あらすじ
衝撃のデータが、世界の見方を変える! 公衆トイレから最新家電、オフィス、医療、税金、災害現場まで……「公平」に見える場所に隠された、思いもよらない男女格差のファクトに迫る。
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Posted by ブクログ
「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」とは、フランス人女性シモーヌ・ド・ボーヴォワールの言葉ですが、この事実が120年近く経った現代でも普遍的であることを我々はどう捉えるべきだろう、と思いました。
本書は女性を取り巻く実情について、数値や論文などのデータをふんだんに取り入れて解説しています。
よく女性が意見したときに言われる、「女性の意見ってデータとか客観性がないから」を見事に論破する内容になっていて、「自分の中にあったモヤモヤを言語化してくれた!」という気持ちになりました。
本書はジェンダーについて取り扱っていますが、ジェンダーを論じる上でありがちな「男を貶めて女を立てる」スタンスとは一線を画しています。「男性はこんなにひどい。女性はこんなに頑張っている」という観点からジェンダーを語るのではなく、「ビッグデータの中に密かに存在しているジェンダーギャップが起こす、さまざまな不具合について」順を追って理路整然と述べられています。
男性中心社会で困ることは、「女性だと舐められる」とか、「女性だと背が低いので棚に手が届かない」とか、そういった表面だけのことではなく生死に関わるものも多く、男性に効果のある薬は女性に効かないどころか、有害なものもあること。男性の精力剤の種類は、女性の生理痛の薬の何倍も多いこと。
女性だからと審査の通りにくいオーケストラ奏者、ピアノが大きすぎて手を痛めるピアニスト、警察官や看守よりも暴力に遭いやすい看護師。同じことをしているのに「生意気だ」といって黙らされる女性議員。
そういった人々の苦しみを踏み固めた上に男性が立っていて、しかもそのことに全く気付かずに「自分だけの力で頑張ってきた」と考えている。そしてそういう人たちは(女性の無償労働には全く目もくれずに)「機会は平等にあったのに、努力しなかったから」あるいは「女性なのに仕事も家庭もなんて欲張りだ」と女性に言う。
それが今、私達が生きているこの社会なのだなと痛感しました。読み進めるにつれて目を開かされる思いがすると同時に「こんなにも女性が生きていくって不利なことばかりなのか」と憂鬱な気持ちになりました。
それでもこれが、現実なのだなと思いました。
途中、医療に関するデータが提示されるのですが、「女性にはホルモンバランスの差が大きい時期があるが、その時期を考慮せずに医薬品は作られている」という部分を見た時、ピンと来たことがありました。
ワクチンです。
コロナ禍で唯一の希望と言われた「mRNAワクチン」ですが、私より早く接種した知り合い(女性)は酷い副反応が出て苦しみました。彼女は私に「生理中とかその前後は打たないほうがいいかも」と言っていたのですが、今になってその意味が分かりました。医薬品開発の際に使われるラットは、(メスだとホルモンバランスのせいで結果にばらつきが出るために)大抵オスなのです。
世の中が右利きの人間用にできているのと同じく、世界は男性用にできています。だから「女性の副反応が多い」と報道されていたのだな、と妙に腑に落ちました。
私は以前からジェンダー問題に興味を持っていましたが、今まで「fitbitが大きすぎるのは私の手首が細すぎるからだ」と半分本気で思っていました。誰に言われたわけでもないのに自分の身体が小さすぎるのが悪い、と自分のせいにしていました。
常に世界には「定型」と「非定型」があって、男性が定型なら女性は非定型、女性の中でも女性らしい人は定型で、女性らしくないと非定型、という物差しが自分の内外から(!)当てはめられています。「これが一般」「これが普通」と言われて育つことで「そんなわけない」と頭で理解していても、いざ自分の目の前のことになると、なかなか判断できないし差別に気づけない。その難しさ、無意識の差別の不透明さを、本書を読むことで改めて感じました。
男女差別は男性の脳内だけではなく、女性の脳内にも存在していて、我々には「自分の中にどんな差別があるか」を自分ひとりで知ることがとても難しい。だからこそ、「世界と自分の擦り合わせ」のためにこういった本を読むことには大きな価値があるのだと思います。
男性にとっては、社会進出して会議で意見を言う女性は「自分達の安寧を崩す者」「邪魔者」に映るのかもしれません。でも、本書が示しているように「女性の意見を取り入れる」ことは本当は、男性にとっても女性にとっても利益になる。たとえば商品開発の際に女性を入れることで女性の実情にも寄り添った商品が作れること。そして結果的に会社が発展することは、男性にとって本当に利益のないこと、障害になることなのかな? と思いました。
もっと言えば、「目先の損ばかり考えてしまって、長期的に見た時の利益が見えていないのかな」と感じました。人間には男性と女性があって、その片方だけの意見、片方だけのやり方でずっと発展していくことは可能なのか? と考えたとき、どこかの時点で行き詰まるような気がします。
それなら女性の意見も、もっと言えば性的マイノリティの意見も取り入れることで、今まで見えていなかった着地点だったり、企業で言えば利益だったりが生まれてくるんじゃないかと思えました。
「男性だけに優しい社会」にいて居心地が良いという人たちは猛反対するし、自分達の地位を死守するために全力で抵抗するんだろうな、とは思いますが……。
最近のジェンダー議論はとにかく「男VS女」の図式に入れてしまって互いを憎しみ合わせるような論調が目立ちますが、誰も憎しみ合って人類の半分を嫌いながら生きていきたいわけではないと思います。そんなことをしようと思ったら、相当な労力も必要なはずです。
目指すべきなのは、今からでも統計データに男女別の運用を取り入れること。それから、医薬品開発の際に女性性を考慮すること。ひとつずつ、地道に進めていくことでしか、この問題は結局のところ解決する手立てがないのだろうなと思いました。
女性である私個人視点から言うと、「今まで良い目をしてきたけれど、男性は女性を犠牲にしてきた」ということや「男性中心の社会は今後行き詰まる」ということを念頭に、それぞれが地道な努力をしていくことが大切なんだろうなと感じました。
※「男性にも差別しない人はいる」「男性でも、男らしさとか男社会に苦しんでいる人がいる」という意見があると思いますが、それは別枠として議論すれば良いことかなと個人的には考えています。(男性が苦しんでいるからって、女性の苦しみを蔑ろにしていいわけではないよね? 逆もまた然りだよね? という考えです)
Posted by ブクログ
データにおけるジェンダーギャップが実生活にどれだけ影響を与えているかという話
男性、白人は普遍的
当たり前の存在とみなされるようになっている
文化、歴史、データから女性はいないものとされている、人口の半分を占めるのにマイノリティ扱い
無償のケア労働に配慮した職場づくり
Googleでも男性より女性の自己推薦は低い、報酬も低い(Googleは認めていない
クオータ制は、不適任の女性の採用ではなく、能力のない男性の除外に貢献している
オルタナティブワーク
ギグエコノミー
女性の割合が多い、賃金格差、不安定労働の拡大
データにおけるジェンダーギャップが甚だしい世界にビッグデータを導入すると、既存の差別がより拡大する
機会には人間の偏見が反映されるだけでなく著しく増幅される可能性もある
女性が使う女性向けの商品を作っても決済者が男性だと言う点で使われないこともある
料理用ストーブ、スマホ、車、
女性の無償のケア労働
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労作。
自分も男だ。
その眼が曇りきっていたことを実感した。
徹底的にデータにあたる姿勢、集めよという主張に納得した。
女性の存在を認めることは経済政策としても正しいことを示している。
Posted by ブクログ
読みやすかった!!
今は男女平等だろ、と言われてまあそうだなと思いつつも何かもやもやしたものを感じてた私にとって気づきを与えてくれる本でした
たしかに表面上は昔と比べたら男女平等になってきているけれど、そもそも標準とされるものが男性仕様だったり、男性分しか実証実験がされていなかったり…と標準とされているものに欠陥があるという指摘(もちろんファクト付き)は目から鱗でした
アメリカの独立宣言が、"全ての人間は生まれながらに平等"と高らかに宣言していますが、この"人間"に女性が含まれていなかったことを思い出します
ヒラリークリントンを(所謂"女性"像に当てはまらないという悪い意味で)野心的と捉える心理はショックでしたが、この心理は長い人類の歴史の中で作られてしまったものだと思うので、ヒラリーみたいな人がこれからたくさん出てくることでしか解決されない気もします
ボーヴォワールが"女性は女に生まれるのではない、女になるのだ"といったのは正鵠を射ているとこういう事例をみると実感します
そのためにも私含め本来"野心的"な女性がもっとアグレッシブに、自分に嘘をつかず上を目指す姿勢を打ち出して行けたらいいな、と勇気をもらえる本でした
Posted by ブクログ
女性の声を聞かず、男性ばかりで(白人ばかりで)あらゆる決定を下すからこそ、税制も車も薬も物語もトイレも女性のことを考慮して作られない。
データを収集することもなく、女性の意見を「お淑やかでない」からと退け、「わきまえていらっしゃる」とご満悦。
男性が男性のために作った社会で生きている。それを痛いほど叩きつける一冊でした。
Posted by ブクログ
男女の身体的違い、女性にあてがわれがちな家事労働などが、社会の様々な意志決定から、いかに除外されてしまったいるかを、データ収集の不平等性という観点から説いている力作でした。
扱いを同じにするだけでは平等にはならず、男女の生まれ持っての、または社会的におかれてしまう状況の違い、理想をいえば、それぞれの人々の間の違いを考慮する必要があるのだ、という事をこれでもかと思い知らさせてくれる本です。
Posted by ブクログ
すごいなぁ。ここまで女性差を書ききるってのは。
なんつーか、ただ違うことをただ違うだけなんだって受け入れられない人たちが一定数以上いるってことがわかった。
Posted by ブクログ
政策等の意思決定の基礎となるデータが男女で区分されていないことで、データ上女性がいないことになり、さらなるジェンダーギャップが生まれると説明する本。
「データがない」ことを示す統計/事例が豊富に引用され、出典表記のボリュームは本書全体の1/3に及ぶという大労作
(時間をおいて追記)女性が社会的劣位に置かれた結果、教育と資産形成の機会がなくなり、シャドウワークの「適任者」として多くの時間を無賃労働に注ぎ込み、彼女らの利益の代表者は議会に送り込まれず、民主プロセスにも参加できない。という中で現に劣位ある女性の描写はそれなりに清潔な東京周辺の暮らしになれているとなかなかのエグみがある。彼女らの状況改善に必要なのはまず強引な父権主義なのだ。問題のあまりのあおきさに、大雑把な鉈を振るうしかなく、本書全編に充ちているイヤミも必要なコストなのかもしれない。
Posted by ブクログ
データの詳細ばかりで読みにくいと思って始めたが、途中からこの時代に女性に産まれたことに絶望した。だが最後は声を上げてこの世の中を変えようとしてくれている人達がいる事に涙が出た。
どうしてこうも気を遣いながら生きなければならないのか、男に家事をさせるだけでも女は言い方を工夫し、褒めなければならない。女性は毎日行なっているにもかかわらずだ!
でも世の中をかえるのもこうしたやり口をしていかなければ変えてすらもらえないのは理不尽と感じるが、やるしかない。
女性目線が世の中にもっともっと取り込まれて世の中が本当の平等になる日が来ることを切に願う。
Posted by ブクログ
大変衝撃的な内容だった。医療、設計、その他あらゆる場面で集められるデータは圧倒的に男性優位である。これはすなわち、AIが認識するデータが男性優位に傾くということ。私は、何も無理して女性を半分にしなくてもと考えてしまっていたが、少なくとも基礎研究や開発にあたる部分は、徹底して50/50を貫くべきだと意識を変えられた。
Posted by ブクログ
あるメーカーのオフィスチェアを買おうと思ったのですが、何十というブランドがある中で、女性の体形や身長を対象としたシリーズは1つしかなかったんですよ…
このように一つ一つは小さく見えることでもどうやら世界は女性にあった仕様になってなくない?という違和感を、数値と取材で示してくれる本。
現代日本で暮らしている感触とベストマッチで、やっぱりそうだったんだね…ということで驚きはないが、医療、家電、災害などあらゆる分野で、男性(多分その国のマジョリティ人種の)が基準になっていて、女性はmarginalizeされていることが示されている。で、実際困ることもたくさん起きているからどんどん変えていかないとね。
Posted by ブクログ
中学生の頃の話だ。ある晩、母親が「500円あげるから食器洗いをしてくれない?」と言った。
それほど大仕事でもないし、別に疲れるわけでもない洗い物が時折ものすごく面倒になることは、たかだかひとり分で済む今の僕にもよくわかる。それでも普段から淡々と家事をこなしていた母が、「たかが食器洗い」に500円を出すというのには少し驚いた。
その後の記憶はあやふやだけれど、500円に釣られて僕は機嫌よく食器を洗ったと思う。そして偉そうに褒美をせしめたはずだ。ちょっぴり母のことを心配はしたけれど、「皿洗いくらい毎日やろうじゃないの」とは考えなかった。恥ずかしながら家事は母の仕事だと思っていたし、「家事なんか面倒くさがる思春期男子」という「特権」を手放すつもりもなかった。
首相時代から問題発言を繰り返してきた差別主義者が、自らが推進すべきオリンピック・パラリンピックの精神に泥を塗る暴言で世界を呆れさせている。僕も耳を疑ったし腹が立った。だけどこの本を読んでいる今、同時に怖さも感じている。これを読めば、濃淡の差こそあれ、僕も彼と地続きのグラデーションの中にいることに嫌というほど気づかされるからだ。
この世界は男性をデフォルトにして出来上がっている。辞書にもあるように「man=人間」なのだ。鍵盤の大きさが原因で女性のピアニストに手の故障が多いのも、ウィキペディアの「サッカーイングランド代表」のページに男子チームしか載っていないのも、極寒のフィールドで女性研究者だけが小用を足すために防寒着を脱がないといけないのも、すべては物事を決める場に女性がいないせいだ。
人々に「女の子らしい走り方をして」と頼んだ実験の動画を観たことはないだろうか。男性はおろか女性さえもクネクネとデフォルメされた滑稽な走り方をする中、まだ幼い少女たちだけがまっすぐ前を見据えて全力疾走する純粋さに涙がこぼれた。アメリカの調査によると、女児は6歳になる頃から「男性ほどは賢くなれないのではないか」と思い始めるという。間違った刷り込みは女性自身にも及んでいる。
世界の無償ケア労働の75%は女性が担わされている。5分もかからない僕の皿洗いが500円に値したはずがない。終わりのない家事労働に追われる母のたった5分の「一回休み」にこそ価値があったのだ。
目の前にあるのに見えていなかった不平等を膨大なデータで明らかにしてくれるとても良い本。大げさじゃなく(そして情けないことに)、どのページにもハッとさせられる事実がこれでもかと書いてあります。おすすです。
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あらゆる面で、男性を標準としており、女性のことは全く数に入っていなかったという事実。女性である自分としては、読むのがしんどかった。でも、テレビ界でで起こっている性加害のこととか、以前では表に出なかったことが出るようになってきているので、少しずつではあるけど世の中が良くなっていると信じたい。
それにしても、世界の人口の半分は女性なのに、どの国でも同じように「ないもの」とされているのは謎
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除雪からスマホ設計、薬の開発、労働、災害、いたるところで男性中心で社会が作られていて女性が排除されているか、ひたすら事例が紹介されている。
「私たちはなぜか、女性は生まれつき優秀だと思わないのだ。それどころか、女性らしさは知性の対極にあると思われているようだ。最近のある研究では、アメリカの一流大学の科学分野の教授陣(男女含む)の写真を参加者たちに見せた。その結果、男性教員の外見は、その人を科学者らしいと思うかどうかとは関係がないことがわかった。ところが女性教員の場合は、典型的な女性らしい外見の人ほど、科学者らしくないと思われることが明らかになった」
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あとがきなどを含めた本文が67%で、残りの33%は参考にしたデータ?なところから分かるように、性差のデータが少ない中でかき集めてできた貴重な本です。
「多くの男女差別は悪意によるものではなく、認識の欠如によって生じている。」この文が答えなのでしょうね。
分かってはいたのですが、あまりに女性の扱いがひどくて読むことが辛くなったことが何度もありました。でも、読まずにはいられませんでした。なぜなら、私も被害にあっていることがいくつかあったからです。男性として産まれていれば…と思うこともありましたが、男性にはなりたくないです。男性は「女は異常で、非定型で、明らかにまちがっている、という意見で一致しているわけだ。」 と思っているように、私もそう思っている男性が嫌いだからです。
何が男女平等だ、と思います。
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現代社会において如何に女性が不利益を被っているか。意識していない事自体が罪であろう、私は罪人の一人である。しかし、男女間の分断を煽り、ミソジニーを加速させてはならない。建設的な読解力が必要だ。何故なら相手は、女性専用車両にすら、不満を抱える人たちなのだから。
医薬品や交通事情、車のシートにおける設計に至るまで、女はいつも二の次だ。その所為で、防護服なんかでは危険に晒されるリスクは上がり、実際に重傷を負う事も男より多い。骨盤の作りが違うから、男性同様の歩行訓練を強制されるのは辛いし、一人でバスに乗ったり、トイレに行くだけで、男は乱暴を働いてくる。2013年の国連調査では、世界の殺人犯の96%は男性だという。酷い生き物だ。
強引なクォーター制のように、女性役職や採用を一定数確保すべきかという議論がある。能力に従い公平を期すべきという反論には、経路依存的な男性優位な価値基準が能力査定のベースにある事すら気付いていない。一度女性が選考者になれば、異なる基準が生まれる可能性が高く、それがクォーター制の狙いの一つだと理解すべきだ。
分断を避けるべきだと書きながら、しかし、結局、生物としての男女に分断できるはずはないだろう。強引にでも進めて仕舞えば良い。反対論者は、性的パートナーの選択肢から漏れ落ち、やがて消えゆくのだから。
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人類史、美術史、文学史、音楽史、さらには進化の歴史も、すべて客観的な事実とされている。だが実際には、そうしたファクトは私たちをあざむいている。人類の半分が含まれていないせいで、それらのファクトは歪曲されている──
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最近になって、「生理の貧困」や、災害時の女性の困りごとについても知られるようになってきた。
そして今、ウクライナの現状を報道で見ると、女性たちが悍ましい被害にあっていることが伝えられる。
一部ではフェイクニュースと言われるが、規模はともかく、女を黙らせ、欲望を満たすのに手っ取り早い方法を兵士が取らないはずはない。
時間が経つにつれ、忘れられていくけれど。
女は運転が下手、と私も思ってきた。
近くにしか視野が行かないんだろうと思っていたが、発想を逆転してみると、そもそも男性にとって使いやすい車が女性も使いやすいとは限らない。
私は背も高く足も長い方だが、とにかく運転席は居心地が悪い。
全てが使いにくい。固すぎる、デカすぎる!
昔、防具を使っていた頃は金的用の防具が邪魔で仕方なかった。
しかも男性が使った後のを何で使わなきゃいけないんだ・・・
PTAも含むケア労働、昇進の壁(産休育休、時短勤務)、未だ通用できない旧姓(試験は本名で?旧姓が本名だが?)。
とにかくありとあらゆることが男性中心で女性は使いにくい(どころか命の危険性がある場所だってある)。
本書に書いてあることを大袈裟、とか、嘘だ、とか決めつけるのは簡単だろう。
自分にとって信じ難い事実をないものとするのは一番楽だ。
しかし、見なければ無かったことにできるのか?
気づかなかった、で問題は解決するのか?
いや、もはやこれらを無視はできないだろう。
なぜ変化を恐れるのか?
解決、改善を進めれば今までより、自分が、皆が、生きやすくなる。
本書は日本を含むアジアについてはあまり触れられていないのが日本の読者としては残念だが、どの国も、どの地域も女性の困りごとはあまり変わらないようだ。
さて、日本は変われるかな?
経済が没落仕掛けている今、再び名を上げるには、ジェンダーランキングを1位にするのが、手っ取り早くない?
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HONZノンフガイドブックから。”マチズモを~”を読んでから、この分野への関心が俄然高まっている。自分のことだけど、良い傾向だ。本作は、あらゆる事項において、実は気付かないうち、男性本位で成り立っているということが、数々のエビデンスをもってどんどん暴かれていく。実に痛快。でも、こうして言われてみてはじめてハッとする、みたいなことも多く、自分も大いにマチズモに侵されている事実を、改めて突きつけられる。男性にとっての快適だけ考えた結果、片手落ちになる。実に当たり前のことなんだけど、それが本当の意味での常識になるまで、いちいち立ち止まって考える癖をつけとかないと、いつまでも現状のまま変わらないですわな。
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ジェンダー平等に向けて、データの見方、取り方を提言する。
まずデータをジェンダーに分ける、男が優位な状況で取ったデータをファクトとしては扱わない。
医療データは、女性男性を分けていないケースが多い。女性は年齢や月経の状況で異なる治療法への反応を示すことがあルため分類の手間が非常に多くなる。そのため、男性と同様なものとして一種類に簡便化で扱ってしまっているが、これでは適合する治療法がわからなくなってしまい、実際ケースによっては女性の死亡率が高くなってしまっている。
女性教師や、政治家などは評価側のバイアスが強く、年代が減るとともに薄まっては来ているが、正当な評価ができる状況にはまだ来ていない。
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データの不在・偏在に衝撃を受ける。「女性にとってはどうか?」、「女性のデータはあるのか?」と問うべきだという意識を強くしてくれる一冊。
まず日本はどうかと調査したい。データがあるのだろうか。
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エピソード,データを,纏綿と記述しているだけなのだが,説得力はすごくある.翻訳はとてもよくて,読みやすい.invisible を存在しないと訳してあるのは,どうかなとは思う.
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今いる世界しか知らないから、それがどれだけ男性中心に設計されているのか、気づかないままでいることが多かったなと思う。
そして、ジェンダーやその他マイノリティに関する偏見に関する議論になった時に大きな壁になっているのが「投影バイアス」=自分が経験することは、人びとが一般的に経験することと似ているはずだと思ってしまうことだというのが最も大きな学びだった。自分がマジョリティになりそうなときは特に、気をつけようと思う。
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【感想】
「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」
2月3日に開かれたJOC臨時評議員会でのとある発言が、国内外に大きな波紋を広げた。この発言を擁護する男性、表立って批判する女性と野党議員、沈黙を貫く与党議員と、めいめいのポジショントークは連日メディアを賑わせ、女性への権利意識について再考するきっかけとなった。
しかしながら、意見が割れに割れたこの騒動の中にあって、擁護する側も非難する側も、ある一点では同じ意見を有していた。
それは、「あなたの感じていることは思い込みにすぎないのでは?」ということである。
ジェンダー本は、まさにこの「思い込みにすぎないのでは?」という批判との戦いだ。
ジェンダー本は、「潜在的差別」というはっきりしない事象の存在を証明しなければならない。それにはかなりの困難が伴う。差別を被っていない男性たちから「近視眼的な被害妄想だ」というレッテル張りをされるのを避けるよう、慎重に、論理的に、言葉に気を配り、かつ老若男女に納得感を与えなければならない。
その難題を、本書は見事にやってのけたのではないだろうか。
本書が他のジェンダー本と一線を画しているのは、「潜在的差別」をデータの形で顕在化している点である。
ジェンダー論の中には、ともすれば語り手の身の回りのエピソードトークに終始するあまり、逆方向にバイアスのかかった論調に転んでしまうものがある。実際、フェミニストが男性優位社会に警句を鳴らそうと必死になるあまり、自身の観測範囲内での不快感を大きな主語で話してしまい、せっかくの男性読者にも白い目で見られてしまうことがある。
そうした読者は自分の偏見を更に強めてしまうのだ。「あなたの感じていることは思い込みにすぎないのでは?」と。
しかし、この本は違う。論旨を簡潔に述べると次の通りだ。
①車の設計や薬の効能など、世の中は「男性の標準モデル」を前提として設計されている。
②女性と男性の身体の作りはこんなにも違うのに、女性のデータは活用されていない。それを指し示す「データ・ギャップ」の証拠はこんなにもある。
③女性のデータが無いのは、ビッグデータ社会の到来を考えると大問題だ。
④だから女性を社会に登用すべきである。
本当にロジカルで、筋道が通っている。圧倒的なデータ量、データに裏打ちされた問題提起、首尾一貫とした主張。この本を読んでなお、「世の中にジェンダー・ギャップは存在しない」と胸を張って言える読者はいないのではないだろうか。
個人的には、「ベスト・ジェンダー本」と言っても過言ではないぐらいの傑作。是非色んな人に読んで欲しい。
【本書の概要】
この世界は男性のデータを中心に構築された世界である。何でも男性を基準に想定し、女性のことを考慮しない。これが「データにおけるジェンダー・ギャップ」だ。それは悪意によるものではなく、意図的でもなく、むしろ一種の思考停止である。
ビッグデータが人々の行動規範を定義づけている昨今において、学習データが女性の存在を考慮していなくては致命的欠陥を生む。データにおけるジェンダー・ギャップが甚だしい世界にビッグデータを導入すると、既存の差別がさらに拡大し加速化することにつながる。
女性が職場で直面する性的ハラスメントや暴力、また実生活における不便不利益について、世界的にデータが不足しているのは、①研究が不足している ②大多数の女性が損害を報告していない という理由によるものだ。これは問題に対処するための適正な手続きを定めていない組織にも責任がある。
女性たちが今後、世界とどう関わっていくかを左右するテーマは次の3つの通りだ。
①女性の体について(身の回りの商品が女性の体の特徴を考慮しておらず、女性の身体のサイズには合わない車のデザインや、女性に効きにくい薬が生まれている)
②女性に対する性的暴力(押し付けられたジェンダー感により、男性は無意識のうちに優越主義に浸っている)
③女性による無償のケア労働が当たり前になっている
ジェンダー差から来るデータ・ギャップに対する解決策は、女性参画を促し、意思決定過程における格差を縮めることだ。女性たちが意思決定や研究、知の生産に関わっていれば、女性の存在が忘れられることはないのだ。
【本書の詳細】
1 男性が基準
「man」という単語が人間全般を指すこと、「医者」と言われれば無意識に男性を想像することのように、私達は女性であることが明確に示されない限り、ほとんどは男性のことを指していると考えている。男性が基準となる価値規範は私達の心理に深く根ざしている。現在の文化のように男性中心主義が顕著な場合は、文化そのものが当然のごとく女性を軽視するようになる。
文化史に女性が登場しないのは女性が権力の座につけなかったからだ、というのは一面的な見方であり、正しくは女性が一個人として尊重され要職を任される世界になっていなかったからである。アイデンティティが軽視されている人々や、自分たちの存在やニーズが認められない世界で動揺するのに慣れてしまった人々(=歴史における女性たち)は、この「男性優位への暗黙の了解」から逃れることができない。
言い換えれば、女性の存在が目に見えず、忘れられているせいで、そして私たちの知識の大半を男性に関するデータが占めているせいで、男性=普遍的と「みなされるようになった」のだ。
2 データで見る性差別
・車優先の除雪スケジュール
多くの国では降り積もった雪を除雪するときに車道から行う。車を運転するのは男性が多く、歩行者は女性が多い。車中心社会の運転手は概して男性であり、ベビーカーを運転するのはたいてい女性だからだ。また、滑って怪我をするのも女性のほうが多い。
移動に関する公共政策の多くは主に「雇用業務に関する移動」を想定しており、幼稚園の送り迎え、食材の買い出し、介護などの「ケア労働に関する移動」を、データで区分していない。実際には、車道よりも歩道を優先的に除雪したほうが、より経済的に便益が高いことがデータから分かっている。
・公共施設の不平等さ
トイレの数、公共施設における照明の少なさなどが挙げられる。男性よりも女性の方が、オープンスペースを歩くときに恐怖を抱く割合が高く、それゆえ移動に不便を感じている。(地下鉄やバスでの痴漢、夜道でのストーカーなど)
都市空間や交通環境をデザインする際女性を考慮に入れないという、「データによるジェンダー・ギャップ」の例である。
これらはほんの一例だが、「男性を基準にデザインする」という弊害が産んだジェンダー・ギャップは、世の中のいたるところに見られる。
3 労働
世界の無償労働の75%は女性が担っている。男性が無償労働を多く行う場合であっても、大部分を占めている日常の家事をこなすのではなく、子供の世話など楽しめることだけをやる場合が多い。無償労働を「カウントすべき労働」とみなせば、男性よりも女性のほうが、週当たりの労働時間が多くなるのだ。そして、この労働負担の差は実際に健康状態の悪化に繋がっているというデータがある。
有給出産休暇の長さと賃金補填率がどの国でも未だに足りていない。長時間労働の文化を悪化させているのは、典型的な男性の生活パターンにもとづいて設計された昇進制度だ。
私達は無償のケア労働を認め、正当に評価し、無償のケア労働に配慮した職場づくりを始めなければならない。
4 実力主義
先進国の人々は、世の中は実力主義であるべきだと思っているだけでなく、実際にそうだと信じている。しかし、実力主義は神話である。
米国を拠点とするさまざまなテクノロジー企業から収集した、248の勤務評価を分析した結果、女性は男性に比べてネガティブな個人的批判を受けている一方、男性にはそのようなことはなかった。また、白人男性は同じ業績の女性やエスニック・マイノリティの人々よりも高評価を受けていることがわかった。さらに、実力主義を標榜する組織ほど、男女ともに能力は変わらない場合でも、管理職たちは女性より男性の部下を好む傾向があることがわかった。
これは学問の世界においても根強く、被引用論文数は女性よりも男性のほうが圧倒的に多い。また、そもそも女性は前述のケア労働に従事するために時間を取られるせいで、研究の時間を確保するのが難しくなっており、スタートラインから公平でない。
こうした「男性のほうが優秀」というバイアスは学校で植え付けられてしまい、優秀バイアスを植え付けられた子どもたちが大人になって働くようになると、それを助長する側になることが多い。
今後、データの発展により採用過程をAIが担うことになると、問題はより深刻になってくる。現に、とある採用ツールが、客観的な基準を使っていると謡いつつも、実は女性に不利なように採用を行っていることが発覚している。
人間の偏見を取り除くために開発したはずのアルゴリズムが、逆に女性への偏見が含まれたアルゴリズムを考案してしまったのだ。
5 職場環境
エアコンの推奨温度は、47歳で体重70キロの男性の新陳代謝を想定している。そのせいで、女性は自身への適性温度から2℃ほど低い環境で仕事をしていることが分かっている。
これまでの職業研究は典型的な男性中心の業界を対象としてきたため、女性労働者の傷害を予防する知識に乏しいのだ。
特に介護士、清掃員など、重量物を運ぶときの配慮が全くなされていない。
女性は男性よりも筋骨格損傷が7倍も多く、股関節及び骨盤の疲労骨折は10倍も多い。
バックル、ハーネス、軍用装備などの「身体に密着させる器具」は男性の標準に合わせて作られているため、女性にフィットしないことが多く、怪我の原因になっている。
さらに悪いことには、女性労働者が主となる業種については、労災研究がいっさい行われておらず、使用可能なデータが蓄積されていない。データが揃っているのは男性のデータだけなのだ。
化学物質を扱う工場(ex.プラスチック製品を作る工場)では、作った製品の危険性については議論されるものの、「働いている人への悪影響」には蔑ろにされている。もちろん、給料が低く劣悪な環境で働く人の多くは女性である。男性と女性では免疫系もホルモンも異なるため、化学物質に対する耐性閾値が違うのにも関わらず、女性への悪影響の研究は全く進んでいない。
6 男性向け=万人向け
女性の方が男性よりも手が小さいのは明らかなのに、スマートフォンやピアノは男性用サイズに設計されている。
また、音声認識ソフトは、男性の言葉よりも女性の言葉のほうが、変換ミスが有意に多いことが明らかになっている。
自動運転、医療補助、面接などにどんどんAIが導入されている中、こうした性差別的アルゴリズムによって、女性が不利益を被るばかりか、健康や安全が脅かされている。
女性のニーズの中には、男性には縁がないせいでまったく日の目を見ないことがある。こうした隠れた潜在需要に対して、投資家の動きは鈍い。例えばフリーハンドで扱える搾乳機のように、潜在市場がありながら男性目線では投資の対象にならないため、埋もれている市場はたくさんある。
データによると、女性経営者が受ける投資額は、平均的に、男性経営者が受ける投資額の半分以下である。にも関わらず、収益は男性経営者の2倍以上をあげている。
投資家が機敏に動くのは新興テクノロジーの世界だが、この世界こそ、「ハーバード中退の白人男性社会」が形成されている。
新しいテクノロジーの世界では、男性が人間のデフォルトであるという暗黙の了解がある。アップルは健康管理アプリを開発し、それを素晴らしく「包括的な」ヘルストラッカーだと豪語したものの、生理トラッカーは付随していなかった。
自動車の設計もそうだ。
女性が自動車事故に遭った場合は、死亡率は男性に比べて17%高い。それは車が誰のために設計されたかに関係がある。運転するとき、女性は背が低いため男性よりも前のめりになりがちで、その分危険なのだ。
こんな状況にあっても、運転席に置かれる衝突実験のダミーは男性用しか使われていない。女性用ダミーは助手席に置かれることが多く、しかも助手席のデータはさほど尊重されていないのだ。
7 医療
医療データにおけるジェンダー・ギャップはいまだに甚だしい。女性は男性の縮小版ではなく、免疫系や細胞も性別によって有意な差があるが、なぜ未だに男性が標準なのか?
男性に効果はあるが女性に効かない薬、その逆だが動物実験の段階で排除されている薬については、おそらく相当な数が存在するだろう。なぜなら、治験の対象者はほぼ男性であり、たとえ女性に多い疾病(うつ病など)の動物実験においてさえ、雌性動物が含まれていない(全体の12%)のだから。
8 市民生活
GDPに家事労働は含まれていない。サービス労働を除外した数値であるGDPは、現在の社会環境を正確に反映している指標とはもはや言えなくなっている。
1970年代半ばまでの戦後の時代は「生産性上昇率の黄金期」のように見えるが、実際に起こっていた大きな変化は、女性たちが外に出て働き始めたために、以前は家庭でやっていた料理や裁縫が、GDPに計上される市販の物やサービスに取って代わられただけなのだ。
推計によれば、無償のケア労働は、高収入国ではGDPの最大50%を占め、低収入国では80%を占めるとされている。一例であるが、オーストラリアで、無償の育児ケアの市場規模を計算したところ、金融部門を大きく抜いて、同国最大の産業とみなすべきほどの規模であることが分かった。
データによると、「女性が無償労働に費やした時間」と「雇用労働市場への女性の参加率」には、強い負の相関関係があることが明らかになっている。多くの女性は無償労働のおかげで、雇用形態をパートに変えなければならない状況に直面している。そんななかでも、女性の無償労働の詳細なデータはどこの政府も収集していない。
私達はつい、女性の無償労働というのは、女性たちがそれぞれの家庭の事情によって、子供や親の面倒を見ているのだと思ってしまいがちだ。女性たちの無償労働は、社会を支え、社会に利益をもたらしている。女性の無償労働は単なる選択の問題ではなく、私達が作り上げた制度に組み込まれてしまっているのだ。
9 女性の権利
人間は、自分が経験することを「他の人も一般的に経験することと似ている」と感じる「投影バイアス」を持っている。すると男性は、男性中心主義社会こそが「公平で普遍的な常識である」と信じ込んでしまう。ここで対等の立場を要求する女性に出くわすことで、初めて偏見の存在に気づき、そのような女性の行動こそ偏見であると錯覚してしまうのだ。
同じ国会議員でも男性と女性では、政治にもたらす視点が変わる。国会議員になった女性が政治において限定的な影響力しか与えられないのは、男性中心の後援ネットワークから排除されているからかもしれない。
そして、今の政界は女性が活躍しやすい環境ではない。男性は女性の話を遮りやすく、女性は不当な扱いによって討論の時間を奪われるケースが多いことが分かっている。また、概して男性は「野心的な女性」に対して――同じように野心的な男性とは違って――ネガティブな感情を抱くことがデータから分かっている。
人口の半数を占める女性を政治の場から除外することは、データにおけるジェンダー・ギャップをより一層加速させることになる。
10 女性のいない災害復興
戦争、自然災害、パンデミックをはじめとする災害が発生すると、都市計画から医療まで、あらゆる分野のデータにおけるジェンダー・ギャップが悪化する。平和なときに女性の視点を取り入れなかったつけが回ってくるのだ。
復興計画担当者たちはビジネス上の利益を優先し、「住む場所を失った何千人もの人々」のニーズを汲まなかった。結果として、キッチンのない仮設住宅、通勤手段のない場所への居移転計画、女性特有の医療ニーズ(産科検診など)の不備、といった憂き目にあっている。
避難所、難民キャンプといった施設は、男女分けがされていないがために、レイプ被害が発生しているとされている。仮設トイレや風呂場も別れておらず、トイレへの道のりにも、トイレ自体にも照明がないため、女性は二人一組で行動したり飲まず食わずで過ごしたりと不便を被っている。
実は、女性たちが難民になるのは男性による暴力が原因である場合が多い。私達はふつう、人々の住む場所がなくなったのは戦争や災害のせいだと考える。避難民が男性である場合はそのとおりで、女性の一部にももちろん当てはまるが、女性がホームレスになる原因の第一位は男性の暴力なのだ。
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世の中のあらゆるものは男性基準で作られており、女性の存在はないものとされている。車やピアノ、スマホの大きさや薬までも。man=男性であるように。原著は数々の賞を受賞し、世界26ヵ国で翻訳されているようで、とにかく膨大なデータを元に説明している。
女性の自分でさえ気付いていなかった事実が山ほどあることに絶望しつつ、感覚や感情ではないデータがここまであるということは救いでもあると感じた。
印象的だった帯文。
"データのハサミで切り刻まれる「気のせいでしょう」という欺瞞。
女性の生きづらさには、これだけの証左がある"
──ブレイディみかこ
Posted by ブクログ
男性優位の世界になっている事をデータに基づいて説明してくれる。薬も男性基準で考えられている〜の件は確かにそうだろうなと見落とすというか気づかないことに気づかせてくれた。
ピアノも男性基準なことも。
この世界を変えていくのは難しいだろう。なぜなら女性である私が気が付かないことが多いのだからこの世界の当たり前を疑うのには限界がある。
Posted by ブクログ
データ量がすごい。女性が多大な不利益を被っていることを改めて認識。LGBTの議論が活発になってくると「普通の女性」の権利がより制限される可能性もある。
ただし自分の周りに限って言えば男性よりも女性が幸せそうに見える。存在しない、無視されることからくる女性の幸福があるのか、不必要な責任を負うことによる男性の不幸があるのか。
Posted by ブクログ
男性にとっての「女性性の謎」。
必ずしも政治的クオータ制に賛成はしないけど、医療福祉をはじめとした各分野に女性をはじめとした多様な視点が失われていることによる損害の大きさは可視化される。文化背景による差別は長期的に考えないと難しいが、実害を避けるための取り組みは本書を参考にするだけでかなり解決するのでは。
Posted by ブクログ
除雪の話
公共交通期間を使う割合は女性の方が多い⇔男性は自家用車
トリップチェインと呼ばれる
(送り迎え、買い物とか)
除雪を歩道や公共交通機関周りからはじめた
⇒怪我が減って医療費削減になった
トイレが平等とはどういうことか?
床面積が一緒だと収容人数が大きく異なる
一人当たりの時間は女性の方が2.3倍
(子連れ、介護者連れ、生理中等)
かつ女性の方が頻繁にいく
10歳を超えると公園の利用率が男女で違う
⇒女子は場所取りで男子に勝てる気がしないから
⇒広い1スペースではなく、小さく区分けをしたり入り口を増やして入りやすくした
有給出産休暇を保証していないのは世界で4カ国だけで、その一つがアメリカ
育児休暇は強制的に取る制度にしないと男性の取得率が上がらない
スウェーデン:男性専用の育児休暇、取らないと休業手当から差し引かれる