あらすじ
碆霊様を祀る、海と断崖に閉ざされた強羅地方の村々。その地を訪れた刀城言耶は、村に伝わる怪談をなぞるように起きた連続殺人事件に遭遇する。死体に残された笹舟。事件の現場となった“開かれた密室”の謎。碆霊様が遣わすという唐食船とは何なのか。言耶が真相にたどり着いたとき、驚愕の結末が訪れる。
“碆霊様”は何を祀る?
“唐食船”の正体とは?
海辺の寒村に伝わる四つの怪談。
怪談をなぞり起こる連続殺人事件。
数多の謎に、刀城言耶が挑む。
死体に残された笹舟。“開かれた密室”。
刀城言耶の訪れる先で、またも不可解な事件が起こる……
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
碆霊様を祀る村に纏わる四つの怪談、それをなぞらえるような不可解な四つの密室殺人、死体に残された笹舟、村が秘匿してきた禁忌など怪異と本格ミステリーの塩梅が絶妙な刀城言耶シリーズの長編で、持ち味の多重推理と思わず絶句するラストが堪らなかった。
Posted by ブクログ
読むのが遅い自分にしては、短期間で読んでしましました。続きが気になってとまらなくなってしまったのでした(^^;)。
最初の4つの怪談がそれぞれ怖く興味深いものでした。その怪談が全体の約4分の1を占めます。その後、刀城言耶が登場。怪談の舞台で、怪談になぞらえたような殺人事件がおきます。そしてその殺人がすべて密室(不可能犯罪)です。トリックに少し無理がある感じはしましたが、そこは小説ですから。大変おもしろかったです。
最後はなんとも不思議な終わり方でした。
Posted by ブクログ
刀城言耶シリーズ第七作目。強羅地方に伝わる四つの怪談とそれに擬えた殺人。冒頭の怪談はどれもとても怖い。不可能かと思われる殺人事件。最後の二転三転のどんでん返しの解決編はとても面白かった。そして衝撃のラストに戦慄。
Posted by ブクログ
これもまた面白かった~。待望のシリーズ最新作。大きな流れとしての展開はシリーズ共通だし、怪奇譚に絡んだ事件というのもいつも通りなんだけど、それにしてもこのワクワクドキドキ感は半端ない。小難しい書籍を読んでいるように一瞬錯覚させられる、難読の地名や人名のオンパレードも、今更ながら癖になる味わい。本作は、導入に当たる地方の怪談がかなり長い尺で語られることが一つの特徴だけど、以降、探偵登場で幕を開ける事件と、見事に絡み合わせられていく求心力が凄い。改めて素晴らしいシリーズです。
Posted by ブクログ
刀城言耶は、碆霊様を祀る海と断崖に閉ざされた強羅地方を訪れた。
村に伝わる不気味な伝承をなぞるような四件の連続殺人事件に行き合う。同行する祖父江偲と共に、今再び怪異に挑む。刀城言耶シリーズ第九弾。
舞台設定の出来は驚異的。
村の様子や設定が細かく描写されており、まるで本当に存在する村であるかのように錯覚させられる。特に、昔の特幽村が極貧の寒村である描写が良かった。資源も土地もいまいちな村で、蛸漁をする村人たち。どんよりと曇った低い空まで目の前に浮かぶほどで、非常に気が塞ぐ。村の大人たちのどことなく疲れた虚ろな目が、ちゃんと言われずとも分かる。丁寧な描写力こそ、三津田信三の妙であると思う。
竹林宮で及位廉也が餓死した事件。
殺人事件で餓死を扱うのはかなり珍しい気がする。どう料理されるのか、ずっと気になっていた。紐解かれたのは、かなり悍ましい真相だった。及位氏が虫の息になるまでの様子は、かなり哀れなものだったのではないだろうか。及位視点で最後の半日程の記録を読んでみたくなる。
謎解きシーンが少しもたついた印象。
というのも、本作の答え合わせは、刀城言耶の思考を段階を踏んでしっかり詳細にトレースしている。しかし、私は探偵役に勝負を挑むような読み方をしない読者である。故に、いくつもの仮説を否定する工程がもたつきに思えてしまったのだと思う。正直、正解ルートの提示だけで良かったかなと思う。
Posted by ブクログ
最後がホラー要素のあるミステリーですが、全般的に読みやすい一作です。ただ、若干のこじつけ感はありました。
推理パートまでの面白さは、刀城言耶シリーズの方では上位かなと個人的に思います。怪談も物語の中に書かれており、それだけでも楽しめます。
Posted by ブクログ
ゆっくり味わいながら読む筈が、結末をのんびり待っていられない謎だらけのおもしろさについ夜更かし。
時代を跨いだ四つの怪談からの始まりは好き嫌い別れそうだけれど自分はゾクゾクしてこの強羅という舞台特有の不気味さが感じられて好印象。
押しの強い偲さんのキャラにもだいぶ慣れてきたなw
薄々気づいてしまった唐食船の正体も、その答え合わせを待つ間のドキドキが一種の醍醐味。土地土地が背負ってきた歴史の想像を絶する重さ…。それでも守るのは過去ではなく未来を生きる子供や若者であって欲しかった。
ゾッと凍りつく幕切れに息を呑む。
Posted by ブクログ
導入の怪談話が読み応えがあり、それで一作品になりそう。本編はホラー感なくサスペンス要素のみな感じで、ホラー嫌いなくせに少しあっさりに感じた。
とはいえ、過去の怪談と現在の事件が見事にリンクしていて、どの話にも無駄がない感がすごい。
Posted by ブクログ
4つの怪談にはぞわぞわとしつつ、ようやく始まった本編では廃道での偲のわがままぶりにイラッとしつつ(笑)、第一の被害者が現れたときには待ちかねたという気持ちになっていた。
怪談とリンクする連続殺人事件。その裏には村の伝承そして村の秘密が……?
試行錯誤する言耶の推理は楽しいが、ひとつひとつがおぞましい。
秘密を抱える村の不気味さが最高潮に達するラスト。
Posted by ブクログ
【短評】
決して悪くはないのだが、過去作と比較すると物足りない印象。
まず、冒頭に「碆霊様(はえだまさま)」に纏わる四つの怪談を配置する構成は、導入として効果的だったと思う。碆霊信仰の得体の知れない薄気味悪さは本作の雰囲気作りに一役買っていたし、強羅地方の地理を頭に入れるという点でも奏功していた。刀城言耶シリーズは登場人物や地理を把握するのに苦労する(苦痛、ではない)ので、こうした工夫はありがたかった。一方で、各話の恐怖度がイマイチであり、良くも悪くも「触り」になってしまったのは残念。ただし「蛇道の怪」は良かった。”段々振り返っている”という趣向はさすが三津田信三と唸らされた。
導入部のお陰が、シリーズ屈指の読み易さだったと思う。どこで何が起きているか、スッと頭に入ってくるので連続殺人事件に集中することが出来た。中でも竹林宮の殺人は状況の不可解さが群を抜いており、その真相も含めて非常に評価している。
高評価に至らなかったのは意外性の無さといったところか。回り道をして正道に戻る構成というか、論理的には正しいかもしれないが、何というか、もっと吃驚させて欲しかったなと思う。
最後に、本作の幕引きは見事の一言。最終3ページの展開だけで1点追加しても良いと思う程に。伏線が綺麗に発動すると言う意味において、本筋のミステリィを凌駕してさえいると思う。
【気に入った点】
●「蛇道の怪」が良かった。断続的に立ち現れ、それが徐々に迫っているというのはやはり怖い。暗闇の山道という逃げ場の無さも含め、緊張感に溢れた良作だったと思う。
●竹林宮の殺人の真相。発想という点では間抜けですらあるが、あそこまでシンプルな仕掛けで矛盾なくあの奇妙な状況を現出させるのは、素直に凄いと思った。
【気になった点】
●「**の睨んだ通り」ってのは着地点としては微妙。個人的にはそれを否定するのがミステリィじゃろがいって思ってしまう。無論、それだけではなく、背景には複雑な因果はあるのだが、楽しみにしていたご馳走を取り上げられたような気分になった
●「逆」という設定に必然性が無い。物語を複雑にし、因果関係を隠蔽するために組み込まれたとしか思えなかった。これ「順」でも問題ないのでは?と思ってしまった。
●主観的な視点の欠如。本作は基本的に「外から眺める」構成になっているが、どうにも全体的に淡々とした印象が強い。四つの怪談話も然り。”真相”の当事者である誰かの目線に依れば、文字通り真に迫る物語が紡げたのではないかと、素人ながら思ったりもした。凄絶なお話がスッと流れた印象がある。
要所要所に光るものはあるが、全体的には振るわなかったかな。過去作との比較を避け得ないシリーズ物の宿命だろう。ただ、キャラたちへの愛着は十分にあるので、今後も楽しく読み進めることだろう。
全体的に酷評めいたが、本作のラストはマジで素晴らしい。この点だけは手放しで褒めることが出来る。本当に大好物な展開であった。
Posted by ブクログ
このミス、2019年版6位。刀城言邪シリーズのホラーミステリー。自分が読むのは5作品目。4つの怪談の見立て殺人が発生して、いつもどおり探偵の刀城言邪が推理して行くパタン。何回も間違うのだけど、それでもいいんじゃないのんって感じが繰り返されて、結局真相はなんだったっけ。てなってしまう。今回は特に最後の方が解りにくくって、犯人逮捕されてないよねってなる。
最後の方で読者への挑戦状といった感じで70個ぐらい謎が書いてあるのだけど、推理する気力がでなかった。
本格ファンの人は楽しめるんでしょうかね。
Posted by ブクログ
久しぶりの刀城言哉シリーズ。
まずは、今回の舞台となる地方に伝わる怪談が4編語られ、その地方に赴く主人公、そこで起こる奇怪な事件。と、シリーズのフォーマットを踏みつつ、事件に巻き込まれながら、その事件を解決していく。
現実的にはあり得ない筋ではあるが、論理的に謎が解明されるのはスッキリ。
そして、これまたシリーズ特有の怪談的オチがついて、久しぶりに楽しめた。
Posted by ブクログ
断崖に閉ざされた海辺の村に江戸時代をはじまりに4つの怪談が伝えられている。その怪談をなぞるように次々と起こる不可解な連続殺人事件。民俗学の調査に訪れた刀城言耶がたどり着いた事件の真相はーー
怪談の雰囲気作りはとても好み。解決篇では二転三転しながら事件を検討しつつたどり着いた真相が、二転三転に振り回され過ぎていて「んん…?」と振り落とされそうに…。ラストのアレは大好きな展開でした。