の日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    核戦争後、北半球は壊滅し、南半球にも死の放射能が迫る。オーストラリアに滞在する米潜水艦艦長・タワーズ はすでに失われたはずの家族を心の中で生かし続け、過去に縛られて生きている。彼と出会った モイラは、絶望的な現実を受け入れながら“今”を生きようとする。終末が迫る中、対照的な二人は静かに惹かれ合うが、決して交わりきらないままそれぞれの形で最後の時を迎えていく。450頁超で長かったが、一気読みだった。核戦争のリアルと見えない放射能が迫ってくる中で自分の最期を見つめる。あり得なくもない人間の終末想像だった。⑤

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    2026年03月30日
  • 渚にて 人類最後の日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ドワイトとモイラのあと一歩踏み込めない関係性。
    ドワイトの家族はもうとっくにいないことがわかっているが認めたくないという気持ち。
    みんなのやるせない思いを抱きながらも、日常を過ごそうとしているのが上手く描かれていた。

    合衆国から届いたモールス信号は生存者の出したそれではなかった描写あたりからぐっと本作品に引き込まれていった。
    それ以降はもう全員助からないんだなと思い、読み進めるのが辛かった。

    章ごとにだんだんと希望は薄くなり、最終章はかなり重たかった。
    最後にドワイトがモイラに再度キスしようとして、モイラに拒まれた。
    ドワイトはどんな心境で再度キスしようとしたのだろうか?
    自分が死にに行くことを決めたから、もう家族はとっくにいないことを認めモイラに情が移ったのか。それともモイラへの気遣いだったのか。

    読後感はかなり重めだが自分好みの作品だった。

    0
    2026年03月25日

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