DVの免罪符になりかねない。
「妻のトリセツ」のような本がうれている。
それだけ妻から夫への精神的DVが家庭で蔓延し、苦しんでいる夫が多いからでしょう。
しかしながら、DV・モラハラはまずは加害者の責任であり、加害者こそ自己制御を学ぶべきなのは当然。
それなのに、妻から夫へのモラハラにおいて加害者の妻ではなく被害者の夫に努力や我慢を要求する理不尽さが本書にはあります。
日本の家庭で妻から夫への精神的DVが横行する理由は、「脳の性差」よりも「社会的風潮」。「妻から夫への暴力・モラハラを大目に見てしまう風潮が蔓延しているから」に尽きると思います。
夫が妻におこなったら確実にDV・モラハラと言われるような言動でも、妻が夫に行う分には「しりに敷かれてる」「鬼嫁w」と軽い言葉ですまされてしまう。そんな理不尽な体験は身近でないでしょうか。
「妻のトリセツ」にも『脳科学的に「いい夫」とは、ときに妻の雷に打たれてくれる夫』という表現があり、ある程度は夫は妻から精神的DVされても仕方ないという思想がみてとれますが、これが男女逆で「いい妻とは、ときに夫の雷に打たれてくれる妻」と言えば女性差別とみなされ厳しく批判されるでしょう。
「いい妻とは、ときに夫のDVに耐えてくれる妻」という考え方が社会に受け入れられなくなっているのに、
「いい夫とは、ときに妻のDVに耐えてくれる夫」という思想に貫かれた本書が社会に受け入れられてしまうこと自体、いかに妻から夫へのDVに甘い意識が日本社会に浸透してしまっているか、よくわかると思います。
「男性から女性への暴力・ハラスメントは許さないが、女性から男性への暴力・ハラスメントは甘くみてよい」という意識こそが家庭における妻から夫への暴力に歯止めがかからない状況を生み出している。
そういった社会的要因を無視して、「妻が夫にモラハラするのは女性脳が原因」などと主張する本書は、
むしろ女性から男性へのDVに「女性脳だから仕方ない」という「脳科学的」免罪符を与えてしまい、妻から夫へのDVが許されてしまう悪しき風潮に拍車をかけてしまう悪書です。
家庭内で妻からのDVに苦しむお父さんたちを救うためには、
「DVは男→女であっても女→男であっても等しく醜く罪深い」という当たり前の意識を浸透させるべきだと思います。