【感想・ネタバレ】渚にて 人類最後の日のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読みたいと思いつつ後回しにしてた一冊。
評判通り素晴らしい小説でした。カテゴリ的にはSF小説に分類されてると思いますが、率直に言ってもったいないですね。
SFというだけで敬遠されることも多いでしょう。この本は普遍的で大切なメッセージが込められているので、もっと広く受け入れられるような土台があればいいですね。
中学生あたりの英語の教科書に載っててもいいんじゃないかと感じました。

当時としてはかなり身近なテーマだったとは思うんですが、今読むとちょっと違和感を覚える部分もあります。現代の我々ではどうやっても感じ取れない空気感もあるでしょう。
それでも「人はどのように生きてどのように死ぬか」というテーマはズシリと重くのしかかってきます。

この本の主だった登場人物たちはある意味で最高の死に方を迎えられました。そこにいたるまでの各々の心情の変化の描写が秀逸です。
誰かしらに感情移入できるような配慮もなされています。私は科学士官でレースオタクのオズボーンが一番響きました。
モイラは最初ちょっと当時の女性像っぽい印象があってあまり好ましくなかったんですが、最終的に一番魅力のある人物になっていました。お酒好きなのも嫌悪感があったんですが、あれは伏線でもあったんでしょうかね。
罰当たりな行動に出る人や嘆き苦しみながら死んでいった人の描写が一切なかったのは意図的なんでしょうね。

最終的に誰も南極を目指さなかったのか少し疑問に感じましたが、時代的なものもあるのかもしれませんね。

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2024年01月06日

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初シュート。人類滅亡もの。WW3の核使用に伴い、北半球から放射能汚染による死滅が始まる——徐々に死にゆく過程が泣かせます…こういう読後感の翻訳ものは個人的に珍しいなぁと。昨日までは何でもなかったのに、ある日突然襲われる放射能の恐怖。死が近づくにつれ、今まで表に出てこなかった人間性が顕著になり、大変興味深いです。現代に生きるすべての人が読むべき作品だ。星四つ半。

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2023年12月02日

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ネタバレ

人類存続の希望をめぐる海洋冒険小説、かと思って読み始めたら、なんか日常(ぜんぜん日常ではないのがだんだんわかるものの)パートが長いな...→完全にそっちがメインの話で好みだった。

絶対に全員死んでいる何ヶ月後かに咲く花を植える、これから伸びる枝の話をする、就職のための習い事を始める、
絶対に全員死んでいる故郷の街を見て「あの店が看板を出しっぱなしなんて珍しいな」と言って、後に船を捨ててそこまで泳いでいく、
絶対に全員死んでいる家族へのお土産を必死に探して、それから最後には家族のいる国へ帰る。
地続き、海を挟んでいるけど船に乗る人にとっては此処から続いているところに、ありありと思い浮かべられる今まで通りの街並み、家並みのままの、死者の国がある。

そういう話がずっと続いていて、極限状態の人間の醜さ!みたいのはほとんどなく、受け入れられないことが愚かだという話でもなく、
(まだ赤ん坊の娘を、苦しませることなく薬で死なせてやらなければならないのに、それを妻が考えようとしない、現実を見てない、と腹を立てる夫のシーンがあったけど、
それを現実として捉えたら残りの数十日を生きていくことができないから今は考えない、というのも毎日娘に接してる妻にとっては現実的な対処だろうなと思った)、

目減りしていく残り時間の中で、足掻くことも不可能で、やりたいことを良識の範囲でやったりなるべく穏やかでいることを考えたりして、
何の希望もなく人類は終わるんだけど、登場人物たちは奪いあったり憎みあったりしない最後を迎える、という、思ってたのと全然違う・思ってたより好きな話だった。

何十年前の小説なので、いろんな描写に今の感覚では引っかかるところが当然あるし、解説にあったように、現在の通信技術や世界情勢だとこんな「ほのぼの」した終わりは絶対無理だとも思うんだけど、それでも静かで穏やかな、終末に向き合ったり見なかったりする日々の話で、すごく意外で良かった。

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2023年10月08日

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読み終わった後にしばらく落ち込んでしまった。
何年か前にこの原作と知らず映画で観たような気がすけれど、2012かエンドオブザワールドかどうかは思い出せない。

今の日常がいかに希望に溢れて幸せなのか改めて思い、家族を大切にせねばと心に密かに誓う。

物語の最後の方は読むのが辛かった。半年前とかはまだ本当にそうなるのかと半信半疑だったのが一週間、明日、数時間後とかなってきて、いよいよ現実逃避出来ないとわかってくる描写が読んでて辛い。家族や大切な人との間でも覚悟の意識や死期のズレもあってきつい。

でも読んで良かった。

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2023年05月15日

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核戦争後の地球、北半球では既に1700発にも上る核兵器とその放射能によって人類は全滅したと思われ、南半球こそ被害は少なかったものの、放射能は赤道を超えて徐々に汚染の範囲を広げてきている…。

人類滅亡前日譚という、絶望を伴った暗いテーマの小説。ずいぶん昔、多分中学生の時に抄訳を読んだ記憶があるのだが、その時はずいぶん怖いディストピア小説のイメージを持った。放射能障害の描写が「はだしのゲン」のそれを彷彿させて読むのがツラかったことを思い出していた。

だが、これは解説で鏡明も書いているのだが、大人となった今読むと、この本はそこまで暗い小説には思えず、むしろ人生の生き方のお手本を示されたような感想を抱いた。

あと数か月で自分たちは確実に死ぬ、と分かっていても、日々の仕事や暮らしをできるだけ変わらず行い、不安や焦燥を持ちつつも、その気持ちを抑え込むだけではなく、その気持ちとともに人間らしく生きていく姿勢。

この小説で描かれている登場人物たちの生き様を読んで、自分の日々を反省する。
このレビューを書いている今、まさにコロナ禍、不安や不自由はたくさんあるが、その不安や不自由に必要以上にグラグラと揺さぶられていないか?
自分ではどうしようもない現実に右往左往して、自分のできることを行わなず、コロナを言い訳にしてその怠惰を観ようとしていないのではないか?

この時期に読めて良かった。こんな今でもやるべきことをやり、やりたいことを追いかけて自分はきちんと生きていきたいのだと、再認識できた。

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2022年02月06日

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北半球の人類を死滅させた放射能が刻々と迫る中、恐慌や暴動とは離れた観点で、物語はゆっくりと進行する。
一縷の望みをかけて出航した原子力潜水艦、そこからどういった驚愕の展開を見せてくれるのか、これから何が待っているのかと期待していたのですが、これはかなり良い意味で裏切られました。
ゆっくりと静かに終わりへ向かう、その恐ろしくもどこか清々しいような物語を、「渚にて」と表した訳者さんのセンスに脱帽です。

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2022年01月07日

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ネタバレ

文庫版の裏表紙に書かれている本書の紹介文は下記の通りだ。

【引用】
第三次世界大戦が勃発、放射能に覆われた北半球の諸国は次々と死滅していった。かろうじて生き残った合衆国原潜”スコーピオン”は汚染帯を避けオーストラリアに退避してきた。ここはまだ無事だった。だが放射性物質は確実に南下している。そんななか合衆国から断片的なモールス信号が届く。生存者がいるのだろうか?一縷の望みを胸に”スコーピオン”は出航する。迫真の名作。
【引用終わり】

上記のような紹介文を読んだら、誰でも、モールス信号の謎に興味を持つというか、それがこの小説の本筋だと思ってしまうはずだ。ミステリー仕立てのSF、最後に意外な結末が待っているのではないか、と。ところが、実際に読み始めてみると、物語の展開は、ドラマチックではなく、かなりゆっくり。登場人物が多い小説ではないが、その登場人物の生活ぶりや、登場人物同士の関係性を示すエピソードを、かなりゆっくり、じっくり、ページ数を使いながら描いていくのである。私は創元SF文庫版を読んでいるが、本書は文庫本で解説まで含めると470ページを超える分厚い本だ。ドラマチックなミステリー仕立てのSF小説に、なぜ、こんなにページ数が必要なのだろうか、なぜ、こんなにストーリー展開がゆっくりなのだろうか、と疑問に思いながら読み進めた。
ところが、途中から、これはそういうミステリー仕立てのSFという種類の小説ではないということが分かってくる。副題が「人類最後の日」であるが、人類最後の日に向けて、登場人物たちが、また人間が、どのように最後の時を過ごすのかということがテーマであろうことが分かってくる。だから、一人一人の人生を詳しく描いておく必要があったのだ。それが実際に分かるのは、全体の半分くらいを読み進んでから。それまでは、ストーリー展開のゆっくりさ加減に退屈を感じていたのであるが、それに気がついてからは、一気に読んでしまう面白さであった。

この小説を読んだ人は、同じ状況が起こった時に、すなわち、自分を含めた人間全員が、数日からせいぜい数週間の間に亡くなってしまうことが分かったら、「自分ならどうするだろうか?自分ならどのように最後の時を過ごすだろうか?」と考えるはずだ。この小説の登場人物たちは、家族を中心に、自分の愛する人のために最後の時間を過ごす。私が受け取った本書のメッセージは、大事なことは人を愛すること、ということだった。

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2021年09月26日

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時はただ過ぎるというのを切に感じる一冊です
読後に後悔も喜びもなく自身に落とし込むのみなのを感じます
とてもすてきな一冊でした

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2021年09月12日

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淡々と迎える最後の日について。あらすじではアメリカに生存者が?という部分が書かれていたので、そこがメインのものかと思いましたが、そうではなく緩やかに、しかし確かに訪れる最後の日を各人が迎える話でした。パニックに追われるのではなく、こういう終わりを迎えられるならある意味救いだなと思った。タワーズ艦長とモイラの関係も好きだったし、最初に私が泣かないとはどうして思ったのだろう?という言い分に胸を打たれた。

読んでいる間中、自分は誰と一緒にいたいかと考えていたけど、やっぱり家族とだし、何も変わらないように本を読んだり、お日様を浴びたいと思った。そして症状が出てから、やっぱり薬を飲むんだろうと思う。ずーんとくる、不思議な作品だった。

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2021年01月04日

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ネタバレ

 核爆弾の多く使われた第三次世界大戦後の世界を舞台とする、とても静かで穏やかな小説でした。人間の世界の終わりを前にした人々の行動が描かれ、それがこの小説を単なる近未来SFではないものとしていると思います。
 故郷の家族の元に帰ることを願う潜水艦の艦長、家族を支える潜水艦連絡士官と現実逃避しようとする妻、逆に徐々に現実を受け入れていく艦長のガールフレンドとレースで優勝することが夢な親戚の科学士官、自分の仕事を投げ出す人々と最後の願いを叶えようとする人々。
 そうして人類が世界の終わりを迎えていく中で「世界は残っていく」という言葉が重いです。とても素晴らしいお話でした。

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2020年03月23日

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逃れられない終末に向かう人々の強さに胸を打たれる。自分がこの状況に立ったとき、果たして同じような強さを持てるだろうかと考えさせられた。 終末の美学と言うのは軽率かもしれないけれど、この世界とこの世界に生きた人たちはただただ美しく感じた。

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2019年10月23日

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世界がゆっくりと終わっていく。打開策も超展開もなく、ただ終わっていく。それだけの話なのに、なぜか心を掴まれた。映画を観ているかのように、ひとつひとつのシーンがありありと目に浮かんできた。

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2019年08月02日

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バーナード嬢曰く。で、神林しおりが海で読んでいた本なので読みました。
終末を描いた作品。絶対に人間が死に絶えるとわかっている世界を、軍人とその家族、そしてその家族を取り巻くまた別の家族のやり取りの中で綺麗に描いている。

人類最後の日が来る中で、愛車に乗って愛車を走らせて死にたいと思う男や、人類最後の日も仕事である軍務に忠実であり続ける男、妻と娘と完璧で美しい家庭を愛して維持する男、自由で愛を持っている女、人類最後の日までに高級なワインを飲み尽くす男…
パニックになったり劇的なことが起きるわけでもなく、ほんとに淡々としている。その淡々としている理由にリアリティを持たせているのが、「いつか死ぬのはわかっているが、この場所では誰も具体的に死んだところを見ていない」というところ。通信も情報も死んでいるから、ただこの場所がいつか終わることしかわからない。わからないから、みんなあくまでも穏やかに毎日を過ごす。しかし未来の話をするときにどうしても現実離れした夢のような話になってしまう。そのバランスが絶妙。そしてみんな同時に死ぬ。綺麗な話だった。

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2018年11月21日

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心がシンとするような、静かな物語。
人類の終末において、一人ひとりが、死を自分事としてゆっくりと受け入れていく様が丁寧に描かれている。
いつどんでん返しがやってくるのかな、と淡く期待していたけれど、来る日はまっすぐにやって来た。

未来に思いを馳せて予定を作る人、一縷の希望に背中を押されて航海する人、同じ運命を辿るとしても各々思い思いの選択肢を選び、主義を貫いていく姿は読んでいて胸が苦しくなってくる。
夢、憧れ、生活、恋愛、子育て…滅亡に瀕していてもそういう日常を続け、むしろ一層輝いて日々を満喫する姿はとてもリアルで、もし現実にこんな事態がありえたら、きっとこうなるのかもしれない、と思えるほどだった。

本作を読むと、福島原発を思い出さざるを得ない。
今なお帰宅困難区域に指定され、放置されている地域。
現実にそんな街が存在していること。
故郷に帰ることが叶わない人々が存在していること。
他人事と思えなくなって、うすら怖くなる。
もし、この家に、この家が存在しているとわかっているのに、一生帰れないとしたら…?

読後、暫くは感動、死の恐怖の波に飲まれて、何も手につかなかった。
身近に病気を患っている人がいるから尚更。
でも、恐れていてもしょうがないので。
死は誰にも必ず訪れるし、生きることは生きている限り続くものなので、今日をいつも通り生きようと思い至った。
明日が来ることに感謝して、今日もおやすみなさい。

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2017年11月05日

Posted by ブクログ

ずっと気にはなっていた一冊。
あらすじからだと、どんだけパニック&アクション&スリル満点でしんどい内容なのかとか思っていたけれど、予習に読んだ「パイド・パイパー」で、やかましい小説を書く人じゃないんだなとか安心したので、いざ読んでみたら、悔しました…。
あー…、駄目だコレ名作だわ(笑)
人生後半、余裕ある読書時間が持てる様になったらゆっくりじっくり味わいながら読みたい一冊でした…。憂鬱な通勤電車でちょこちょこ読み進めたのは勿体無かったわ…。

あと○週間でみんな死にますって云われたら、カーレーサーの夢を叶えるのも良いと思うし、気になる人の為に尽くしまくる楽しみに耽るのも良いし、のんびり釣りに出かけるのも素敵だと思いますが、ワタシはこういう名作をふかふかの布団に寝転がって読みながら過ごしたく。

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2017年08月05日

Posted by ブクログ

最期を迎える時に、人間はどう振る舞うのか。
結局人間というのは何かせずにはいられないから、日常と同じように行動するのだなとつくづく思った。
自分だけは大丈夫、自分だけは死なないという漠然とした思い上がりは、津波やフクシマのことを考えさせられる。
現実逃避というよりも、残された日々を幸せに過ごしたいという思いゆえに近い未来の話を繰り返す人々の会話が、寂しく、いじましく、切なくて涙が止まりませんでした。

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2018年01月30日

Posted by ブクログ

死が迫りつつあるにも関わらず冷静な主人公たちの姿をみて、地球最後の日は意外とこんなものなのかもしれないと思った。
遠くの国の争いであっても、決して対岸の火事と思っては行けないということを胸に刻む必要がある。

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2024年06月02日

Posted by ブクログ

新訳復刻版

原作は1957年の発刊。舞台は1961年のオーストラリア。
第三次世界大戦が勃発し、北半球で約4,700個の核弾頭が使われ、北半球は濃密は放射能に汚染され、死滅した。

かろうじて生き残った、アメリカ海軍の原潜USSスコーピオンは汚染を避け、メルボルンに退避してくる。

しかし、南半球にも迫る放射能。シアトルからはとぎれとぎれのモールス信号が打電されている。
生存者はいるのか?オーストラリアに生き残る少ない人類の運命は?

映画化、ドラマ化もされた名作。
穏やかな気持ちで読める名作。

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2024年05月24日

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ネヴィル・シュート(1899~1960年)は、英ロンドンで生まれ、オックスフォード大学卒業後、航空工学者として働く傍ら、小説を執筆し、生涯で24冊の作品を出版した。
その作品は、自らのキャリア・体験に基づいた、航空業界、ヨット、戦争などをテーマとしたものが多く、代表作と言われる、近未来を扱った『渚にて』(原題『On the Beach』)(1957年)は、特異な作品である。
私はよく本を読む方だが、ノンフィクション系の本が多く、SFや近未来を扱った小説では、『1984年』、『すばらしい新世界』、『華氏451度』、『2001年宇宙の旅』、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、『星を継ぐもの』、『日本沈没』、『復活の日』等、超有名作しか読んだことはないのだが、本作品については、以前より気になっており、今般読んでみた。
読み終えて、まず感じたのは、小松左京の『復活の日』(1964年)との類似性(と違い)である。読後にネットで調べたところ、やはり『復活の日』は本作品を下敷きにしているとのことだが(本書の帯にも小松左京がコメントを書いている)、決定的に異なる結末を用意しながらも、両者のメッセージは同じものである。
そのメッセージとは、世界を敵味方なく滅亡させる核兵器や生物兵器(『復活の日』での滅亡のきっかけは、兵器として研究開発されていたウイルス)の愚かさであるが、近年の、ロシアのウクライナ侵攻や、ハマスのイスラエル攻撃とイスラエルのガザ侵攻に伴う中東の緊張感の高まり、北朝鮮の核兵器開発、中国の軍事力強大化等を見ると、そのリスク・脅威は全く変わっていないと思われる。第二次世界大戦後に作られた「世界終末時計」は、アメリカと(当時)ソ連が水爆実験に成功した1953年に「2分前」まで進んだ後、東西冷戦の終結等により1991年には「17分前」まで戻されたが、その後再び針は進み、2024年現在「1分30秒前」を指しているという。
更に、半世紀前と異なる点として、気候問題や環境問題、食料問題等、中長期的な観点から、人類の滅亡に繋がり得るリスクが増大していることがある。敷衍するならば、AIの進化や遺伝子工学の進歩も、人類(いわゆるホモ・サピエンス)を人類で無くしてしまうリスクを孕んでいると言えるだろう。「世界終末時計」も、現在では、そのファクターとして、(核)戦争だけでなく、気候変動や新型コロナ感染症蔓延を織り込んでいるのだ。
本作品では、人類の滅亡に直面した人々が、パニックに陥ることなく、それまでと変わらない日々を愉しみ、(穏やかに)最期を迎えることが、強く印象に残るのだが、それはおそらく、「破滅に直面してなお人には守るべきものがある。人は気高い存在であるべきなのだ。」という著者のもう一つのメッセージなのだ。(解説で小説家の鏡明もそう書いている)
様々な意味で未来への分岐点にいる今、改めて読む意味のある名作といえよう。
(2024年4月了)

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2024年04月24日

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ネタバレ

登場人物が少ないので誰が誰と惑わなくて済む。
ソ連が出てくることから昔に書かれたものだとはわかる。
今は核戦争の脅威が高まってるけれど、この話は核戦争のあとの話。
死ぬまでもがき苦しむ風でなく、きれいに自決するのが最後なのであっさり終わっている。
世界中がこのように自決したから全体の印象も綺麗なままになったということか

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2022年11月13日

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核戦争後に、人類が最後の日を迎えるまでの生活を描いた話。
核戦争というワードを除けば、ただの日常を描いた小説。

しかし、そんな中にも迫る放射能と闘う人間の葛藤があって面白い。私も、最後の日がいつと分かっていてもいつもの日常が送れるだろうか…

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2019年12月24日

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時折挟まれる、ゆっくりだが確実に迫ってくる滅びの描写がよい。
そして、滅亡を受け入れつつも残りの人生を精一杯生きようとする人々の様子もよく書かれていた。
そこが少し冗長に感じる部分でもあったが。

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2019年12月17日

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ネタバレ

 終末モノの傑作と言われているのだとか。人類最後の日、あなたならどう過ごしますか?的なアレだ。
 核戦争により北半球が人の住めない地になり、南下を続ける放射能は南半球の豪州にも忍び寄る。もはや助かる道はないと思われ、人類最後の日が刻一刻と迫る。微かな生への期待も持ちつつ、人は人類最後の日にどう対峙してゆくのか。そんな小説。

 大きく二つのことに思いを馳せた。一つは、核戦争というテーマをリアリティを持って読まなかった自分への懐疑。もう一つは、最後の日に向かう登場人物ごとの過ごし方の違いがどうして生まれたのかということ。
 
 まず一つ目、「核戦争」モノであるという側面について。
 この小説は、ある小国の核使用が大戦の原因となっており、1957年という時代に書かれたものでありながら、現代でも説得力のある設定に思える。
 しかしながら、私はこの小説に対し、核兵器や戦争への警鐘としての印象を抱かなかった。巻末の解説に「核戦争にあっては傍観者は存在しないというのが、この作品のメッセージだった」とありここで初めて気が付いた。
 それは平和ボケなのかもしれない。9.11もISによるテロも、日本の外で起こっていることだし、中朝に絡む日米安保体制云々だって、申し訳ないが(←誰に?)政治の世界の話として認識してしまっている観はある。
 この小説に静謐な印象を抱いたのだとすれば、それはとんでもない勘違いなのかもしれない。自分がなんの前触れもなく戦争の当事者になったならば、この小説の登場人物のように振る舞うことなく、戸惑い、暴れたり略奪したりする側になってしまうのかもしれない。
 人類最後の日という思考実験など机上の空論でしかなく、現実にはただ地獄のような光景が広がるのかもしれない。

 それはそれとして、もう一つの「最後の日を迎えるということ」について。
 登場人物毎に、過ごし方は少しずつ異なる。軍人としての誇りを貫き、誠実に生きる者。どうせ最期ならとやりたかったことを叶える者。今まで通りの生活をやり通す者。そしてもちろん、自暴自棄になってしまう者。
 どう過ごすかという問いに、きっと正解は無いと思う。軍人としての規律なんてもういいだろという者もいるだろう、最後まで人間の尊厳を貫くべきだという者もいるだろう。
 ただ、自分なりの答えを出したときに、自分の一番大切にしていたものに気が付くのかもしれないな、と思った。最後の日になってなお、自分の中で揺るがないものがあってくれたらいい。

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2019年01月23日

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ネタバレ

半分過ぎてからやっと出てきた死体の描写で、やっぱり死んでるんだ…という現実味が出た。それまでどこかふわふわした気持ちで読んでいた。戦争を経験したこともないし。軍人のこともよく分からないし。
もう終わりが迫っているのに、未来の希望を語らずにはいられない人々。でも最後はまだ動けるうちにと、自ら死を選んでいく姿がただただ悲しかった。悲しくて静かな余韻だった。

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2019年01月11日

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核戦争により終末を迎えようとする世界、オーストラリアでのできごと。終末に向かって生きるキャラクターたちの生きる姿が淡々と描かれていて、見届けたいという気持ちを抱きながら読み終えた。決して明るくはない話のはずなのに、読後感も悪くはない。

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2018年12月09日

Posted by ブクログ

淡々と静謐にそして誠実に「どんなに理不尽なことがあっても、人は生きて、最期には必ず死ぬこと」を描き切っている。大きな動きもうねりもないけれど、必ずこの本の最後まで辿り着きたいと思わせる。
死ぬとわかっていたら、なにをするか。
誰と過ごすか、なにを愛して美しいと思うか、怒るか、悲しむか。
わたしはきっと大好きな歌を聴く。
あまりにも単純で、ずっと忘れていた歌を歌う。

もっと誇り高く生きて、知らないことをたくさん知りたいと思う。読んでよかった。

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2018年11月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

終末を迎えた人々の生き方。
人間の尊厳を保った最期というべきか。

淡々とした静けさが好もしい。

人は必ず死ぬことは決まっているわけで、その時がわかった場合どうするか、と。残念ながら自暴自棄になるほど未来に希望をもたない身としては、本書の主要登場人物たちと同じく、その日まで普通に(普通って何?とも思うが)、静かに生きるのみと思う。

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2024年05月02日

Posted by ブクログ

いやー名作。ドローンとかあったらもっと探索できるのにーと思ってたらこれ1957年の作品だった。
ひしひしと迫る終末、読んでて息苦しい。それでいて清いという不思議な感覚。
モイラいい子だった。みんな正しい。

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2023年09月14日

Posted by ブクログ

面白かった。
核戦争後、暴力的な描写は一切なく物静かにゆったりと時間が過ぎてゆく世界。
中盤、潜水艦乗組員のラルフ スウェインが許可なく降りて故郷に帰るところが印象的だった。

ラスト、錠剤で最後を迎える人々を描いているがそれに至るまでの葛藤とか苦しみは、ストーリーの構成上描けないんだろうな。
でも、ホームズには娘つ妻を看取って欲しかった。

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2018年09月07日

Posted by ブクログ

どんなに辛くとも、汚くとも
安楽死という決断はあってはならないのではないか
それが西洋の思想なのかもしれないけど
いずれ死ぬということが分かっていても這いずりまわっても、そのときを待つしかないでしょう

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2017年11月15日

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