あらすじ
まともに思えることだけやればいい。
荻窪の本屋店主が考えた、よりよく働き、よく生きること。
効率、拡大、利便性……いまだ高速回転する世界に響く日常エッセイ。
荻窪に本屋を構えて5年。本を並べ、客の手に渡るまでを見届ける日々から見えること。
「いまわたしの手元には、『終わりと始まり』という一冊の詩集がある。どこかの書店でこの本が並んでいる姿を目にすると、わたしはそこに、その店の良心を感じずにはいられない」
「Titleに並んでいる本は声が小さく、ほかの本の存在をかき消すことはないが、近くによってみるとそれぞれ何ごとかつぶやいているようにも思える」
「『あの本の棚は光って見えるよね』。書店員同士であれば、そのような会話も自然と通じるものだ」……。
本を媒介とし、私たちがよりよい世界に向かうには、その可能性とは———。
●写真:齋藤陽道
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荻窪の新刊書店Title。昨年末に念願叶ってお邪魔した時に感じた印象は、ずっと居たい、毎日通いたいと思わせてくれる「新しい世界との出会いが生まれる場所」でした。
店主の辻山良雄さんが選書(フィルターを通)し、手がけた書棚には、確かに光が宿っていました。辻山さんの推したい気持ちが託された本たち…。それらの語りかける小さな声が聞こえてくるようです。
リブロ池袋本店の書籍マネージャーをしていた辻山さんが、2015年の閉店を機に、2016年に独立して本屋Titleをオープンさせます。
本書は、このTitleオープンから約5年間、幻冬舎plusの「本屋の時間」に連載したエッセイに、加筆修正・再構成したものとのことです。
それにしても、ずっと読んでいたい文章です。優しく静謐で、けれども芯があり、本屋の店主としての覚悟・矜持に裏打ちされた言葉が満ちあふれています。店のレジ位置から、社会や人を温かく見つめる辻山さんの眼差しが感じられます。読むほどに心落ち着き、胸に染み入るような文体は、多くの方におすすめしたいです。
ちょうど私が訪れた日、年末の冬にもかかわらず暖かな日差しが気持ちよく、店内イメージとともに妙に記憶に刷り込まれた感じです。
じっくり書棚を眺め2冊購入。何となく立ち去るのが惜しくて併設のカフェへ。八丁ブレンド(浅煎り)コーヒーとフレンチトースト(アイスのせ)をいただきました。美味しかったです。
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言葉が、柔らかく、繊細で、丁寧で、読み終えてしまうのが惜しくなる、素敵な文章の数々と出会える一冊でした。
本が大切に扱われている本屋さんだということが伝わってきました。個人で経営されている本屋さんに行ってみたくなりました。
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荻窪にある新刊書店『title』の店主が手記をまとめた一冊。この書店ではカフェが併設されており、ちょっとしたイベントブースもある。時折、作家や写真家やデザイナーがトークイベントや個展を開き、店主の辻山さんもそこに静かに携わる。雨が降る客数の少ない日、東日本大震災、新型コロナウイルス下での営業。目まぐるしく環境が変わっていく中で、様々な人との、些細な会話や考えが暖かに書かれている。
様々な出来事や著名人との会話を題材にしているが
要所要所に心に残る光る言葉があり、日頃ストレスを感じやすい自分のもやもやが解けていく気持ちになります。その中でも特に好きだった一文を抜粋。
『分かったと思う傲慢に身を任せてしまうより、無力に打ちひしがれながらでも自分の足で一歩踏み出したほうが良い。ほんとうの共感は、そこから築いていくしかない。』
筆者が東日本大震災後、記事を書くために東北の出版社の編集者と呑んだその足で、閖上(宮城県)の海岸沿いへ赴いた。今まで抱いていた被災地への共感を胸に記事を書こうとしていたが、なにもない光景に圧倒されて立ち尽くしているシーン。共感力とは一言では言うけれど、その共感とは満足のいくものか?自分の中の価値観にもう一度深く問われている気持ちになりました。
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Webでの連載時も時々読み、励まされたり慰められたりしていた。
こうして読んで気づくのは、辻山さんの日々の実践から言葉の重さだけでなく、逡巡しながら葛藤しながらそれでも店を開け続けるその姿そのものに強さが宿っているのだと言うこと。
同じ本を扱う人の息遣いを感じることは、何より安堵を得る。
そして、また前を見ようと思わせてくれる。
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短いエッセイ。本屋Titleの日々から連なるちょっとした思いや感情が静かに綴られている。
コロナ禍の、静かに歯を食いしばって本屋として日々を過ごす様子が印象的だった。
辻山さんの内向的な文体はけっこう好き。
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街にある大きな書店に足を運んだときに感じる、うっすらとした靄が言語化されていて、目から鱗でした。
ちいさな声に耳を傾けることのできる店主のいる本屋さんが近くにあったらしあわせだな、でもほしい本がたくさんあって困ってしまうだろうな。
Titleさんにもぜひ一度うかがってみたいです。
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ストーリー性がメインの小説ばかりではなく、たまにはまったりとエッセイもいい。肩肘張らずにリラックスして読めた。
本書は荻窪にある新刊書店「Title」の店主辻山さんのエッセイ。辻山さんは大手書店勤務ののち独立し、荻窪にお店を構えられた。
長く書店に携わってこられた方だけに、著者の書店に対する矜持が凄く感じられた。
「一冊ずつ手がかけられた書棚には光が宿る。それは本に託した、われわれ自身の小さな声だ。ただ本を売ることは誰にでもできるかもしれないが、書棚に光を宿すのは、思いの詰まった仕事にしかできないことかもしれない」
書店として在るべき理想の姿を、日々模索されている。本当に並々ならぬ思いで、仕事と向き合っているんだなって思った。
荻窪か。二十数年前、新宿に住んでて学生をやってた頃、電車で毎日通過してたな。当時こんな素敵な書店があったなら何度も寄り道しただろうに、と懐かしさと共に少しもどかしい気持ちになった。
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行ってみたい本屋さんの店主が書き綴った思った言葉たち。そう思うんだと感じたり、そうだよなと思ったり。文章と言葉の選び方が落ち着いていて、Titleというお店らしさが伝わってくる。近くにあったら通っていたなと思い、1回まずは訪ねてみようとも思った。選ばれた本たちをゆるっと見回ってみたくなった。
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新刊書店Titleの日常
書店店主の辻山さんの言葉に
そんなこともあったな、と思いを巡らせ
ページがめくる手が止まる。
P112
〈本屋はいま、『街の避難所』となっているのである〉
私は呼吸をするため本屋へ足を運ぶ。
繰り返される日々の中、それほどの変化もなく
でも時間は過ぎていく。
本書を読んでいるときはゆっくりと時間が流れていくような気がした。
ホロリとさせられ、少し苦い
「父と『少年ジャンプ』」が良かった。
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そこに並ぶ本の小さな声に耳を澄ませる。
一生懸命聞き取ろうとするうちに、自らの内面から言葉が溢れ出す。
Title に行った時に感じる心地よさは、辻山さんの志によるものなんだなと腑に落ちる。
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Titleの本棚、すきなんだよねえ。
Titleも辻山さんもすきだ。
わたしはこれからも、尽きることのない豊かな本の森を彷徨い続けたい。本がわたしに見える世界の解像度を高めてくれるのだ。
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幻冬舎のWEB連載をまとめた本。
荻窪の街道沿いにある書店Titleは気になっている場所。
レトロな看板建築と落ち着いた色合いが街に馴染んで、
車で通りすぎるばかりで行ったことはない。
小さな店舗はきっと店主の人柄がにじむ作りになってるだろう。
一章が短く、静かな文体で店の日常が書かれている。読んでいて落ち着く。
ネットで便利に買う本は、今に接続し今を肯定するばかりでさみしくはないか。
店で目に留まってつい買うという、いつか芽を出す可能性に水をやる行為の大事さ。
コロナ禍で、情報をネットやテレビではなく、本に求める人が、
必要とするのは心を鎮める言葉。