あらすじ
まともに思えることだけやればいい。
荻窪の本屋店主が考えた、よりよく働き、よく生きること。
効率、拡大、利便性……いまだ高速回転する世界に響く日常エッセイ。
荻窪に本屋を構えて5年。本を並べ、客の手に渡るまでを見届ける日々から見えること。
「いまわたしの手元には、『終わりと始まり』という一冊の詩集がある。どこかの書店でこの本が並んでいる姿を目にすると、わたしはそこに、その店の良心を感じずにはいられない」
「Titleに並んでいる本は声が小さく、ほかの本の存在をかき消すことはないが、近くによってみるとそれぞれ何ごとかつぶやいているようにも思える」
「『あの本の棚は光って見えるよね』。書店員同士であれば、そのような会話も自然と通じるものだ」……。
本を媒介とし、私たちがよりよい世界に向かうには、その可能性とは———。
●写真:齋藤陽道
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Posted by ブクログ
荻窪にある新刊書店『title』の店主が手記をまとめた一冊。この書店ではカフェが併設されており、ちょっとしたイベントブースもある。時折、作家や写真家やデザイナーがトークイベントや個展を開き、店主の辻山さんもそこに静かに携わる。雨が降る客数の少ない日、東日本大震災、新型コロナウイルス下での営業。目まぐるしく環境が変わっていく中で、様々な人との、些細な会話や考えが暖かに書かれている。
様々な出来事や著名人との会話を題材にしているが
要所要所に心に残る光る言葉があり、日頃ストレスを感じやすい自分のもやもやが解けていく気持ちになります。その中でも特に好きだった一文を抜粋。
『分かったと思う傲慢に身を任せてしまうより、無力に打ちひしがれながらでも自分の足で一歩踏み出したほうが良い。ほんとうの共感は、そこから築いていくしかない。』
筆者が東日本大震災後、記事を書くために東北の出版社の編集者と呑んだその足で、閖上(宮城県)の海岸沿いへ赴いた。今まで抱いていた被災地への共感を胸に記事を書こうとしていたが、なにもない光景に圧倒されて立ち尽くしているシーン。共感力とは一言では言うけれど、その共感とは満足のいくものか?自分の中の価値観にもう一度深く問われている気持ちになりました。