【感想・ネタバレ】明治十四年の政変(インターナショナル新書)のレビュー

あらすじ

明治11(1878)年、大久保利通が暗殺され、日本の舵取りは突如、次の世代――大隈重信、伊藤博文、井上馨、黒田清隆らに託された。彼らに託されたのは議会開設、憲法制定、貨幣制度など、「国のかたち」を作るという難問である。しかし、さまざまな思惑が絡み合い、政権内に不協和音が生じ、「明治十四年の政変」へと発展していく。大隈と福沢諭吉はつながっていた? マスコミに情報をリークしたのは誰か? 黒田がなぜ政権内にとどまれたのか? 五代友厚は官有物が欲しかった? 政変の黒幕は誰なのか? 政変が近代日本に与えたものとは? 「複雑怪奇」と呼ばれる政変にまつわる“さまざまな謎”を、気鋭の政治史学者が鮮やかに読み解く!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

明治10年代の状況は刻々と変化する
数多くの機構改革を繰り返し、多くの利益、不利益に一喜一憂する国民により、湧き上がる不穏な空気が醸成されている
陰謀論が好きな作家であれば幾通りの物語をドラマチックに紡ぎだせる

大久保・木戸亡き時代、政治決断力に欠ける政府は、民衆の憑きあげる不満に耐えかねる累卵の如き危うい状態

(1)西南戦争軍費調達に不換紙幣を発給してインフレ禍に財政問題が発生する、大隈は積極財政で借財まみれの処、外債を募り切り抜けようとするが、明治天皇すらその手腕や発想に不安を覚えた(神州が外国に買われてしまうぞ)宮廷派は外債を拒む(歴史は松方デフレを用意しています)
(2)有司専制に民衆や薩長以外の権力者がこぶしを突き上げる、だが自由民権運動とは現代人が幻想に思う貴いものではなく、権力争いに過ぎない(インフレで多くの豪農が選挙権を得る)
(3)開拓使払下げ事件は、薩摩グループの長である黒田が側近たちに破格値で税金投下されたものを手に入れる中で権勢を維持しようとした(が、リークされ御和算)
(4)自由民権運動は議会開設の問題から、憲法制定問題へと別のステージに変質したのだが、一時的に残念な事に政変の要素にもなった、民の声を誘導する大立者の福沢諭吉も権勢に接近したが、政変のゴタゴタに巻き込まれフェードアウトするが「べ、別に政治なんて興味ないもんね」とツンデレでプライドを守る
(5)実力者の立場はそれぞれ重点とする問題が異なる、また東京不在という物理的な条件を加える
岩倉は京都で療養、大隈は明治天皇の巡幸に随行、黒田は北海道で天皇を迎える・・・厄介事はそんな時に起きる

明治の知識者の実力はハンパない、神羅万象、古事古典あらゆる書物が脳内にある井上毅
彼がこの危うきバランスを壊したのかもしれない

明治11年暗殺された大久保卿に代わり次世代のリーダー大隈重信、伊藤博文、井上馨、黒田清隆達には議会開設、憲法制定、貨幣制度など近代国のデザインという難問に挑むが、絶対エース不在でバランス政治に陥り、物事が決まらない(思惑も絡み合うし不協和音も煩い)
明治十四年の政変は大隈の言葉少ない行動に不信感をいだいた閣僚の毒がもたらした
開拓使払下げを マスコミにリークしたのは誰か?
憲法などの意見書を密奏としたのはナゼ?
黒田が政権内に残るも政治力下降した
大隈は放逐されたものの、改進党という基盤を得た

西郷下野の如く明治政府はテロを警戒し、兵糧絶ちとして大隈・福沢の学校への銀行資金提供を禁じ、徴兵制免除を廃止して閉校の危機に落とす
政府は西南戦争の再発を恐れていたのだ(´・ω・`)

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2021年06月01日

Posted by ブクログ

明治十四年の政変。

1881年に起きた、大隈重信を追放する一連の政変である。財務卿として、実力を保有した大隈が追放された政変にも関わらず、高校の日本史の教科書にはごく僅かな記載にとどまっている。

この政変は実に奇妙で、難しい。

明治六年の政変のような熱さがないからなのか。

こういった不可思議な歴史の事象に対して、平易な文で記述された本書は、歴史学を学ぶ、学ぼうとしている人に読んでもらいたい。

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2021年08月10日

Posted by ブクログ

開拓使官有物払下げ事件から発した大隈重信の追放と明治政府の変革。数年の話ではあるが、激動の時代のそれぞれの人物の動きが詳細に記された約250頁。払い下げ自体の問題は大きくなかったはずだが、薩長と宮中、財政の方針、国会や憲法制定の是非や時期などの課題、新聞など世間の盛り上がりにより、せざるを得ない形で物事が動く。なかなか充実。

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2025年07月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大隈重信が政府を去り,伊藤博文が地位を盤石なものとしたうえで初代総理に就任し,憲法の公布・議会の開設に中心的役割を果たすようになった過程を詳細に考察する.
大隈はスケープゴートにされて政府を追われるのだが,結局その後に2度も総理大臣を務めることになったのは,また別の話.
なお,わが国の私学蔑視もこの政変の余波という.

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2021年07月01日

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