あらすじ
空が近い。雲も近い。
当たり前に自分を満たしていた日常が、何もかも遠い。
――登山の最中に受けた、恩人からの無言電話。その後、知らされた恩人の滑落死。
高校時代にスポーツクライミング部で名を馳せた主人公・岳。訳あって大学では競技を続けないと心に決めていたが。変人と噂される登山部部長の梓川穂高につかまり、幾度か一緒に山を登ったある日、岳のスマホを高校時代のコーチ宝田謙介からの着信があったのだが――
全国の書店員が絶賛!
青春小説の妙手、額賀澪がおくる山岳ミステリ!
新直子・装画
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
スポーツ青春ものかと思いきや、アスリートの引退後のセカンドキャリアの難しさや、山岳小説、ミステリなどなど、色々な試みが詰め込まれていて楽しく読んだ。
Posted by ブクログ
高校時代にスポーツクライミング部で活躍し、インターハイ出場経験もある筑波岳。
進学した慶安大学でもクライミング部に勧誘されるが、岳は勧誘を断り続けていた。
そんなある日、ひょんなことから変わり者の三年生・梓川穂高に「同じ名前だから」と筑波山への登山に誘われ、初めての登山を経験し、登山部に入ることに。
登山の楽しみを知り始めた岳に、高校時代のコーチ・宝田からの着信があったが、聞こえてきたのは風の音だけだった。
そしてその翌日、宝田が宝剣岳への登山中、岳への電話の直後に滑落死したと知らされ…
“額賀澪がおくる山岳ミステリ”と帯にあったが、ミステリ色よりも、山の頂の、冷たく爽やかな風に洗われる感覚が素晴らしかった。
心無い言葉で宝田を傷つけ、自らも傷ついていた岳にも、飄々としているように見える穂高にも、洗い落とせない痛みと、答えのない問いがあった。
ただ、日常から遠く切り離された山の上でだけは、心の奥をさらけ出すことができる。
それをさせる山と、そこに吹く風が、また次の山へと駆り立てるのだろう。
蒸し暑い下界にいながら、爽やかな気分になれる。
とことん運動音痴な私でも、山に登ってみたくなる。
夏休みの楽しみに取っておいて良かった。
気分爽快です。
Posted by ブクログ
高校時代、スポーツクライミング部でそこそこの成績を出していた岳だったが、大学では競技を続けないと決めていた。だが、ひょんな事から変人と噂されていた登山部部長の穂高に誘われて、登山をするハメになった。そんな中、高校の部活コーチから登山中に無言電話が掛かってきて…
コーチは事故なのか、自殺なのか。
岳にとって、コーチの宝田は良くも悪くも人生に影を落とした恩師。その死の真相を探るべく登山し続けていると、今まで見えなかった物が見えてきて、とても切なかったです。
穂高も岳も心に闇を抱えいて、心の何処かで許しを欲しているけれど、他人からすれば責められる事ではなくて。それを二人で登り続けていけば、いずれ心の枷もなくなる気がしました。