日和聡子の作品一覧
「日和聡子」の「絵草紙 波風露草玉手箱」「校舎の静脈」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
面白かったです。
小川洋子さん選の短編集で気になった詩人の小説です。
こちらの方が、以前読んだお話よりも柔らかい印象ですが、でもどこか不安定で不穏なところが好きでした。
「湖畔情景」の人ではないものの世界も穏やかに受け入れられました。労りの一文が素敵だったので手帖に書き込みました。
「校舎の静脈」は、とある学校の生徒たちが主人公となる連作短編みたいなお話だったのですが、ずっとちりちりした不安がありました。給食運搬用のリフトに乗り込んだ英祥太がどうなったのかとか、生徒が群がってた窓から見下ろしたら何があったのか(直前に何かが激しくぶつかる音がしていた)…はっきり書かれていないのが想像を掻き立てます。
日和聡子さんの物語世界も、文章も好きです。
詩の方も読んでみたいです。
「やっぱり……、絶滅するのかな。いつか、あたしたちも。」
Posted by ブクログ
『その合間に、犬をちらちら見たり、そのまわりにいる人たちを視線の端に入れつつも、絶えず誰からも目を逸らすようにして歩いた。先ほど少しだけ降った雨にかすかに湿る地面をゆく足の運びに合わせて、じゃ、じゃ、じゃ、じゃ……、と音が鳴り、その音を立てる靴裏の感触が、ふくらはぎに伝わって、背中にはりつくようにして後ろからついてきた』ー『兎』
言葉の響かせる音は時に字義通りの意味とは別に何かに成りかけのものを連想させる。うっかりしていると頭の中はそんな中途半端な出来損ないの未成熟の言葉で埋め尽くされ息苦しくなる。詩人と呼ばれる人の頭の中はさぞやそんな風に次から次に浮かび上がる意味を掴みかけたもので埋め尽くされているのだろうなと常々想像しているのだが、人の頭の中など容易く覗き込む訳にもいかず中々得心することは叶わない。日和聡子はそんな滅多にない機会を与えてくれる稀有な文章を提示する。
言葉の意味を伝って文章を紡いで行くのではなく音の波が進んでいった先で跳ね返されることの繰り返しを考え過ぎずに重ねること。その跳ね返された音を再び言葉に置き直しまたその音の響いて行く先を追いかけて行く。意味を繋いでその足跡を辿ろうとすればたちまち迷路に入り込み、かと言って言葉遊びのように構えていると無意識の沼底から意識の水面に浮かび上がりそうになるものを掬い損ねる。まるで半眼の境地のような心持ちで日和聡子の心の動きと同期することに集中する。意識せず意識する。意識しつつ意識していることを忘れる。そんな読書の楽しさを味わう。
見えていることは本当に表層的なことばかり。意味は本当は定義を必要としない。意味は文脈の中にだけ存在し文脈は曖昧な音の重なりの作り出す共鳴に依存する。言いたいことを直裁に言おうとすれば意味は言葉の隙間からこぼれ落ち言いあぐねていること程伝搬する力を持つ。そんな理不尽さをものともせず、詩人は言葉を重ね一時の躊躇いや逡巡を無意味なものに変換し置き去りにする。その力強さに驚愕する。
日々自らが重ねる言葉の皮相さと風向きを意識した言葉尻の曖昧さを否が応でも思い返さずにはいられなくなる。日和聡子の言葉の強さを思う。