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ユーザーレビュー

  • LONESOME隼人 ローンサム・ハヤト

    Posted by ブクログ

     この本の腰巻(本に巻いてある帯様の紙のこと)には郷隼人歌文集とあります。ということはこの著者は「知る人ぞ知る」という人なんですね。だいたいこの郷隼人という名前ですけど、この名前はおわかりと思いますが、ペンネームのようなのです。名前から察して鹿児島出身の人のようです。なぜペンネームかといいますと、それには理由があります。腰巻にはさらに小さな字で「終身刑で米国の刑務所に20年間暮らす歌人の魂の叫び―」と記してあります。そう彼は殺人罪で終身刑を宣告されて収監中の身なんですね。
     郷隼人さんは独学で短歌を学び、アメリカの刑務所から朝日新聞紙上の「朝日歌壇」に投稿を続けています。一九九六年にはじめて入選したのですが、その後朝日歌壇の常連入選者となっていますし。複数の選者によって選ばれることも少なくない実力者なので、「知る人ぞ知る」歌人なのです。
     朝日歌壇というと連合赤軍の坂口弘が投稿し、やがて歌人として評価されていった舞台です。郷隼人もまた獄中から投稿することで知られるようになった歌人です。彼が坂口弘とちがうのは坂口のような政治的動機によって人を殺したというのではなく、一人の不幸な殺人者であり、異国の刑務所に囚われていることでしょう。
     はじめて入選した作品を紹介しましょう。

    囚人のひとり飛び降り自殺せし夜に「Free as a Bird」ビートルズは歌う

     空を飛ぶ鳥というのは自由の代名詞なのでしょう。自殺した囚人が最後に空を飛んだというのをなんと説明すればいいのでしょう。しかもその鳥は囚人たちを嘲笑うように刑務所内を遊び回っているのです。

    「脱獄を試みたらば撃つ!」という
              警告板にスズメら憩う

     ところで刑務所っていうのは社会の矛盾というのがしわ寄せになってくるところ、こんな短歌もありました。

    娑婆にては少数民族(マイノリティ)の黒人が
       大多数民族(マジョリティ)となるアメリカン刑務所(プリズン)

     社会的にはマイノリティである人々が刑務所ではマジョリティになるという、これはまさしく社会の矛盾構造のあらわれだし、差別の現実というのはこういうことをいうのではないでしょうか。本書の前半は歌集ですが、後半は郷さんの歌文集、つまり短歌の入ったエッセイになっています。その中に彼が出会った囚友のひとり、韓国人と米兵の混血であるタミーの話が出てくる。出会ったときはまだまだ立ち直るチャンスがあったタミー出会ったがしばらくして知った消息は二重終身刑となって服役しているという事実であった。その背景にある哀しさをどう表現したらいいのでしょうか。
     そんな中で、一人の人間としての尊厳はたとえ刑務所の中でも守らなければならないものだと郷さんは述懐します。
     
    真夜独り歌詠む時間に人間と
       しての尊厳(ディグニティ)戻る独房

     そして生きることの望みは出所後の人生設計である。郷さんのように出所という可能性もほとんどない人たちもいるであろうに、この歌もせつない。

    求人欄広げて終身囚たちは
              赤エンピツで夢追うている

     夢というのはそんなに大きなものではない。求人欄にあるささやかな人生ですら、刑務所の中の囚人たちにとっては夢なのでしょう。そして故郷、やはり望郷の歌が多いし、食べ物への切望がいくども登場してきます。

    記事に見る七草粥のぬくもりや
             遠き故郷の母を想いぬ

     そして今朝朝日新聞をひもとくと朝日歌壇に郷隼人の作品が載っていた(二〇〇四・七・十一付)。

    計画は短期滞在(ステイ)の筈だった在米三十周年記念日

     郷隼人は渡米して三十年たったというのです。最初はなにがしかの夢を持っての渡米だったにちがいありません。そして運命の波は彼を弄んだのです。



    ★★★★ 絶望につつまれた異空間からの望郷のメッセージ。人間の罪と尊厳とを詠う時空を超えた郷隼人の世界を一度体験してください。人間にとって夢とは何か、誇りとは何か、教師としての感性がなまったなと思ったらこの本を開いてください。国語科教材としてもいいかも。

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    2010年04月02日
  • LONESOME隼人 獄中からの手紙

    Posted by ブクログ

    「ホームレス歌人のいた冬」の中で出てきた郷隼人さんの本を読んでみた。

    郷隼人さんは若くして渡米し、殺人を犯してしまい、アメリカの刑務所にいる終身服役囚です。そして、日本の朝日新聞の短歌投稿(ものすごくレベルが高いことで有名だそう)で何度も入選している歌人でもある。

    この本は郷さんの2冊目の本で、1冊目は、アメリカの刑務所のわりといい面や良い人たちのことを書いたらしいんだけど(読んでないのですが)、こちらの本は、そうではない場面や人(^^; のことを書いたそう。

    ”信じられないだろうが、米国のプリズンではなんでもありだ。”

    (^^;
    私の生きてる世界とはまるで違う世界の話で、非常に興味深く読ませていただきました。

    服役中に郷さんのご両親は亡くなってしまったそうで、ご両親を思って詠んだ短歌は、心を打ちました。

    母さんに「直ぐ帰るから待ってて」と告げて渡米し三十六年経ちぬ

    獄に読む母の文子そ悲しけれ 父の介護に疲れ果てしと

    そのほかにも、獄中でこっそりどぶろくを醸造する話とか、禅ガーデンと呼ぶ素敵な花壇を作る話とか、猫の話とか。

    日本の過去の戦争の問題とか、差別の問題とかが、アメリカの獄中にもしっかりあるそう。

    この本は、2014年の本なので、もう7年前。ホームレス歌人の公田さんのときも思ったけど、いまどうしてらっしゃるんでしょうね。

    0
    2021年10月05日
  • LONESOME隼人 ローンサム・ハヤト

    Posted by ブクログ

    著者は「朝日歌壇」の短歌の常連投稿者。短詩の素養などまったくない私だが、氏の作品に初めて触れたとき、刑務所に囚われた心を歌った重い内容に心をゆさぶられた。「アメリカ」とカタカナで記された居住地もその紙面では珍しく、印象深く記憶に残った。しばしば掲載される歌を読み続けるうちに、殺人の罪で無期懲役の刑に服していること、鹿児島出身であること、故郷に老いた母がいることを知った。

    本書には獄中歌人の約500首の歌、10本のエッセイ(大阪朝日新聞に連載)、そして数点のスケッチ画が収められている。これを読んで、名前はペンネームであること、長く会っていない娘さんがいること、そして日本には彼の歌から慰めと勇気をもらっているファン(私もそのひとり)が多くいることを知った。氏の歌にふれて自死を思いとどまった若い娘さんもいるそうだ。短歌が郷氏を救い、郷氏の短歌が若い命を救った。短歌の大きく深い力に感謝したい。

    繋がれて気も狂わずに辿りつく
    満十八年服役記念日

    十年の歳月を経て初めての
    母の便りに胸がつまりぬ

    人間の生命奪いし吾が手なり
    その手が今は短歌(うた)綴りいる

    無念なり手塩にかけしグッピーを
    トイレに流さるる房内捜査(セルサーチ)にて

    空腹に寝付つけぬ夜半の獄の床
    親子丼の幻浮かびて

    春なれば我が身の内の血の騒ぎ
    つのる激しさ淫らなる想い

    今宵だけは一番上等の囚人服を
    身に付け聖夜の夕食(サパー)へ向いぬ

    直立し点検(カウント)を待つ我が脚に
    夕日と格子の影の美し

    冤罪であったならばともう一度
    夢より醒めてやり直したい

    かもめとぶけいむしょの空ひろびろと
    むげんのせかいがひろがりており

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    2011年11月15日
  • LONESOME隼人 獄中からの手紙

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    朝日歌壇で常連の郷隼人。
    この本を読むかぎり冷静で起用そうな(花壇を作ったりお寿司を握ったり)人がなぜ終身刑を言い渡される殺人、および殺人未遂の事件を起こしたのか…そこが語られないまま、
    望郷や母を思う短歌、刑務所暮らしの短歌が綴られている。

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    2014年05月28日
  • LONESOME隼人 ローンサム・ハヤト

    Posted by ブクログ

    実家の母からの「救援物資と一緒に送られてきたシリーズ」第3弾!
    ゆっくりと落ち着いて読めば心に残る詩が幾つか見つかることでしょう。

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    2009年10月04日

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