あらすじ
食べてるあなたも共犯者!決死の潜入ルポ。
アワビ、ウナギ、ウニ、サケ、ナマコ……・「高級魚(サカナ)を食べると暴力団(ヤクザ)が儲かる」という食品業界最大のタブーを暴く。
築地市場から密漁団まで5年に及ぶ潜入ルポは刊行時、大きな反響を呼んだが、このたび文庫化にあたって「サカナとヤクザ」の歴史と現状を追加取材。新章「“魚河岸の守護神”佃政の数奇な人生」「密漁社会のマラドーナは生きていた」を書き下ろした。
推薦文は『闇金ウシジマくん』『九条の大罪』の漫画家・真鍋昌平氏、文庫解説は『モテキ』『バクマン』の映画監督・大根仁氏。
本作はノンフィクションのジャンルを超え、日本のエンタメ最前線を走る人たちから絶賛されている。
真鍋昌平(漫画家)
「人の欲望は止まらない。
ルールがあれば反則勝ちした
犯罪者がぼろ儲け。
知らないうちに自分自身が
密漁者の共犯者。
高級寿司の時価の舞台裏を
犯罪集団に
笑顔に拳は当たらない処世術で
5年間も潜入取材して
伝えてくれた勇気に泣けてくる」
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「ようこそ、21世紀の日本に残る最後の秘境へーーー」
この書き出しにとにかく引き込まれてしまった。
読んだきっかけは、暴力団ってなんで悪いことしてるのは明らかなのに捕まらないの?という子供のような疑問から。
密漁はその理由が明確だった。
現行犯(人)、潜水機、獲物、これら3点が同時に存在してないと証拠とはならず、検挙できないためだ。
また、一昔前までは捕まったところで3年以下の懲役、または300万円以下の罰金にしかならなかった。無期懲役もある覚せい剤に比べれば極めて安全なシノギだったらしい。(現在は3,000万円以下の罰金で、これは個人に科せられる最高の罰金額)
彼らはなぜ密漁をしたのか?
それはリスクに対してリターンが大きいからだ。我々一般の感覚からすれば逮捕されるなら悪いことはすべきでないと考えるが、彼らにとっては捕まるとしてもそれ以上に稼げるのであれば取り組む価値があるということである。言い換えれば、懲役をくらえば(または罰金を払えば)密漁はやってもいいという考えだ。
自分は東京生まれであまり港に縁がない。
しかし普段食べている海産物ももしかしたら密漁品かもしれない、と考えると世界を見る目が少し変わってくる。
間違いなく私に新たな視点を与えてくれた本である。
Posted by ブクログ
密漁中に警察が踏み込んできそうになったとき、ツレに放尿させてその隙に逃げたっていう体験談が書いてあってめちゃくちゃウケた 前に読んだマンガにも職質中におしっこ漏らしたら解放されるっていう話があったけど、職質シッコって反社の世界では有名なライフハックなん?
Posted by ブクログ
これぞ実社会という感じで、面白すぎる内容の本。漁業のヤクザな世界を知ることができます。魚好きの日本人は必読でしょう。でも、この本をそれでも魚を食べるのか?と問われても、美味しい魚を食べることをやめる日本人はほぼいないでしょう。それだけ日本人の生活から魚は切っても切り離せない、魚とヤクザも切っても切り離せない、ということは日本人とヤクザは……
なぜかかなり前から気になっていた本で、最近漁業にふれる機会が増えてきたので、勉強のためようやく購読したのでした。解説も含めて楽しかったです。
特に元道民として、根室に関する項目はなるほどという感じでした。確かに自分が行ってたお寿司屋さんも、「昔のカニは全部密漁」って言ってた意味がよくわかりました(笑) いつか根室に訪れたい。そのタイミングではまた本書を読み直さなければ。
Posted by ブクログ
土用の丑の日が近づいてきているので、鰻はどんな闇ルートで流通してるのか気になり読んだ。
鰻は約5割が裏ルートで流通していると聞く。
これは裏ルートを使わないと必要な量の鰻が手に入らないからだ。
必要悪なのだろう。
鰻は天然で取らず、養殖すればいいのではないか?という声も上がるそうだが、鰻は完全養殖はできず、シラスは養殖のために必要となるから、現状では無理だそうだ。
したがって、シラスを手に入れるためには裏ルートが必要となるのだ。
この本は鰻に関する闇だけではなく、生態についても説明してくれるのが良い。
鰻の生態は人を魅了するものがある。
生物学的な魅力も教えてくれるのが、この本の良いところだと思う。
ウナギやサケは生態が謎の部分も多いため、完全に家畜化するのが難しいのだろう。
それゆえにヤクザが関与しなければ、水産業界は回らないのかもしれない。
完全に家畜化できた時に、この闇は消えるのだろうか。
Posted by ブクログ
中野の立ち食い鮨屋さんが好きなんだけど、この本読んで、あれだけ美味しくて安いのって、やっぱなんだかなぁと反省した。それでもまた食べに行っちゃうんだけどね。
Posted by ブクログ
鰻はなぁ、美味いけどあんまり食べたらアカンような話も聞くしなぁ、けど美味いねんなぁ、悩ましいなぁ、と思いながら購入。
一話ずつはちょっと短くてもの足らん気もするけど、一冊で読むといろいろ考えさせられるような、でも鰻美味いのよなぁ…
Posted by ブクログ
ずっと気になっていた本が文庫になったというので購入。解説の大根仁の言葉通り、わたしたちは食べるにしても、着るにしてもなんにしても完璧にクリーンではいられないと思う。だからといって、許されるわけではないけれども。
Posted by ブクログ
自分達の食卓にあがる魚類達。その出身を辿ると、とんでもない闇に辿り着くのかもしれない。いや、するだろう。本書の中でカニ漁の危険度には衝撃を受けた。これは日ソの闇戦争だなと。
Posted by ブクログ
読みやすく面白かった。知らないことが多く、思った以上にサカナとヤクザは繫がって驚いたが、漁業の性質が親和性が高いと書いてあり納得。
密猟で成り上がった人達が「東洋のアル・カポネ」「密猟社会のマラドーナ」「北海の大統領」と呼び名があるのが笑った。
Posted by ブクログ
この本を読むと、スーパーで魚を買ったり寿司を食べたりすると、これも非正規ルートなのかな?と思ってしまう。ウナギとかウニとか、高いのは間に黒い組織が確実に入っていそう。漁業権とか法の不整備、北方領土問題など、社会の仕組みがうまくいってないところには反社会的勢力の入り込む隙間があるんだろう。著者の姿勢や取材方法からジャーナリズムを強く感じることができた。
Posted by ブクログ
鈴木智彦『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』小学館文庫。
日本の食文化の背後にある大いなる闇に迫ったノンフィクション。先に読んだ『ヤクザと原発』よりなかなか面白い始まりだったが、尻すぼみに終わる。始めは体当り取材が主体だったが、次第に伝聞や過去の歴史が中心となるのだ。
文庫化にあたり「サカナとヤクザ」の歴史と現状を追加取材し、『“魚河岸の守護神”佃政の数奇な運勢』『密漁社会のマラドーナは生きていた』を書き下ろし収録。
水揚げされるアワビの約半分が密漁という驚きから始まる。アワビの他にウニ、サケ、ナマコ、シラスウナギなと高級魚が密漁の対象となり、100億円規模という暴力団の巨大な資金源となっているというのだ。しかも、地元の漁師などと手を組み、様々な工作を行い、かなり組織化されているのだという。
確かに三陸でアワビの密漁団逮捕というニュースはたまに目にするし、三陸沿岸には密漁監視の小屋や施設がある。夜中になると沿岸をサーチライトが照らし、他県から来たワゴン車のチェックなどもあったりするのだ。
著者は密漁の実態を調査するために築地市場にアルバイトとして潜入し、さらには密漁団に密着する。また、今や密漁にも国際化の波が押し寄せているようだ。
本体価格890円
★★★★
Posted by ブクログ
密漁の3パターン
・漁師が漁獲制限を超えるかもしくは許可されていない海産物を捕獲するケース
・漁業権をもたない非漁業者が漁に出るケース
・海水浴客などが知らずに定着性の海産物をとるケース
自分の中での密漁は、漁師や非漁業者が真夜中に
漁を行っているイメージだったが、
正規の漁師が1つめのパターンで上限を超えて取ることもあるらしく、さらに黙認されていることもあるようなので意外性を感じた。
また、普段市場で並んでいるものは漁師がとったものと信じてやまなかったが、ヨコモノも流れてきており、ヨコモノと分かっていながら仕入れている現状があるということに驚きを隠せなかった。
Posted by ブクログ
ルポ好きの人なら楽しめると思う。特に前半は良い。後半はサカナとヤクザというより、密猟の歴史=結果的に不正(ヤクザ)が横行している、というような内容が多いと感じた。市場をヤクザが取り仕切っている、密猟がヤクザの資金源になっているといった点についてフォーカスが当たり続ければなお私の好みになったと思う。
Posted by ブクログ
日本は魚介類の宝庫で、寿司や刺身など海産物の恩恵を多分に受けている。そして、我々が口にする魚介類は当たり前のように日本の漁師が釣ってきたものか、海外からの輸入と思っている。
しかし、この本が明らかにするように、ウニやアワビ、ナマコなどは密漁によるものも数多く流通しており、我々の口にも入っている。また、肉や野菜と比べ物にならないほど、産地偽装も横行している。
昔から漁師は腕っ節が強く、護岸警備の観点からもヤクザとの関係が深く、今でも豊洲市場の関係者にはその辺りが曖昧になっている人も多いが、そうしたことも密漁ビジネスにヤクザが関わっている理由の一つかもしれない。
山で山菜を取るのは自由なのに、なぜ海で海産物を取ってはいけないのか、またなぜ北方四島の周りで漁をしてはいけないのか、こうした難しい問題も残る。
とはいえ、我々が口にするものがどこから来ているのか、どんな問題があるのか、知っておくことは必要ではないか。
Posted by ブクログ
本書は、ヤクザ専門誌の元編集長(えっ⁉︎)鈴木智彦さんの体当たり潜入ルポです。5年もの身を削る取材を通して、組織的な密漁、ヤクザの介在をあぶり出していきます。
何と言っても、著者の現場主義的な執念に頭が下がる思いです。
三陸アワビ密漁団と海上保安庁の攻防、流通ルートを探る築地4カ月潜入労働、北海道の中国発「ナマコバブル」、銚子のヤクザのドン、北方領土問題とカニ、ウナギの国際密輸等々、余りにも広範囲で、その深く暗い闇に衝撃を受けます。
私たち消費者側も、理解と意識改革など、できることから始める必要がありそうです。飽食、〝映え〟を求めるインスタ、グルメを煽るマスコミと飛びつく私たち…。学生だけでなく、SDGsを学び、自分事として考え、実践していかなければ…と、深く考えさせられました。
美味しい・旨いと言える海産物が持続的に食べられますように…。
Posted by ブクログ
文庫王国から。溝口さんの著作といい、類の及ばないところで眺めている分には、ヤクザものは興味深い。必要悪とは全く思わんし、絶対否認派だけど。広大な海の問題だけに、取り締まりも困難を極めるのは想像に難くないけど、それにしてもこの無法地帯ぶりには驚きますね。そして、現実問題としてどうしても目を引かれるのが、根室と北方領土、というかかの国との関係。本筋とは離れるんだけど、戦争反対。
Posted by ブクログ
漁協が相当ブラックなものだとは何となく知っていたが、なるほど、漁業、密漁、ヤクザ。これらが濃い関係性を持っているのが、改めて分かった。言われてみれば納得で、信憑性は高い。しかしちょっと話があちこち飛ぶ傾向にあり、読みにくいと感じた。
Posted by ブクログ
長崎の島原を営業職で回っていた時の話。とある化粧品店の店主から「普賢岳がもう一度噴火すればいい」と耳を疑うような発言を聴いた。なんでも、普賢岳が噴火した際、多くの土木業者が復旧工事の為に年単位で停泊した。娯楽の少ない田舎町では、稼いだ金は酒と女に消え、めぐりめぐって化粧品が飛ぶように売れたという。労働者が集まる街には闇が巣食う。漁業に限らず、炭鉱や港湾の工業都市だって同じようなもんだよな。隆盛を誇った時代は追憶の彼方に…
もうひとつ思い出したのは、SFC版ソフト桃鉄HAPPYでは釧路と稚内の物件「カニ漁船団」を買うと、収益率がその場では確定せずに???%の表記になる。毎年3月の決算時に-30%から80%までのレンジでランダムに収益率が確定する仕様だったが、これまさかさくまあきら氏はここまで知っててあえてそうしたのかな…とか訝しんでしまう。当時は1995年前後。それにしても密漁者で栄えた街、根室とまで言われると日本大好き人間からすると悲しいものがあるな。
これ今後サンマとかどうなるんだろう。水温の影響からか2021年の店頭想定価格は一尾200円になるとかバイヤー言ってたけど、早くからそこに目をつけてルート張れるヤクザはいるのだろうか。何はともあれ知っちゃいけないことを知りたいアングラ大好きな人間の弱いところをゴソゴソくすぐってくれる本です。読んでよかった。