あらすじ
世界のトップ経営者たちが「未来の経営モデル」として注目する「人間主義的経営」についてクチネリ自身が語った一冊
自然と人間と夢への志を尊重する「正しい労働」という概念。ブルネロ・クチネリが掲げる人間の尊厳と自然との調和を事業の目的とした「人間のための資本主義」は、イタリア国内に限らず広く海外からも注目され、数々の賞を受賞しています。
ブルネロ・クチネリは、1978年、色鮮やかなカシミヤセーターを製造する小さな会社を立ち上げ、事業の目的を倫理的にも経済的にも人間の尊厳を追求することと決めました。1982年、イタリア・ウインブリアの小さな村、ソロメオに移り、そこを「人間のための資本主義」を実現する場所と決めました。3年後には廃墟となっていた村の古城を買い取り本社としました。2000年、村外れの古い工場を買い取り、そこを改修して事業の拡大に合わせた新たな生産体制を整えました。2012年、ブルネロ・クチネリ社はミラノ証券取引所に上場しました。同年、若者たちが技術を身につけ、誇りを持って働くことを願い、本社のある城の一角に職人学校を設立しました。
ソロメオの豊かな暮らしを取り戻すため、村を修復し、文化、芸術、人々の交流を促進するために、彼は、劇場、図書館、公園などの施設を設備しました。
人間の幸福のために、人にも自然にも害や苦痛を与えずに豊かに生きる。
農村生活と哲学の中に見出した人間主義的な価値のもと偉大な企業家になるという、一人の農民の夢の話をお届けします。
【目次】
ソロメオ、精神の宿る村/幼年時代/私の心の大学/カシミヤの彩り/世界へ/親愛なる匠たち/輝く未来/創造物との対話/心の中の揺るぎないもの/日々の印象
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Posted by ブクログ
●本の内容
高級カシミアセーターの創業者、ブルネロ・クチネリが自身の経営哲学について書いた著書。売上770億円、世界137店舗に広がる会社であるが、人間のための資本主義「人間や自然を傷つけ攻撃せずに利益を生む資本主義」を貫き、事業目的を、倫理的にも経済的にも人間の尊厳を追及することとし、現代の資本主義からは一線を引いた上で正当な成長を続けている。
これらの考え方は、クチネリが農村で自然と家族の中で育ってきた経験と、書籍(特に哲学)からの学びを基に構築されており、イタリアのソロメオ村で、城の中に本社や職業学校、劇場、公園を作り実践している。
著者の夢は過去の美しさと未来の美しさをつなぎ合わせること。簡単ではないかもしれないが、現在のソロメオ村の姿がそれが決してユートピアではないことを示しているとしている。
●印象に残った点
会社を正しく発展させるには、合理性と伝統と自然の価値をそれぞれ適切に融合させることが大事だと説く。労働は人間の精神を高みに導くとしつつも、人間は身体の疲れ以上に精神まで疲れさせる必要はないとし、理想の教科書のような経営を説いている。ここまでは誰もがそうであって欲しいと考えることだが、それを信じぬき実践し成功し証明しているところにすごさを感じる。
●本の内容を自分はどう解釈したか
この資本主義の世界においても、クチネリのような人間主義的経営で発展できることを感じた。クチネリという会社がある以上、これは理想論ではなく、やれば出来ること、夢ではなく目標ということだと解釈した。
●本を読み終えて考えたこと(自分の場合はどうなのか?)
自分は、クチネリのように正しいことを正しくすることが大事だと信じ抜いて実践できるかを考えさせられた。
そして、本の最初にクチネリが娘たちにあてた言葉がとても素敵だった「夢を描こう。その夢は、きみたちの時代だけでなく、未来のすべての人々の幸福のための夢でなければならない」
Posted by ブクログ
情景描写が美しい本だった。
ブルネロ・クチネリが目指すものは経済と倫理の両面における人間の尊厳。それにつながるものが、美を大切にすること、年輪を重ねた人やものと未来の世代をつなぐこと、愛のある豊かさ、本当に偉大なものは簡素であるという考え方とのこと。
美しい会社であるということは世の中にどんな意味を与えるのでしょうか。その答えの糸口は、やはり、ありとあらゆるものと自分との関係を知るということにあります。
自分を相対化し、自分以外の全てのものに謙虚に向き合う、自分を絶対視しない、独善に陥らない、客観的に距離を置いて自分を観る。こうした行いは知性や教養という概念とほとんど同義でもあり、美しさは、小さな自分を森羅万象の関係の中に置き、それぞれの関係に適切な均衡を創り出すことによって生まれます。(P.264)