あらすじ
嫌われ者の「ヤマビル」の研究に
愛をもって取り組む子どもたちが常識に挑む物語。
「好奇心が未知の扉を開ける衝撃が満載だ」
山極壽一先生激賞!
各地で増え続けているヤマビル。
山だけでなく里でも被害が増えています。
知らない間に血を吸う嫌われ者のヤマビル。
そんなヤマビルの生態研究に挑む小中学生がいます!
その名も子どもヤマビル研究会。
彼らは、山でヤマビルの数を数え、
ときに自らの血を吸わせて育て、そして、解剖までするのです。
そんな彼らが解き明かしてきたヤマビルの生態の数々を紹介します。
そして、「ヤマビルはとてもかわいいいきものです」とまで言い切る、
いききとした子どもたちの感受性に驚嘆する1冊です。
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Posted by ブクログ
大きいヒルと小さいヒルと。ヒルはいかん。落ちてこない検証実験がすごい。ヒル忌避剤効くのね。秦野駅ヒルスポットは思わず検索してしまったことであるよ。仮説と検証をとてもとてもまじめにやってて、すごい。
Posted by ブクログ
10年間ヤマビルを子どもたちと研究してきた人のまとめた本。
ちょうど高野聖を読んだ頃にこの本の存在を知ったので読まないわけにはいかなかった。
自分もヒルは木から落ちてくるんだなと思ってたし。
ヒル自体、自分は見たこと無いけど、この本を読むといるところにはマジでうじゃうじゃいるんだな、と知った。
「ヒルは足元から上がってきて、血を吸われても痛みもなくて30分くらいついてることもあるから、首の血を座れてるということはこれは上から落ちてきたに違いない、と勘違いしてしまうことがある」、と。
また、「ヒルがいるような森の中では木も多く、ミノムシや木の実、枯れ葉が上から降ってきてそれをヒルと思ってしまうこともありそう」、と。
なるほどー。
「そもそも木の上から落ちてくるということは木に登らなきゃいけないわけだが、木についているヒルを見たことはなく、地面には山程ヒルがいる場所の木の下で3時間待っていても落ちてこない。ハレノヒも、雨の日も。」
「しかもヒルは乾燥に弱く、いつもは草や枯れ葉の間にいるから、木の上という乾燥しそうな所にいるとすぐ死んでしまうだろう。」
などなど、言われると確かに〜、となりっぱなしのことを子どもたちが次々と思いつき、そして先生のサポートもあって次々と証明していく。
まるで爽快な推理小説のよう。
他にも、そもそもヒルが人に寄ってくるのはどういう仕組みなのかということで、捕まえたヒルに向かって息をかけてみたり、色んな温度のものを用意してどれに寄ってくるか確かめたり。あとは塩に弱いということで何%の食塩水まで耐えられるのか。果てはカッターやメスで解剖していくという、ありとあらゆる研究をしていく。
これは子どもたち、楽しいだろうなー。
理科の実験では答えありきのことを確認していくだけだが、ヒルの研究では答えがないので、気になることをとにかく確認していく、それを先生が全力で応援してくれるという、それは子どもたちもやる気が上がる。子どもたちの好奇心とひらめきの強さ、そして教育についても色々と学びになる本だった。
Posted by ブクログ
小学生・中学生のこどもたちがヤマビルを研究する。大人はコーディネートするだけで、研究を引っ張ったり指示したりはしない。道具を用立てたりと環境を整えてやるだけ。
表題にもある通り、ヤマビルが人間が来るのを察知して、その人間を狙い澄まして木の上から落ちてくるという例はほぼない。それを己の体を使った実験で実証する。
そもそも木の上に登るヒルを見ることがないらしく、また木の上に登ったとしても、常時風があたり乾燥しやすい木の上でヒルが待機するメリットもなさそうだ。
これらを発表したとき、しつこく彼らヤマビル研究会を否定する高年齢男性の記述も1つのクライマックス。いわゆる俗説・通説から抜け出せない典型例として悲しく描かれている。この男性も、この発表が子どもたちの手によるモノではなくどこかの大学教授とかだったらまた全然違う態度になるのだろう。あわれみを感じるとともに、他山の石とすべき、と痛感する。
ヒルの広がりについての要因、いわゆる俗説では鹿である。鹿にとりついたヒルが遠隔地で落ちてその場で広がる。
このことについても研究会は考えている。彼らの研究・考察では、水の流れによるものが大きいのではないかということ。ヒルが繁殖しやすい場所(ヒルスポット)にいるヒルが、獣道・山道などを流れる雨の水流で移動すること大きいと。
しかし、一方でヒルの血液から鹿のDNAも見つかっている(カエルも吸血対象らしい)。そこで宅配便で例えると、拠点から拠点への物流は鹿などの長距離移動可能な生物に便乗して、拠点から各住宅などのラストワンマイルは水流が要因などでは、ととりあえず落としどころを見つける。
彼らはヒルを解剖してその体内の構造にもアプローチしている。吸われた血液の流れや心臓の有無などとどまることを知らない。
自発的な探究心から仮説を立て、それを自ら検証する、という行為を繰り返している彼ら。コーディネートする大人達も主役は子どもたちだとして、インタビューや発表を子どもたちに全て任せている。これは子どもたちの自発や自立につながる。自分たちで思考して決断する。このような機会が得られることは尊い。子どもたちの一人はインタビューでいう。
「学校の実験は、結果が決まっていることをただなぞるだけだが、ヤマビル研究会は違う」