【感想・ネタバレ】エリザベスの友達(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剥いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった――時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。(解説・岸本佐知子)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

介護施設に入所できた場合、認知症患者自身は、外から見るよりも幸せに生きているのかもしれないと思った。見たい光景を見ているなら、良い事なのかもしれない。やりたいようにやらせてあげる、その余裕が家族にあるかは考えるだけで苦しい。
初音さんのように夢心地でなく現実を生きている満州美さんのことが気になった。読んでいる限り内面はいたって穏やかに見える満州美さんだが、若くして後遺症を持つ身体になった苦しみが顔に表れているという。そして妹には心配かけまいとしている姉の心が涙ぐましい。
陽気とされる千里も、そんな性格なら結婚して子どもの1人や2人いそうなものだがそうではないところに、作中には書かれていない千里の思いがあるのかなと想像させる。一言では表せない人生という厚みを感じるのだ。
病気によってある日突然自由が効かなくなるというのは誰にでも起こりうる。そんな時どうやって生きていくか。生き方も死に方も正解がない上に、思い通りにならない事もある。そんないくつもある不安を、ありのままに受け入れるような本だった。
戦争経験者の記憶も死と共に葬られていくのが恐ろしく思った。

0
2022年10月18日

「小説」ランキング