【感想・ネタバレ】三体問題 天才たちを悩ませた400年の未解決問題のレビュー

あらすじ

宇宙に浮かぶ3つの天体――「3体」 ニュートンの万有引力の法則によって「2体」の運動が明らかにされた17世紀初頭。科学者達は「3体」の運動を解明しようとさまざま試みでアプローチした。
オイラー、ラグランジュ、ポアンカレ……科学史にその名を残す天才数学者・天文学者たちをもってしても、この「3体の運動」をの「一般解」を見つけることはできなかった!?
なぜ解けないのか? 「解ける」とはなにか?

「三体問題」をめぐる400年にわたる解明へのアプローチを通して、人類が辿り着いたものとは?
「オイラーの8の字解」、「ラグランジュの正三角形解」など、不思議な軌道を取る「特殊解」の存在。
万有引力の法則からアインシュタインの一般相対性理論、アインシュタイン方程式、そして重力波へ。
さらに一般解への研究は「カオス理論」へと発展し、コンピュータによる数値解析手法も進化させた。
天文学では、星の位置を知るための「位置天文学」や軌道計算などさまざまな分野へとつながり、実際、20世紀の初頭には、ラグランジュの見つけた特殊解を太陽系にあてはめたときに、その解の位置にから「トロヤ群」という小惑星群も発見されている!

「三体問題」をめぐる400年の歴史の背景にある奥深い科学世界を、数学史・科学史ととも語り尽くす、2021年、最高にスリリング科学書!

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Posted by ブクログ

多体問題というややこしい問題を外観するのに良い本です.個人的にはもう少し専門的な内容を知りたいところですが,大勢の読者を想定するとやむを得ないでしょう.古典力学は全て解決済みだと思う人に,是非読んでいただきたい一冊です.(書かれている内容は相対論も含んでいます)

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2022年06月11日

Posted by ブクログ

『三体』を読む前の予習をしておこうと思って読んだ。読み物としてはとても楽しい本だと思う。しかし、読みやすくしようとしてか、方程式の計算を数式を使わず日本語で延々と説明しているところなどは逆に分かりづらかった。式が多いと本が売れないから、式を使わないように出版社から言われてるのだろうか。
ちなみに、ガンダムのコロニーや基地は地球と月のラグランジュ点に置かれてるし、宇宙望遠鏡なども太陽と地球のラグランジュ点に置かれているものが多い。
SF小説だけではなく、このように生活に密着したところにも三体問題は関係しているので、みんなも教養として読んでおいてはどうだろう。

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2021年11月21日

Posted by ブクログ

・三体問題における、5つのラグランジュ点が分かった。その科学技術的な応用が興味深い(太陽観測衛星、宇宙望遠鏡)
・三体問題が求積法や級数展開で求められないことが証明されたのは興味深い。
・三体問題のフィールドはニュートン力学から一般相対性理論へと広がっている。

数式を使わず文章のみで数学を説明する努力は買いたいが、やはり数式で展開する方が理解が早い。

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2021年05月13日

Posted by ブクログ

小さな娘さんに励まされながら書いたという本。凄く分かりやすくしようと努力してくれているのは分かるが、いかんせん題材が難し過ぎるので、中々着いていけない。

三体問題とは、「重力で引き合う3つの天体(例えば太陽・地球・月)が、初期の位置と速度からどのように運動し続けるか」を予測する課題のこと。ニュートン力学に基づけば、二体(例えば太陽と地球)なら楕円軌道としてきれいに解けるのだが、三体以上になると極めて複雑になり、すべての場合に通用する数式による解答が存在しないことが19世紀に証明された。以後、この問題は数学者・物理学者・天文学者たちを悩ませ続けてきた。

これがスタート。本書の魅力は、「ニュートン以来400年にわたる科学史」を、三体問題を軸に学習できる点。天才たちが挑んでは挫折し、それでも新しい視点を開拓していった経緯が整理されている。ニュートン、オイラー、ラグランジュ、ポアンカレといった巨人たちの挑戦が一つのドラマのように描かれる。

で、肝心な「なぜ二体までは解けるのに三体になると解けないのか」という部分だが、カオス理論や宇宙探査の軌道計算など、図解もあるが、この辺は雰囲気しか理解できぬ箇所が多い。これは読み手である私の問題だ。

「自然は完全に予測可能である」というニュートン的決定論の限界を突きつけたポアンカレの発見は、現代における「不確定性」や「カオス」への理解につながる。その意味で、科学観や世界観の転換点でもある。

解けない事を解き明かす、解けない事を証明する、意義や哲学。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

中国SFで'三体'というタイトルの小説があり、天体物理学での三体問題の困難さを知った。三体問題を解析する難しさは、物理学の初学者レベルでは理解の入口から一歩も進めない。著者は平易な解説から始めており、理解が進められるかと期待しながら読んでいくが、三体にテーマが突入すると、急に理解を阻む壁の厚さを知る。三体でさえ正確に予測できないことがわかっている現在から見れば、昔の'ラプラスの悪魔'は戯言に過ぎないことがわかる。
本書の中で特に印象に残った部分がある。
1つは重力波望遠機の壮大なスケール感に驚く。
1辺の長さが250万kmの正三角形になるよう観測衛星3機を編隊飛行させるという三体技術。
もう1つは執筆を引き受けるに至った動機の微笑ましさ。文章書きが苦手らしい著者に決心させたのは、小2の娘からの一言「売れる本を書いて任天堂のゲーム機を買って」。伏兵は思わぬ所にいる。

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2022年04月04日

Posted by ブクログ

数学には門外漢の者であるため、本書を最後まで理解出来ていないが、無茶苦茶頭のいい人たちが必死に考えても解けない問題であることは理解できた。

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2021年10月03日

Posted by ブクログ

 SF小説の『三体』で有名になった「三体問題」についての解説書。

 一体問題、二体問題は比較的簡単に解けるのに三体問題は「なぜか解けない」という事実は知っていたが、この「解けない」というのが具体的に何を意味しているのか正直あやふやだった。一般解が求められないのかなぁとか、ぼんやり思っていた程度。本書によると、状況はもっと複雑なようである。
 まず、よく「三体問題が解けない」と言われるのは、厳密に表現すると「求積法を用いて三体問題を解くことは出来ない=三体系の時間発展を求めるのに必要なだけの運動の積分が存在しない」ということである。ただしこの命題は、求積法以外の手法を用いて一般解を求められる可能性を否定しない。実際、当時の科学者は他の手法によるアプローチを試みたが、その過程で、次の結果が得られた;
平面上に制限した三体問題に対する解を級数表示すると、その級数が真の解に一様収束するとは限らない。(ポアンカレ, 1889)
従って、わずかに異なる初期条件から出発した解は、長時間経った後も近い位置にあるとは言えない。 これはつまり、三体問題が「カオス」を示すということ。近年では、計算機を用いた数値シミュレーションが主である。

 ここまでが前半で、後半は三体問題のユニークな特解と、一般相対論における三体問題について筆者の研究紹介。一般相対論的効果を考慮するとニュートン的な項に補正項が加わり複雑な方程式になるが、ニュートンの重力理論において絶妙なバランスの上に成り立っていると思われる特解が、微小な補正はあるものの概ね成り立つのが面白い。
 数式をなるべく使わずに説明するというのは良い試みと思うのだが、数式を使った方が寧ろ分かり易いんじゃないかという箇所があるし、やっぱり物足りなさを感じてしまう。

1 解ける方程式
2 解けない方程式
3 ケプラーの法則とニュートンの万有引力
4 三つの天体に対する解を探して
5 一般解とはなにか
6 つわものどもが夢のあと
7 三つの天体に対する新しい解が見つかる
8 一般相対性理論の登場
9 一般相対性理論の効果を入れた三つの天体のユニークな軌道
10 天体の軌道を精密に測る

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2021年08月28日

Posted by ブクログ

困難な問題の代名詞になっている「三体問題」にフォーカスを当てた本。その名前、や3つの物体が引き合っている時の軌道を正確に求めることが困難、というぼんやりとしたイメージしか持っていなかったので、ブルーバックスで読めるのはありがたかった。
この問題の”概要”を知るためには、ケプラーの法則から、方程式を解くとはどういうことか、から始まり、距離の二乗に反比例するという万有引力の特徴が3体以上になると途端に困難になり、さらにカオスや相対性理論が問題を複雑にするも、計算量を武器に数値解析解を得るところまで至る道のりがコンパクトにまとまっている。数式を使わずに解説するため、文章を読んでるだけで問題がスッキリわかる、というものではないが、この問題の解決がいかに困難で、一方で21世紀になってもこの問題に取り組むことで新たな発見がある、肥沃な大地であることに触れることはできる。

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2021年06月05日

Posted by ブクログ

 ニュートン力学において、互いに万有引力を及ぼしあう3体の天体の動きを記述する際、運動方程式F=M*aは求めたい変数(天体1の位置)に独立せず存する他の変数(天体2及び3の位置)を含む微分方程式であるため、そのままでは解くことができない。オイラーやラグランジュがそうしたようにある特定の状況を想定した特殊解であれば求められるが、厳密な一般解は2体間においてすら「可積分性」という壁があるために導出困難なのだという。この「可積分性」をクリアするために極座標系で未知の定数を減じ、さらに変数と独立に定まる「運動の定数」を用いて積分回数を減らすことで、時間に関して微分された運動方程式を1回の積分で位置に関する式に変換する「求積法」というプロセスが概説される。

 仮に、各天体の位置と運動量をハミルトン力学理論における位相空間内に点として表現した上で、独立の「運動の定数」を必要数導入すれば三体問題もこの「求積法」で解決可能なのだが、そもそもこの「運動の定数」を必要数準備することが原理的に不可能なのだという。さらにカオス理論の端緒となったポアンカレの証明によれば、級数展開なる手法をもってしても一般解を近似することすらできない。巷間言われる「三体問題は解けない」というのはこのことを指すらしいが、著者が繰り返し強調するように、「ある手法で一般解が求められない」ということと「解が存在しない」ことは全く異なる概念なので、将来、AIの発達や科学者の「閃き」により三体問題が解決される日が来るのかもしれない。

 ここまではニュートン力学内での話だが、さらにアインシュタイン一般相対性理論を導入すると、ニュートン力学が依拠したケプラーの惑星運動法則ですら単なる近似値であることがわかり、天体の運動は万有引力に対する補正項を含む複雑な「EIH運動方程式」なる偏微分方程式に従うという。しかしそれも「ポスト・ニュートン近似」が成り立つ太陽系などの狭い範囲内に限られ、重力波を考慮する必要があるスケールでは、解析的に天体軌道を求めることは困難なのだという。ただ、特殊解については著者の関わったものを中心に幾つかが紹介されており、特にニュートン力学における三体問題の特殊解である「8の字解」が、適切な初期条件を選びさえすればEIH方程式と矛盾なく表現できることの意外性が面白い。

 後半に進むに連れて理論が複雑になりついていくのが困難だったが、なんとかエッセンスだけは理解できたように思う。高校以来ほとんど触れることのない微分積分を思い出しつつ読むのも面白かった。しかし、いくら一般向けの書籍とはいえ、ここまで数式を使わずに表現しなくてはならないのだろうか。数式を使ったほうがよっぽど直感的に理解できたのではないか。本書の第5章など、数式を無理矢理文章で表現しているが、余計わかりにくくなってしまっていると思う。あともう一つ、いくらなんでも素人の娘さんの絵をイラストに用いるのは…いや気持ちはわかりますけど。 

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2021年05月05日

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