あらすじ
脳は推論するシステムだ! 知覚,認知,運動,思考,意識──それぞれの仕組みの解明は進んできたが,それらを統一的に説明する理論が長らく不在だった.神経科学者フリストンは新たに「能動的推論」を定義し,単一の「自由エネルギー原理」によって脳の多様な機能を説明する理論を提唱した.注目の理論を解説する初の入門書.
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Posted by ブクログ
脳の動作の根本的な目的を、自由エネルギーの最小化であるとする理論(自由エネルギー原理)について述べた本です。
脳は、①外界への仮説を形成、②外界からの感覚信号の情報を受け取る、③形成した仮説が正しい場合に得られるであろう感覚信号と、実際に受け取った感覚信号との違いを計算、④計算結果に応じて外界への仮説を修正、というサイクルで稼働しているという話で始まります。
また、"注意を向ける"という行為は、どの感覚信号の精度を高めるかを決めることであり、注意を向けられた感覚信号の予測誤差は、仮説の修正に対して重要視されることとなります。
自由エネルギー原理の面白いポイントは、運動制御という一見推論(仮説形成)には思えない行為も、運動の目的達成時に得られるであろう筋繊維の状態(での筋センサから得られる信号)の推論と、実際に筋センサから得られた信号との差を小さくすることで実現されているという主張です。
知覚や運動だけでなく、パーキンソン病や統合失調症などの疾患も自由エネルギー原理で説明できているため、脳機能の統一的な理論になり得る可能性があるそうです。
しかし、理論ではまだ説明していない(できない)機能も大いに残されているであろうし、今後も様々な研究が進められていくのだろうと思います。
内容としては面白かったですが、やはり文庫本であるため数式はあまり触れれず、お気持ちだけの理解になってしまいました。時間がある時に数式をきちんと追う「自由エネルギー原理入門」も読めたらいいなと思います。
Posted by ブクログ
感覚、知覚、認知、運動は神経細胞ニューロンの間で自由エネルギー原理による信号が行き来することで起きる。
赤ちゃんは予想に反することを見ると注視する。予想する能力を修正しようとしている。
Posted by ブクログ
Fristonの自由エネルギー理論の紹介。
脳の持つモデルと外界を知覚した結果の差分(驚き)が意識である、と文章にしてしまうと単純なモデルなのだけど、ベイズ統計や情報理論など、かなりの数学的な背景がないと本当に意味しているところは理解できない。本書で興味を持った人は原著に当たってね、というところだろうか。
Fristonも90年代からずっと、脳機能画像の分野ではトップを走り続けてきており、その集大成として自由エネルギー理論をまとめたというところだろう。正直、本質は相当に難解だけど、関連書籍もずいぶん日本語で読めるものが出てきておりボチボチ読んでいこう。。。