ユーザーレビュー 渚にて 人類最後の日 ネヴィルシュート / 佐藤龍雄 読みたいと思いつつ後回しにしてた一冊。 評判通り素晴らしい小説でした。カテゴリ的にはSF小説に分類されてると思いますが、率直に言ってもったいないですね。 SFというだけで敬遠されることも多いでしょう。この本は普遍的で大切なメッセージが込められているので、もっと広く受け入れられるような土台があればいい...続きを読むですね。 中学生あたりの英語の教科書に載っててもいいんじゃないかと感じました。 当時としてはかなり身近なテーマだったとは思うんですが、今読むとちょっと違和感を覚える部分もあります。現代の我々ではどうやっても感じ取れない空気感もあるでしょう。 それでも「人はどのように生きてどのように死ぬか」というテーマはズシリと重くのしかかってきます。 この本の主だった登場人物たちはある意味で最高の死に方を迎えられました。そこにいたるまでの各々の心情の変化の描写が秀逸です。 誰かしらに感情移入できるような配慮もなされています。私は科学士官でレースオタクのオズボーンが一番響きました。 モイラは最初ちょっと当時の女性像っぽい印象があってあまり好ましくなかったんですが、最終的に一番魅力のある人物になっていました。お酒好きなのも嫌悪感があったんですが、あれは伏線でもあったんでしょうかね。 罰当たりな行動に出る人や嘆き苦しみながら死んでいった人の描写が一切なかったのは意図的なんでしょうね。 最終的に誰も南極を目指さなかったのか少し疑問に感じましたが、時代的なものもあるのかもしれませんね。 Posted by ブクログ 渚にて 人類最後の日 ネヴィルシュート / 佐藤龍雄 初シュート。人類滅亡もの。WW3の核使用に伴い、北半球から放射能汚染による死滅が始まる——徐々に死にゆく過程が泣かせます…こういう読後感の翻訳ものは個人的に珍しいなぁと。昨日までは何でもなかったのに、ある日突然襲われる放射能の恐怖。死が近づくにつれ、今まで表に出てこなかった人間性が顕著になり、大変興...続きを読む味深いです。現代に生きるすべての人が読むべき作品だ。星四つ半。 Posted by ブクログ 渚にて 人類最後の日 ネヴィルシュート / 佐藤龍雄 人類存続の希望をめぐる海洋冒険小説、かと思って読み始めたら、なんか日常(ぜんぜん日常ではないのがだんだんわかるものの)パートが長いな...→完全にそっちがメインの話で好みだった。 絶対に全員死んでいる何ヶ月後かに咲く花を植える、これから伸びる枝の話をする、就職のための習い事を始める、 絶対に全員死...続きを読むんでいる故郷の街を見て「あの店が看板を出しっぱなしなんて珍しいな」と言って、後に船を捨ててそこまで泳いでいく、 絶対に全員死んでいる家族へのお土産を必死に探して、それから最後には家族のいる国へ帰る。 地続き、海を挟んでいるけど船に乗る人にとっては此処から続いているところに、ありありと思い浮かべられる今まで通りの街並み、家並みのままの、死者の国がある。 そういう話がずっと続いていて、極限状態の人間の醜さ!みたいのはほとんどなく、受け入れられないことが愚かだという話でもなく、 (まだ赤ん坊の娘を、苦しませることなく薬で死なせてやらなければならないのに、それを妻が考えようとしない、現実を見てない、と腹を立てる夫のシーンがあったけど、 それを現実として捉えたら残りの数十日を生きていくことができないから今は考えない、というのも毎日娘に接してる妻にとっては現実的な対処だろうなと思った)、 目減りしていく残り時間の中で、足掻くことも不可能で、やりたいことを良識の範囲でやったりなるべく穏やかでいることを考えたりして、 何の希望もなく人類は終わるんだけど、登場人物たちは奪いあったり憎みあったりしない最後を迎える、という、思ってたのと全然違う・思ってたより好きな話だった。 何十年前の小説なので、いろんな描写に今の感覚では引っかかるところが当然あるし、解説にあったように、現在の通信技術や世界情勢だとこんな「ほのぼの」した終わりは絶対無理だとも思うんだけど、それでも静かで穏やかな、終末に向き合ったり見なかったりする日々の話で、すごく意外で良かった。 Posted by ブクログ 渚にて 人類最後の日 ネヴィルシュート / 佐藤龍雄 読み終わった後にしばらく落ち込んでしまった。 何年か前にこの原作と知らず映画で観たような気がすけれど、2012かエンドオブザワールドかどうかは思い出せない。 今の日常がいかに希望に溢れて幸せなのか改めて思い、家族を大切にせねばと心に密かに誓う。 物語の最後の方は読むのが辛かった。半年前とかはまだ...続きを読む本当にそうなるのかと半信半疑だったのが一週間、明日、数時間後とかなってきて、いよいよ現実逃避出来ないとわかってくる描写が読んでて辛い。家族や大切な人との間でも覚悟の意識や死期のズレもあってきつい。 でも読んで良かった。 Posted by ブクログ 渚にて 人類最後の日 ネヴィルシュート / 佐藤龍雄 核戦争後の地球、北半球では既に1700発にも上る核兵器とその放射能によって人類は全滅したと思われ、南半球こそ被害は少なかったものの、放射能は赤道を超えて徐々に汚染の範囲を広げてきている…。 人類滅亡前日譚という、絶望を伴った暗いテーマの小説。ずいぶん昔、多分中学生の時に抄訳を読んだ記憶があるのだが...続きを読む、その時はずいぶん怖いディストピア小説のイメージを持った。放射能障害の描写が「はだしのゲン」のそれを彷彿させて読むのがツラかったことを思い出していた。 だが、これは解説で鏡明も書いているのだが、大人となった今読むと、この本はそこまで暗い小説には思えず、むしろ人生の生き方のお手本を示されたような感想を抱いた。 あと数か月で自分たちは確実に死ぬ、と分かっていても、日々の仕事や暮らしをできるだけ変わらず行い、不安や焦燥を持ちつつも、その気持ちを抑え込むだけではなく、その気持ちとともに人間らしく生きていく姿勢。 この小説で描かれている登場人物たちの生き様を読んで、自分の日々を反省する。 このレビューを書いている今、まさにコロナ禍、不安や不自由はたくさんあるが、その不安や不自由に必要以上にグラグラと揺さぶられていないか? 自分ではどうしようもない現実に右往左往して、自分のできることを行わなず、コロナを言い訳にしてその怠惰を観ようとしていないのではないか? この時期に読めて良かった。こんな今でもやるべきことをやり、やりたいことを追いかけて自分はきちんと生きていきたいのだと、再認識できた。 Posted by ブクログ ネヴィルシュートのレビューをもっと見る