田中康二作品一覧

  • 真淵と宣長 「松坂の一夜」の史実と真実
    -
    戦前の『尋常小学国語読本』に採録されていた「松坂の一夜」は、真淵と宣長、二人の国学の巨人の劇的な出会いを描き、国民誰もが知る物語だった。 真淵に私淑していた宣長は、真淵が関西方面に旅をしていることを知って、松坂で宿願の対面を遂げた。 以後、江戸の真淵と松坂の宣長は頻繁に書簡の遣り取りを続け、真淵の薫陶を受けた宣長は、やがて『古事記伝』を著し、国学の大成者として敬仰される存在となる……。 この「松坂の一夜」は、理想的な師弟関係を物語る「史実」として流布したが、果たしてどこまで「真実」を伝えるものだったのか。 本書前半では佐佐木信綱らによって「美しい物語」が作り上げられる過程を明らかにする。 実際、真淵と宣長の交流は、つねに決裂一歩手前の危うさを孕んでいたのである。 後半では、二人の周囲にいた人物の経歴をたどり、二人の出会いに関する様々な「解釈」を取り上げる。 そこでは平田篤胤の宣長への「夢中入門」の逸話は、「松坂の一夜」を焼き直したものであったことも明らかにされる。 近世国学の白熱の一局面をあますところなく描き出した力作である。
  • 本居宣長 文学と思想の巨人
    4.2
    漢意を排斥して大和魂を追究し、「物のあはれを知る」説を唱えたことで知られる、江戸中期の国学者・本居宣長。伊勢松坂に生まれ、京都で医学を修めた後、賀茂真淵と運命的な出会いを果たす。以来、学問研究に身を捧げ、三十有余年の歳月を費やし『古事記伝』を著した。この国学の大成者とは何者だったのか。七十年におよぶ生涯を丹念にたどりつつ、文学と思想の両分野に屹立する宣長学の全体像を描き出す。

最近チェックした作品からのおすすめ