あらすじ
日本初の多目的宇宙ステーション『白鳳』で発生した、不可解な出来事。
無重力の空間をゆっくりと漂う死体は、まるで数十メートルの高度から“墜落”したかのようだった。
果たして、事故なのか、事件なのか?
従姉妹の森鷹舞衣の“計略”により、偽装結婚をして『白鳳』見学に訪れていた若き研究者・鷲見崎凌は、
謎の真相を探るため、行動を開始することとなる…。
斬新な設定とスマートな論理的解決で、各界に衝撃を与えた本格SFミステリー。
第1回日本SF新人賞受賞作を加筆修正し刊行。
序章
PROLOGUE
第一章
花嫁は周回軌道を目指す
CHAPTER1:THE BRIDE GOES TO THE EARTH ORBIT.
第二章
博士たちは虚空を漂う
CHAPTER2:THE SCIENTISTS FLOAT IN THE VOID.
第三章
素人探偵は閉鎖系を彷徨う
CHAPTER3:THE AMATEUR DETECTIVE WANDERS IN THE CLOSE CIRCLE.
第四章
シュレーディンガーの寡婦は微笑む
CHAPTER4:SCHRÖDINGER'S WIDOW SMILES.
第五章
咎人の見えざる左手またはmgh
CHAPTER5:THE SINNER'S INVISIBLE LEFT HAND,OR MGH.
終章
EPILOGUE
解説 牧眞司
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
トリックはピンとこなかったがキャラクターは好みで、メイン二人の恋愛がどうなるのかと最後までドキドキしました。動機が憎くて殺すのではないので、ちょっと珍しかったな。
Posted by ブクログ
懸賞で当たったニ泊三日の宇宙旅行。しかし、条件が「期間内に結婚予定であるカップル限定」ということである。従妹の麻衣に半ば強引に偽装結婚という形で宇宙へ行くことになった。宇宙ステーションに到着し、見学していた矢先、奇妙な事件に遭遇する。無重力状態なのに墜落で見るような傷跡や与圧服を着ている死体。謎を解くため、調査をする。
1999年に始まった日本SF新人賞。その第1作に受賞された作品です。
近未来を舞台にしたクローズドサークルもののミステリー小説です。昔、読んだかどうか曖昧で、今回徳間文庫から最新刊で発売されたということで、改めて読んでみました。
2000年当時は、遠い未来だと思っていた技術や物だったのに2021年現在、改めて読んでみると、アバターやAIといった、もう目の前に存在している技術や遠くない未来にある技術もあって、時の流れを感じました。
タイトルの「MGH」ですが、何かの略称ではなく、物理の分野に使われるものです。事件の鍵を握るキーワードになっているので、ここでは省略いたします。
舞台は宇宙ステーションです。作品で描く宇宙での雰囲気がどこかノスタルジックといいましょうか、自分が子供の頃にアニメで見た「未来都市」を彷彿させる感覚がありました。
そこで発生する、無重力なのに墜落死など現場ではあり得ない状況をどう解いていくのか。宇宙空間ならではのトリックで解決していく過程は、思わず「へ〜」と思ってしまいました。
なかなか、そのトリックが本当にできるのか疑問はありましたが、一味違くて楽しめました。
一応近未来の宇宙ということでSFですが、ミステリー色の方が強かったです。
ストーリーとしては、もう少し伏線を散りばめてもよかったとは思いましたが、基本的なミステリーの「型」に嵌りながら、宇宙空間という一味違った要素が加わって、面白かったです。
Posted by ブクログ
SFミステリの傑作。これはどう考えてもそうだから、言ってもネタバレにはならないと思うが、ゴリゴリの物理トリックによる不可能殺人物。クローズド・サークルと言うなら、これ以上のクローズド・サークルはないけれど。デジタル上の人格コピーと本体との関係をめぐる考察や、人はしを何故恐れるのかという問答などSFならではの思弁も展開されるが、お話の構造そのものは、ほぼミステリのもの。これは最近のSFの歪さの言うべきかも知れないが。
Posted by ブクログ
宇宙空間で衝突(落下)事故っぽい死体、というのがすごくワクワクさせる。
が、トリック自体は宇宙ステーションの内部構造を把握していないと解けない気がするが、
そんなに情報あったかしら?
Posted by ブクログ
59点:「夜が遅い?なんで?」
主人公は探偵でないため、犯人には興味がないけど(下手に推理したら逆恨みされる)トリックは気になる(宇宙で墜落?)という縛りがいい。宇宙ステーションに使われている材質がどういうものか蘊蓄を言ってくれるのはSFっぽさを味わえていい。事件の被害者が特に共感できる人物ではなく、主人公にすぐさま危険が迫ってるわけでもないので、偽装新婚旅行のラブコメ展開を楽しめるか否かが最後まで読み切れるかどうかの資金石。
Posted by ブクログ
この著者の作品を読むのは三作目ぐらい。物語の舞台は多目的宇宙ステーション。そこで墜落死したとしか思えない死体の出現。これは事故か?それとも殺人なのか?という、設定を見ればわかるようにSFでありそしてミステリでもある作品。一種のクローズドサークルである宇宙ステーションという舞台もミステリファンである自分の琴線に触れたが、それ以外にも犯行のトリックやそれに至る動機までもきちんとミステリの常套を踏襲しており、SF作品としてだけではなくミステリ作品としても一定の水準を超えた上質な作品だった。