【感想・ネタバレ】キツネ目 グリコ森永事件全真相のレビュー

あらすじ

147通にも及ぶ膨大な脅迫状、600点以上の遺留品、さらには目撃、尾行までされながら、ついに時効の彼方へと逃げ込んだ「グリコ森永事件」犯人グループ。
その中心人物、かつ司令塔となったのが、「キツネ目の男」だった。
グリコの江崎勝久社長を自宅から拉致して監禁、身代金を要求するという「実力行使」から、青酸入りの菓子と脅迫状の組み合わせによって裏取引し、企業からカネを奪おうとする「知能犯罪」、そしてメディアや世論を巻き込んだ劇場型のパフォーマンスまで、日本の犯罪史上に残る空前絶後の事件だ。
しかし、犯人グループは、その「痕跡」を消しきれていなかった。
当時、第一線で捜査にあたった刑事、捜査指揮した警察幹部、犯人グループと直接言葉を交わした被害者、脅迫状の的になった企業幹部など、徹底した取材で事件の真相をえぐり出す。
「少なくとも6人いた」という犯人グループの、役割分担、構成にまで迫る!
「キツネ目と仲間たち」の全貌が、闇の向こうから浮かび上がる――。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

グリコ森永事件が起きたときは7歳でなんとなくしか覚えていない。
映画『罪の声』を見て事件について知りたくなり読んだ。2010年から2011年にかけての執筆ということで本書の内容は最新の情報なのだろうか。警察は2度、犯人を逮捕できるチャンスがありながら失敗している。一般人を利用した一度目のすれ違いは運もあるかもしれないが2度目の高速下での取り逃しは捜査情報の秘匿が裏目に出た…というかそもそもすぐ情報を漏らす大阪府警の体質に問題がある。犯人グループは運がよかった。

脅迫文はひらがなを多用していたのは知っていたので無学な人間によるものかと思ったが、本書で多く読むうちに正反対の印象を持った。少なくとも無学ではない。金を運ぶ時間を計算していたり用意周到でかつ慎重、かなりの頭脳犯だろう。そして金を欲していながら金に困っていない、だから少しでも異変を感じたらサッと手を引ける。


しかし本書ではキツネ目がリーダーとされているのには根拠があるのだろうか。犯人はキツネ目と、脅迫電話をかけてきた35歳前後の女性、二人の男児、ビデオに映った男、運転手の少なくとも6人と見ている。そもそも本当にキツネ目の男が犯人で合っているのか。女の似顔絵はどうか。また、本書では犯人グループが裏取引によってどこかの企業から金を脅し取ったのが事実なようにも書かれているが、その根拠について書かれていないのはなぜか。書けないのか。『罪の声』で動機としていた株価操作については否定されている。

日本の犯罪史上初の劇場型犯罪といわれる。失態を繰り返し一向に成果を挙げられない警察と、それを揶揄する犯人グループ。当時、後者に肩入れするような庶民がいたとしてもおかしくないが、マスコミが脅迫文を取り上げ過ぎたことで、陽性な、義賊的な犯人像を作ってしまった部分もありそう。キツネ目の男は今も生きていれば70代。生きているのだろうか。

裏取引で1億払って解決、ただし露見したら社会的信用を失うリスクを取るか、正道を行って100億の損失を出すか、企業経営者としては苦しすぎる選択。事件の概要は掴めたので他の関連書籍も読んでみたくなった。

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2023年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

時系列に沿って書かれているので非常にわかりやすい。
文章も、平易でありながら、読みやすく理解しやすくて、面白かった。

サブタイトルにある「全真相」はまあ、言い過ぎだろう。
だって犯人が逮捕どころか、特定もされてないんだもの。
でも、私が社会に出たか出なかったかくらいの頃の大事件。
リアルタイムでニュースを見ていたとはいえ、知らなかったことは多い。

誘拐・脅迫事件のため、犯人に存在を勘づかれないように秘密の保持に力を入れすぎたため、基本の捜査ができなかったり、捜査方針の徹底ができなかったりで、逮捕に至れなかったのは不運というしかない。
それと同時に、警察の捜査がいかに柔軟性に欠けているかが明らかになる。
臨機応変に対処する犯人とは対照的だ。

犯人と裏取引をしなかった企業が執拗に狙われたために有名になってしまったが、裏取引をした企業もあったようだ。
企業倫理より企業防衛を優先した、と著者は言うけれど、まあそういうこともあるだろう。

逆に、企業倫理を優先したために経営が悪化したのにもかかわらず、同業他社から「うまい事はやく解決しろ」とプレッシャーをかけられた企業には、本当によく耐えて脅しに屈することなく業績を立て直したと思う。
こういうトップになら、ついて行きたいと思う。

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2025年11月22日

ネタバレ 購入済み

未だ事件は終わっていない…。

2021年10月読了。

10年程昔に放送され話題を呼んだNHK の「未解決事件」で、本物の子供の音声テープを聞かされて鳥肌が立った時以来、この事件については継続的に関心を持っている。『塩の声』も面白かったがあれはあくまで創作話。とにかく真実が知りたいのである。

本書は新聞書評にて採り上げられていた為、購入。著者が十年近い歳月を掛けて書いたものだけあって、細部まで綿密に調べ上げられていると思った。脅迫された企業側の声が聞けた事が、何よりの収穫だろう。又、滋賀県警本部長の自殺のくだりは涙が出そうになった。

しかし、本書は肝心の犯人像へ迫っている告発本と云う位置付けではなく、あくまで「当時の、細部まで突き詰めた詳細な調査資料」に過ぎないと感じてしまったのは、著者に対してやや酷だろうか…?

犯人にいきなり捕えられ、運転手役を強要された方等、一生心の傷は癒されないのかと思うと、この極悪事件の首謀者に対して限りなく怒りを憶えると共に、
当時のタテ割り組織丸出しな大阪府警を初めとする警察組織の相次ぐ失態には、何ともやるせない気持ちにさせられてしまう。

オウム事件にしろ、國松長官殺人未遂事件や世田谷一家殺人事件にしろ、警察組織内の意思疏通の悪さが如実に現された事件についての本を読んでいると、「お役所のタテ割り行政の典型」を見せ付けられているようで、本当に心が萎えてしまう。

「今後はもうこんなみっともない事は起こさせませんよ!」と云う、警察側からの何らかの決意表明があって欲しいし、物事をあやふやにしない強固な姿勢こそが、市民からの信頼を勝ち取る最良の手段なのだと、心から警察関係者の皆さんにはお伝えしたい。

#切ない #深い #怖い

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2021年10月05日

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