≪2020年8月号≫月刊 書店員すず木

≪2020年8月号≫月刊 書店員すず木
この道10年のプロ書店員・すず木です!
前月に配信された新作マンガで実際に読んで面白かったものの中から<少年・青年マンガ><少女・女性マンガ>それぞれ1作品を勝手に「今月の書店員すず木賞」としてご紹介!

※セーフサーチを中またはOFFにすると、すべての作品が表示されます。

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今月の書店員すず木賞

少年・青年マンガ

      • 少年のアビス 1

        少年のアビス 1

        何もない町、変わるはずもない日々の中で、高校生の黒瀬令児(くろせれいじ)は、“ただ”生きていた。家族、将来の夢、幼馴染。そのどれもが彼をこの町に縛り付けている。このまま“ただ”生きていく、そう思っていた。彼女に出会うまでは――。生きることに希望はあるのか。この先に光はあるのか。“今”を映し出す...

        あなたは自分の人生を自分のものとして生きていますか?

        田舎の閉鎖的な町で暮らす少年・黒瀬令児。
        彼は、家族に縛られ町から出ることを許されません…。
        一体彼の人生は誰のものなのか。
        閉塞感やノスタルジーが漂う作品です。
        令児には認知症の祖母とそれを介護する母、引きこもりの兄がいます。
        母は現在の状況に疲れ果て自分が楽になるため、令児に大学進学ではなく地元に就職することを強います。
        しかも就職先は、令児をパシりとして使ってくる幼なじみの会社でした。

        令児の人生は令児のものであるはずなのに、家族や町に縛られ自分の人生を生きることがままなりません。

        そんな時出会ったコンビニ店員の女性が、令児が好きなアイドルグループのメンバー・ナギであることに気付きます。
        舞い上がる令児ですが、ナギもワケアリのようで…。
        「この町からいなくなる人」だからと自分の置かれた状況を話す令児に対し、ナギは「心中しようか」と提案するのです。
        戸惑う令児となし崩し的に肉体関係をもつナギですが、なんと彼女には夫がいることが発覚します!!

        令児が住む町は「春の棺」という劇中小説に登場する情死ヶ淵伝説の舞台となった町。
        情死ヶ淵伝説とは、その小説の中で書かれている江戸時代に起きたとされる心中の話です。
        この物語は情死ヶ淵伝説をキーに物語が展開していきます。

        登場するのはそれぞれワケアリで深い闇を抱えている人たちばかりです。
        しかし描かれている地方特有の閉塞感や、しがらみに縛られた状況への諦め、自分の将来への絶望は物語の中だけではなく、現実に生きる我々にも身近なことではないでしょうか。
        それらを『ヒメゴトー十九歳の制服ー』の作者である峰浪りょう先生が圧倒的な描写力で描くため、読んでいるこちらも息が詰まるような閉塞感を感じるのです。

        終盤、狭い世界で生きる令児に対しナギは
        「全部捨てて町を出ていけば?」
        という言葉をかけます。
        そこではじめて令児は逃げても良いということに気付くのですが…。

        明るい展開は今のところ見えませんが、彼らに今後救いは訪れるのか、複雑に絡み合った人間関係が「心中」というテーマからどう進んでいくのか…。
        ハッピーな物語に飽きた方、是非この閉塞感に浸ってみてはいかがでしょうか。

少女・女性マンガ

      • 女の園の星(1)【電子限定特典付】

        女の園の星(1)【電子限定特典付】

        【電子限定!描き下ろし特典ペーパー収録】 「声を出して笑った」の声、続出!!! 漫画賞総ナメ『夢中さ、きみに。』の和山やま初連載! ある女子校、2年4組担任・星先生。生徒たちが学級日誌で繰り広げる絵しりとりに翻弄され、教室で犬のお世話をし、漫画家志望の生徒にアドバイス。時には同僚と飲みに行く…...

        読めば読むほど中毒になる可能性があるので、お気をつけください!

        この物語は淡々と進んでいきます。
        山場がある訳でもありません。
        どこが面白いの?と聞かれると困ってしまうかもしれません。
        でも、ただひとつ確実に言えることは、とにかく面白いのです!!
        主人公は女子高で2年4組担任をしている星先生。
        彼を中心に日常の些末なできごとを丁寧に描いていきます。

        星先生は天然でどこかとぼけており、彼のモノローグ(心の声)に思わず笑ってしまいます。

        最初は星先生のことを冷めている人なのかな?と思ったのですが、酔うとネガティブになってしまったり、生徒の描いた突拍子もないマンガに対し真剣にアドバイスをしたり…。
        どことなく掴みどころがないのですが、読み進めていくと次第に彼の人間性が解ってきます。
        少しずつ剥けてくる彼の人間性の根底には何が残るのか…!?
        気になります!!

        こちらは『夢中さ、きみに。』の和山やま先生の初連載作品です。
        絵柄は最近の女性マンガのトレンドとは異なり、ち密な線で独特な世界を確立しています。
        またクラスで飼っている犬の事を「クラス犬」と呼んだり、星先生の以前のあだ名が「無印良品」だったりと、出てくる言葉のチョイスも風変りです。

        独特のテンポで進んでいく物語が、なんとなくですが『動物のお医者さん』を彷彿とさせます。
        (佐々木倫子先生がお好きな方は是非読んでいただきたいです。)

        どのページもニヤニヤが止まりません。
        シュールな世界が癖になること間違いなしです!!

こちらもオススメ!!

惜しくも今月の書店員すず木賞からは漏れたものの、オススメの作品をご紹介!!

書店員すず木

2005年より電子書籍サイトの仕事に携わる、この道10年以上のプロ書店員。
年間に読むマンガの冊数は2000冊以上。
「面白いマンガを多くの人に読んで欲しい」をモットーに、オススメのマンガをご紹介します。

最近の書店員すず木:先日テレビの撮影をしました!そのために一気に減量したのですが、今は元に戻りつつあります…

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