あらすじ
18歳の頃、カナは元恋人に刺されるも一命を取り留めた。29歳の今、仕事も夫と幼い息子との家庭も充実しているが、空虚な傷跡は残ったままだ。その頃、米国から姉一家が帰国しカナは甥の弘斗と再会。19歳になった彼に激しい愛情を寄せられ、一線を越えてしまう。カナに妄執する弘斗は危うげで、そしてある過去を隠していた――。二人を繋いでしまった、それぞれの罪と罰。喪失と再生の純愛小説。
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Posted by ブクログ
『軽 薄』
お久しぶりです♪ 金原ひとみ さん♡
この作品を読む前は…
タイトルが『軽薄』だもん
誠実さなんて皆無で ただただ軽い
ちょっぴり【ちゃらんぽらん】を添えた
そんな 主人公のお話かと思っていたの
裏表紙に書かれている「あらすじ」には
18歳の頃、カナは元恋人に刺されるも一命を取り留めた。29歳の今、仕事も夫と幼い息子との家庭も充実しているが、空虚な傷跡は残ったままだ。その頃、米国から姉一家が帰国しカナは甥の弘斗と再会。19歳になった彼に激しい愛情を寄せられ、一線を超えてしまう。カナに妄執する弘斗は危うげで、そしてある過去を隠していたーー。
二人を繋いでしまった、それぞれの罪と罰。
喪失と再生の純愛小説。
こう書かれていたんです
〈えっ、ちゃうやん…全然 ちゃうやん……〉
そうですよね♡
ちょっぴり安心?して読み始めました
金原さん 12番目の作品
甥と関係を持つカナ…
甥と不倫って
普通に考えられないでしょう?
だから この作品に嫌悪感を抱く人も
多いかもしれない
でも、繊細で流れるような金原さんの文章に
ドキドキさせられてしまう
甥との会話の中で…
旦那と息子を失っても、感情は動かないのか?という問いに
「それは、世界が変わるよ。泣き暮すと思う。もし俊を助けられるなら死んでもいいと思う。でも、二人が死んでも後を追おうとは思わないと思う。苦しみながら、私はまた日常に戻っていくと思う。でも弘斗だって、両親が同時に死んだとしても、後追いをしようとは思わないよね?」
「そうだね。カナさんが心中を持ちかけてきたら考えるだろうけど」
やめてよと苦笑すると、本気だよと弘斗も 笑った。
…という 場面があるのだけど
ゾクゾクしちゃったの
溜息しかでない
「喪失と再生の純愛小説」
本当…言い得て妙だわ♡♡
不思議なんだけど…
金原さんを読み続けていると
お腹いっぱい になって
「ちょっと お休みしようかしら♪」
に なるんだけど 休んだら休んだで
我慢できなくなるくらいに
読みたくなってしまう
そして "どっぷり"と余韻に浸るの♡
Posted by ブクログ
関係性はドロドロしていたが読み終わったらカナと弘斗の恋愛自体は綺麗だと思ったしカナがあまり芯がぶれない女性だったのが良かった。
恋愛はどの夫婦、カップル、不倫関係においてもその当事者にしか分からない世界やルールが存在するしそれを他者が理解しようとするのは無理があると改めて感じた。人の恋愛に口を出さない方がいい、分かるわけがない、そんなことをひしひしと感じさせられる本なのではないか。
Posted by ブクログ
「家事と育児だけをして息子の成長と今晩の夕飯だけを楽しみに生きていると、この日常は自分が死ぬまで続いていくのだと感じた。そしてそれは私にうっすらとした絶望と不能感をもたらした。でも同時に思う。仕事をする事で薄れてはいるけれど、着実にその絶望は継続してもいるのだ。」(誤字脱字ありそう)
123ページの全てがかなりわかりみ深いと思いました。
人生の虚無を感じている。自分も当たり前な世の中の歯車の1つになって、なんでもなく死んでいくんだなぁと。
そう思うなんてことを言うとあんまり理解して貰えないことが多いけど、同じ思いを言語化してくれる小説を読めて良かった。
仕事をしてることで何となく日々に焦りと緊迫感が出て、絶望が薄れるのいうのもよくわかる。
毎日イージーに生きることが幸せなのに幸せと思えない。毎日同じことの繰り返しでそれはもはや地獄なんじゃないかと思ってしまう。
っていうのは確かに愛に溺れていた後から感じるようになったから、恋愛とはこわいものだと思う。
そこから時間が経って冷静になれた部分もあるし幸せだと思える時間は増えた。
けどまだあのときみたいな感情を味わいたい、という気持ちは奥底にある気持ちもする。幸せか幸せじゃないかというとわからないけど。今だと体力が持たない気もする。だから今のそこそこの幸せで人生を終えてもいいかなと思う。
作品として最後にかけてハラハラとした気持ちにさせてくれるのは非常に面白かった。主人公が選んだ選択肢は今の私からすると選ばないものだったからあぁ小説の世界だなぁとも思ったけど、それでこそ物語だとも思った。子ども大好きお母さんが読んだらありえない!って発狂しちゃいそう。私も本当はそういうお母さんになりたいな。
Posted by ブクログ
なかなか読み終わることができず、2時に一気読みをした。以前の彼がしたことと、弘斗がしたことを許せてしまうほどカナは愛していたのかと思った。
Posted by ブクログ
愛とは何か。
人生に感じる違和感は何か。
この難しい問いに対して全精力を投下し書き上げた作品なのだろう。
ページをめくる手が止まってくれなかった。
血縁関係の恋愛は世界が定めた倫理に反する。
それを乗り越え止められないのが愛なのか……。
考えるきっかけを与えて貰った。いい出会いだった。
Posted by ブクログ
金原さんが学生の頃、受賞した頃から作品を読んでいて。
今風の言い方をすれば、かなりクセの強い作家さんだなーという印象を持って、その後に出される作品も、かなり人を選ぶ作品だよなーと思っていたけれど、「マザーズ」あたりから、彼女特有の世界観を大切にしながらも、より多くの人に受け入れられる作品が増えてきたんじゃないかと思う。読者である自分の変化もあるかもしれないけれど、金原さん自身が、結婚して子どもを持ったことが大きいんじゃないかな。
この作品は、文体もまどろっこしくなくて、読みやすくなったように感じたし、そのためか、生きるということに対する彼女なりの価値観が、理解できたかどうかは別として、ひしひしと伝わってきました。
作品の背景には、高校時代の同棲相手がずーっといて、解説ではそれを「毒」と表現してます。わたしは、解説の「毒」とはもう少し異なるものを「毒」と捉えていて。それを説明すると、以下のような感じになります。
この本のタイトルになっている軽薄さ、それが彼女の人間性であって、けれどそれがストーカーによって形成されたものなのか、生まれつきのものなのか、そこまで深くは言及されていません。
おそらく、ストーカー事件以前に、ストーカー気質の男性を愛してしまうという、彼女の中にある根深さが、本当の「毒」なのではないかと思います。
きっと誰もが持っているその毒を、どう処理していくのか。彼女はいったん、結婚という方法で解毒しようとしたけれど、結局それは封印にしかなっていなくて、封印はきっと、大切に取って置いてるのと変わらないのだろう。これからは、弘斗がきっと、解毒してくれるだろう。いや、中和かな?個人的には、心の穴を埋める(=この作品で言うと解毒)なんてことは不可能だと思っているので、彼女に巣食っていたその毒を少しでもなくしてあげること(=中和)が、現在の彼女の救いになる気がしました。
Posted by ブクログ
今まで読んだ金原ひとみさんの作品は、言葉のチョイスや会話が破天荒で振り切れてるイメージがあったけど、今作は雰囲気がちょっと違う。
甥との不倫なんて重いテーマだけど、恋愛小説というよりはカナの人生観もろもろの変化や気付きについてといった感じ。
単純に子供がほっとかれていて可哀想だったな。
Posted by ブクログ
この人はとにかく許されない恋愛もの
最後は無難に元サヤに戻るのかと思いきや、甥の方へ
彼女刺したりそれを示談にしたりパーティーで変なもの飲まされたり…
Posted by ブクログ
そうきて、そこを通って、最終的にそうなるの!?え!?というストーリー展開だった。もうちょっと現実的なサスペンス的な展開かと思ったら(浮気がばれて破滅する、みたいな)、純愛小説的な終末へ…。
10歳も年下の甥と不倫するという身もふたもない話。主人公の「カナ」も、甥っ子も、ちょっと強烈な過去を持つ。カナは「恋愛じゃない」と思いながらもなんとなく甥っ子に惹かれていく。終盤まで、過去を引きずっているカナが、甥と関係を持ちながら、自分について、相手について、夫について、人生について、ダラダラダラダラと思いに耽る…っていう展開でなんだかなぁ…と飽きてきたが、最後に冷たかったカナの心の奥底で何かが動く感じが、読んでいる方にもぐらぐらと伝わってくるようで、深かった。
それから、カナが「日本の社会は生きづらい」というようなことを思っている部分には、ふかーーーーーく共感した!
5年ぶりに仕事に復帰して、うまく仕事がこなせていない今の私の不安感は、イギリスから帰ってきて、日本社会に違和感を感じるカナの感じていることと似ていると思う。日本社会は、「今よりも良くしよう、もっと良くなろう、改善改善、カイゼン(製造業では世界共通語になっているらしいKAIZEN)」、といって努力し続けることを強いられる。努力していない人は無能とみなされる。
常に常に、努力しつづけて、毎日が充実していないとダメな感じがする。仕事でも評価されないし、人からもそう見られるし、なぜか自分でもそう思ってしまうカラクリにはめられてしまう。
ただ何となく、平穏に日々のことをこなして、平和だなぁ、幸せだなぁなんて思っていることが許されない雰囲気。
本当に、まさに。努力しても努力しても、決して「ここまでで良し」というゴールはない。また新たな課題を設定されるだけだ。
という、前半の部分もけっこう心に残りました…。