あらすじ
著者カーンは元・米国CDC(疾病対策センター)の実地疫学専門家(EIS)、渾名は「疾病捜査官(disease detective)」。その任務は世界各地で発生したアウトブレイクの究明と制圧のための調査や協力だ。これは、サル痘からエボラ出血熱、炭疽菌テロからSARSまで、さまざまな病原体や感染症の封じ込めの現場を振り返る事件簿である。種々のアウトブレイクはそれぞれどのように勃発し、感染はいかにして拡がったのか。新たな病原体の特性はどこから見出され、対処されたのか。もしアウトブレイクが、テロ攻撃だった場合には? 生物学、医療、行政、地域文化までが絡み合うパズルを、疾病捜査官たちは時間との闘いのなかで解きほぐしていく。COVID-19発生以前にも数多くの危機があったが、各種のエキスパートたちの奮闘によって比較的局所で封じ込められてきた。パンデミックはつねに紙一重のところにあったのであり、本書の記述がいかに予言的であるかにも愕然とさせられる(原書は2016年、The Next Pandemicという題で刊行された)。カーン博士の扱った事例はサスペンスフルな探偵物語のようでもありながら、公衆衛生について重要な教訓を示してくれる。次のアウトブレイクをパンデミックにしないために、現場のエキスパートの経験とその教訓に耳を傾けたい。
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Posted by ブクログ
感染症封じ込めのための仕事の現場を臨場感ある文章で楽しめる。
楽しめると書くと、不謹慎なような気もするが、感染症という常に身近に存在していても、自分が罹るまではなかなか意識することのない事柄について、認識を改める一助になった。
特に、エボラ出血熱やエイズに対して、漠然と恐ろしさを感じていたのに対して、身近なインフルエンザや、現状のコロナウイルスに対しては慣れのような感覚が自分に生まれていて、この本をきっかけに、過大な恐怖心と、薄まっていた危機感を正してもらえたような気がする。
また、定期的に起こるウイルスの変異によってパンデミックが引き起こされる可能性が常にあること、それを防ぐためにワクチン接種や、基本的な感染対策を実行し続けることが有効であることも理解できた。
基本であるからこそ怠りがちな手洗いうがい、マスクの使用について見直そう、と改めて思えたのは、すごく大きな気持ちの変化だった。