【感想・ネタバレ】蜂の物語のレビュー

あらすじ

果樹園の蜂の巣は、教理により厳重に管理される世界だった。その最下層の蜂として生を享けたフローラは、育児室の世話をし、花蜜を集めるうちに、女王にのみ許される神聖な母性を手にするが……実際の蜜蜂の生態をもとに、蜂の視点で描かれたディストピア文学

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Posted by ブクログ

ネタバレ

久しぶりに強烈な読書体験をさせて貰った。

働き蜂のフローラ七一七が主人公。
だが、彼女は蜂の世界では最下層に属する。身体が大きく異形だった為に処分されそうになった所を助けられたことから、彼女の運命が動き出す。

上手く言葉にならないが、出会うことができて良かったと心から思う一冊。

落ち着いたら、いつものようにブログに感想をあげたいと思う。

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2021年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公のフローラ717は或る巣箱の中で生まれた蜜蜂。フローラ族(フローラ=植物。花の種類も特定されていない、蜜蜂の世界では最下層の一族)は仲間の死骸の廃棄や巣の掃除を担当する「衛星蜂」の中の一匹。並よりはるかに身体が大きい規格外として生まれ、奇形を排除する警察蜂によって「排除」されるところを巫女を務めるシスター・サルビアに救われる。
そして、「実験」として、特別に育児室で働けるという破格の待遇を受けるが、シスター・サルビアからはサルビア族と対立する育児蜂のオニナベナ族の蜂たちの動静を報告するように命令される。
フローラ717には拒否する選択がなかった。
「受け入れ、したがい、仕えよ」
蜜蜂の世界は完全な階層社会、管理され、女王蜂と巣のために働き、働けなくなったもの、従わないものは排除される完全な管理社会だったのだ。


ここから先はこの小説の結末なども含んだ内容になります。


解説によれば一部創作もあるが基本的には蜂の生態を元にして、それを宗教的な規律で統制される社会として書かれているそうだ。
怪しげな企てを秘めた巫女、対立し合う族、蜜蜂同士がフェロモンを発して感情をあらわしたり、触覚同士を接触させて相手の意識を読み取ったり、記憶を共有する能力、スズメバチという外敵との戦いなどなど蜜蜂社会をベースとしたSFチックな冒険譚とも読める。

一方で巣を支えるのは全て雌の蜂であり、その雌蜂の間の支配関係、対立が描かれ、雄蜂は生殖行為以外では貢献しないが雌蜂に対して暴力的に振る舞うなど、一種のディストピア小説とも読める。ただ、蜜蜂の生態をベースにしているので、ディストピアが崩される事はない。
物語はフローラが衛星蜂であるにも関わらず産んでしまった卵から孵化した娘が、新しい女王蜂となり、新しい巣を得て、フローラはそれを見届けて、安堵して寿命を終えるのだが、新しい巣とは新しいディストピアの誕生を意味している。
蜂の生物としての遺伝子が変わらない限り、上下の立場の逆転はあっても基本構造は変わらないという皮肉にも見える。

最後におまけ。
蜜蜂の冒険譚といえば昭和40年代生まれにはタツノコプロのアニメ「昆虫物語 みなしごハッチ」をなんとなく思い出させる。当時20%以上の視聴率を得て大ヒットし、2年近く放送された子ども向けのアニメた。
ハッチは「みなしご」、つまり捨てられた子であり、自分の母親である女王蜂を探して一人旅をするので、管理社会に生きる話ではない。しかし、母親は女王蜂であり、階級闘争がある点や、スズメバチや蜂を捕食する相手との戦いがある点などは蜂の生態を元にしているので似ている。作者はどこかで日本アニメの名作として「みなしごハッチ」を見てないだろうかと思ってしまう。

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2021年10月17日

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