あらすじ
全米図書賞受賞のベストセラー『JR上野駅公園口』と同じ「山手線シリーズ」として書かれた河出文庫『グッドバイ・ママ』を新装版で刊行。居場所のない「一人の女」に寄り添う傑作。
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Posted by ブクログ
上野駅、品川駅と読んで3作品目です。
上野駅も品川駅も、死んだように生きている人が、最終的にたどり着いたのが死だった。どちらも読後、程よいカタルシスを感じた。
が、この高田馬場駅は、読んでいて非常に辛かった。読むほど、気持ちが悪い方向に持っていかれた。主人公は生きようとしているのに、そのために必死に足掻いているのに、世界が主人公を否定してくる。
感情を揺さぶられたという意味では良作ですが、人には勧めないですね。(私含め)鬱傾向がある方は精神状態が悪化する可能性がありますので、読むべきではないということが読後1番言いたいことです。ですが、精神的に健全な人は、果たしてこの小説を興味深く読むことが出来るのだろうかというジレンマがあります。
主人公の女性の言動は極端すぎて理解できず、不快感まで感じました。忍者ハットリくんとか知らんし、独白部分も何言ってんだこいつ…って思ってました。
けれど、孤立奮闘する主人公が、1人勝手に溺れていく心理状態だけは、すごく共感出来てしまい、読んでいるうちメンタルが引きずられてしまいます。
何をやっても上手くいかない。自己主張しても誰も理解してくれない。すると段々と、私の考えは、間違っているのだろうか?私は誰にも受け入れられない、共存できない。なんのために生きているのだろう?存在しない方がいいのではないか?と思うようになる。
こと悲しいのは、
彼女を取り巻く問題は、いずれも彼女自身が巻き起こしたものが殆どということ。しかしそれは、彼女にとっての生き方を貫こうとしただけでもあります。
正座問題も、放射能汚染も、ゴミ問題も、彼女が目を瞑りさえすれば全て上手くいく。
けれどそれは、彼女の生き方を、信念を、全て否定することになる。彼女が子供の未来のために正しいと思っていることを否定し、悪であると思っていることを受け入れなければならないことでもある。
言動は理解できないしヒステリックすぎだとは思うけれども、彼女が孤立無援の中で1人で必死に生きようともがき苦しんだ事は間違いない。そして打ち砕かれ、世界から否定されたことも。世界に居場所が無くなった彼女は、死ぬしかなかった。
自分の信念を貫いて生きようとした結果がこれなのかと思うと、私はもう、自分の意見を述べる勇気も起きない。私もこんなふうに壊れてしまい自死を選ぶしかない未来が待ってるのかもしれない…そんな感じで、私も鬱になってしまった作品でした。
また、ヒステリックに叱られ、価値観を押し付けられても、たった1人の母親を信頼し甘える素振りをする子どもの姿は、堪えるものがありますね。
どうか、最後は思い直して欲しい。彼女に寄り添い、導いてくれる存在が現れて欲しい。そして、彼女は苦しみから解放され、再び明るい人生を歩いていって欲しい…
現実において生きづらくて苦しんでいる人に、そんな奇跡はそうそう起きないと知っているからこそ、せめて小説の中だけは。そう思います。