あらすじ
「人の命を助けること」,これに尽きます――.日本外交史研究者として出発しながら,国連にかかわる仕事を続け,民族紛争が激化した冷戦後には国連難民高等弁務官をつとめた日本を代表する国際派知識人,緒方貞子(一九二七―二〇一九).自らの人生とともに,日本を,そして世界を語りつくした回顧録の決定版.(解説=中満泉)
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聞き書 緒方貞子回顧録
著:緒方 貞子
著:野林 健
著:納家 政嗣
出版社:岩波書店
岩波現代文庫 社会319
良書。緒方貞子氏(19270916-20191022)の記録である
1982-1985 国連人権委員会日本政府代表
1991-2000 第8代国連難民高等弁務官
2003-2012 JICA 理事長
理屈ではなく、悲惨な状況を憤る漢気、一貫した原則・目的のためには、その境界を広げ、大統領や、首相にまで会いに行く行動力、国連の安保理をつかって伝えるべきことを世界に発信していく、卓越したコミュニケーション能力。広い視野、紛争の先にある終戦後の対応への布石。
国連難民高等弁務官としての彼女には、脱帽するばかりです。
本書で気になったのは、以下です。
・世界が大きく変動する中で仕事をしてきたのだ。
・人間として見過ごせないような過酷な状況に陥る人々がいる。内戦下で発生する大量の国内避難民は、難民条約の対象から外れ、国家間で救済措置を講じるのも著しく難しかった。
・やはり知り合いを作らなければなりません。知り合いが増えれば増えるほど、あの国はどのように問題をとらえ、どう投票しようとしているとか、多様な状況を確保してまわれるようになる。
・ニューヨークで議論をしていると、日本の議論は、世界の動向からかけ離れているという印象を強く持ちました。
国際的には日本は貢献できるはずの国とみられていましたが、お金だけは出して、実施のプロセスに関与しょうとしなかったのです。
・国連には2つの顔があります。会議で話し合いをする国連、もう1つは、現場で事業をする国連です。
・私たちが向き合っていたのは、人の生き死にの問題でした。難民を放っておけばそれだけ死者が増える。そういう緊迫感はみんなもっていました。
・UNHCRの任務は難民の命を守るという原則に沿って解釈すべきだろうと考えました。保護を必要とする人を保護することに変わりはありませんから。
・UNHCRが緊急復興事業を実施する先例になりました。人道機関は、本当に難民を救援しようとすれば、難民の緊急救援から帰還、復興までをふくめたすべてのプロセスにかかわる必要があるということです。
・私は、難民保護で2つの新しい側面があることを提起しました。
ひとつは、予防的保護、もうひとつは、一次的保護、という考え方です。
・実際に保護すべき人がいるのに、人道援助活動を停止しなければならなかったのは本当に悔しいことでした。
・アナン事務総長は、「恐怖からの自由」と「欠乏からの自由」の2つを強調しました。
・国連難民高等弁務官として、目にした状況も本当に凄惨なものがありました。
見てしまったからには、何かをしないとならないでしょう?したくなるでしょう?
理屈ではないのです。自分に何ができるのか。できることに限りはあるけれど、できることから始めよう。
そうおもって、ずっと対応を試みてきました。
<結論>
・日本のみが孤立して暮らしていけることはありえません。
国を開き、多様性をそなえ、高い能力をもって外との関係を築くこと、そして、国際的な責務を果たすこと。
これなくして、日本の明るい展望は望めません。
目次
はしがき 緒方貞子
第1章 子どもの頃
曽祖父のこと、祖父のこと/父とともにアメリカ、中国へ/太平洋戦争の開戦と終戦
第2章 学生時代
聖心女子大学時代/最初のアメリカ留学へ/岡義武先生の指導を受ける/再びアメリカへ
第3章 満州事変研究
片倉日誌との出会い/満州事変を解明する/「無責任の体制」としての戦前日本/結婚のいきさつ
第4章 研究と教育
河口湖会議へ/戦前日本の自由主義者/財界研究/米中・日中国交回復の比較研究/大学人として
第5章 国連にかかわる仕事
初めての国連総会出席/国連代表団での仕事/国連総会での印象深い議題/国連代表部公使として/ユニセフ執行理事会/カンボジア難民にかかわって/国連人権委員会での活動
第6章 国連難民高等弁務官として(上)
就任まで/クルド難民危機と「国内避難民」/サラエヴォ空輸と陸路輸送/泥沼化するボスニア内戦/スレブレニッツァ虐殺からデイトン合意へ/難民帰還と共生プロジェクトへ/コソヴォ紛争と空爆の逆説
第7章 国連難民高等弁務官として(下)
ソ連解体と民族紛争/ルワンダ難民の大量発生/難民キャンプの軍事化という問題/ザイールでの紛争拡大/難民の帰還から再定住、復興へ/ダボス会議の役割/UNHCRでの一〇年を振り返って
第8章 人間の安全保障
「人間の安全保障」委員会/人間の安全保障という考え方/国内避難民と人間の安全保障/人道救援と開発援助とのギャップ問題/「保護する責任」をめぐって/日本と「人間の安全保障」/9・11からアフガニスタン復興へ
第9章 日本の開発援助を主導して
JICA理事長就任のきっかけ/現場主義から始めた改革/「人間の安全保障」と開発援助/アフガニスタンとミンダナオ/アフリカの重点化/組織統合という難関/研究機能を強化する/これからのJICAへ
終 章 日本のこれからのために
中国とどう向き合うか/開かれた多様性に基づく社会へ
主な著作
編者あとがき(単行本版)
編者あとがき(岩波現代文庫版)
解説 緒方貞子さんの真骨頂……………中満 泉
ISBN:9784006033194
出版社:岩波書店
判型:文庫
ページ数:372ページ
定価:1640円(本体)
2020年03月13日第1刷発行
2020年12月04日第4刷発行
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シンプルな中で芯の通った考え方、生き方に大変感銘を受けた。現場を見る、オープンに話し合う、課題に向き合って安全に最大限配慮しながら対処するなど、いずれもビジネスに通じるものがあると感じた。
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国連難民高等弁務官として数々の功績を残してこられた緒方貞子さんの回顧録。その揺るぎない決断力と実行力にただただ舌を巻く。問題の真の所在を見極め、その解決のために既存のルールやしがらみにとらわれず、行動を起こしやり遂げる。どうしてここまで出来るのだろうか凡人の自分には考えが及ばない。出来ることならご存命のうちに講演など直接声を聞いてみたかったが、叶わぬ願いとなってしまったのでもっと書物で学びたい。
以下、備忘しておきたい言葉。
・人の生命を守ることが一番大事なことで、そのことに従来の仕組みやルールがそぐわないならルールや仕組みを変えればよい。それが私の発想でした。
・見てしまったからには、何かをしないとならないでしょう?したくなるでしょう?理屈ではないのです。自分に何ができるのか。できることに限りはあるけれど、できることから始めよう。そう思ってずっと対応を試みてきました。
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国連難民高等弁務官に64~73歳で勤められ功績多数。政治を研究し、国連に関わる仕事もされ、様々な積み重ねの果てに推薦される。
人の命を守ることを目的に、組織の枠や慣例に捕らわれず何がベストか考え、実行され続けた方。
これは◯◯の仕事、とか考えてしまいがちであるが、やった方が良いことは、ルールを変えて実行する。国連ルールを疑えるほど、一本通った筋の源泉を自分の中に持つにはどうすれば。。議論して多様な意見を取り入れることか。
リアリスト。時間と成果を考えた時に、ルール化ではなく明文化しゆっくりコンセンサスを得ることがベストになり得る、特に国際社会では、という事例を初めて知った。
人間の人権保障。時には、これまでタブー視される軍事介入も利用するとこも判断する力。使える物は何でも使う、の素晴らしい実例。
ギャップ問題。恐怖からの自由と欠乏からの自由をシームレスに。現場で実感する課題か。現場のUNHCR, 開発のJICA どちらも変革してきた。現場第一主義と研究所の開設、両方実行のバランス感がすごい。。
何かをやらないと、世界に出ないと、と、とても焦りを覚える。
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学者としての知識、組織に入っての経験を『世の中を良くする為』に活用していく手腕が素晴らしい。家柄が立派で普通の人とは違う生い立ちだが、それにも増してご本人の頭の良さや実行力に圧倒された。
Posted by ブクログ
緒方貞子さんの生い立ちから外交意思決定過程の研究、人間の安全保障に至るまでが初学者にもわかるよう書かれている。どのように国連に入りキャリアを進めてきたのか、女性として家庭とキャリアの両立など悩みながらも懸命に最前線で取り組まれた姿勢、実務と研究は一体であり分けて考えるべきではないとの考え方などとても参考になる。
Posted by ブクログ
なんという降り幅の広い生涯を送って来た人なんだ、というのが読み終わっての第一の感想。
国連難民高等弁務官としての活動は同時代で多少は分かっていたが、犬養毅の曾孫として生まれ、満洲や国際外交の研究者として実績を残し、妻として母としての一面も持ち、JICA理事長も務めるという数々の顔を持つ凄味。
「人の生命を守ることが一番大事なことで、そのことに従来の仕組みやルールがそぐわないのならルールや仕組みを変えればよい」この言葉が今最も心に刺さる。
今年一番の本に出会ったかも。
日本人という枠に拘らず、国際人の生涯に触れたい人にオススメ。
喜久屋書店阿倍野店にて購入。
Posted by ブクログ
「聞き書」で「回顧録」ということに対する違和感は的確な予想だった。
回顧録だから自身が言い残したいことをまとめているのは普通のことで、緒方は自身が関わった仕事について記録を残すことは歴史的使命であるというのだから、成人してからはひたすら仕事のことを回顧しているのは当然のことなのだろう。
聞き手であり編者である国際政治学者2人(緒方の教え子)は、緒方が関わった仕事について把握したうえで、問いかけている。この問いかけが適切なのであろう、読みやすく情報が整理されている印象だ。
だけど物足りない。
わざわざ「聞き書」と明記していながら、聞き手の主体性が感じられない。緒方の意向に添って上手に話を聞き出しているのは確かで、それはそれで貴重な貢献ではあるが、それは名前を出さないインタビュアー(ライター)の仕事だと感じる。
なんというか、引き出した内容が「公式見解的にあちこちで話してきた内容の繰り返し」に見えるのが物足りない。
インタビュアーが投げかけた問いによって、今まで語ったことのない事柄を引き出した印象がない。現場でさまざまな当事者に具体的にどのような働きかけをしたのか、組織の士気を高めるためにどんな働きかけをしたのか、あのリーダーシップはどのように身についたのか、ライブ感のある証言はほとんどない。公式見解だらけという印象。
まあ、本人がそれを語りたいと思っていない(語ることに優先度を感じていない)のであれば仕方ないので、ないものねだりであることは自覚している。
中満泉さんによる解説が、ちょっと補完しているので「まいっか」という気分にはなっている。
Posted by ブクログ
インタビュー形式なのでとても読みやすい。
緒方貞子氏のことは、国連難民高等弁務官だったということしか知らなかった。
本書を読んで犬養毅のひ孫と知った。
祖父も父も外交官であった。
その環境からがあったからこそ、彼女の国際的な活躍があるのだろう。
とてもニュートラルな感覚の持ち主で、現場をよく知ろうとしたところに彼女の誠実さを感じる。
また、変化を厭わず必要であればルールを変えることも辞さない強さもあった。
また、謙虚さも兼ね備えていてトップになるに相応しい人である。
本書では、彼女の実績を中心に書かれているが、もう少し深く掘り下げた彼女自身の内面的なものも知りたくなった。
緒方氏が国連難民高等弁務官であった当時の難民問題についてもよく分かった。
ルールなど様々な制約のなかでとても大変なお仕事をされていたんだと知った。
Posted by ブクログ
UNHCRにいた時やそれ以降のことはNHKのドラマなどで知っていたけれど、国際基督教大学で非常勤の講師をしたときに学園紛争で大学がロックアウトされ、自宅でゼミをしたという話に緒方さんの熱意を感じたし、当時の学生さんの学習意欲にも並々ならぬものを感じた。そしてその緒方さんの行為に感激した学生たちが大学の事務に掛け合って緒方さんに正規の給料を出すように掛け合ったという事実にも感動。