あらすじ
あなたの罪は、生き延びてしまったことです。
夜闇に輝くパレード、大好物ばかりのご馳走、笑顔の父と母。
家族で遊園地に行ったあの日、幸子は夢のような時間を過ごした。
そして――
両親は家に火をつけて一家心中を図り、幸子だけが生き残った。
工場の事務員として働き始めた幸子は、桐生隆哉と出会い、惹かれ合うようになる。しかし、幸子は隆哉に「一家心中の生き残り」であることを告げられずにいた。隆哉の部屋で料理を作ろうとした幸子は、コンロの火を見てパニックを起こしてしまう。
過去に決別しようと両親の墓を訪れた幸子は、雪絵という女性に出会う。
「あたしが、子供たちを殺したんです」
子供たちを乗せた車で海に飛び込み、一家心中を図ったシングルマザーの雪絵は、生き残ってしまったのだという。
彼女は、墓地から蘇った母だった。
雪絵との運命的な出会いにより、幸子の人生が大きく動き出す。
そして、加害者と被害者の思いが交錯した時、衝撃の真実が明らかになる――
『闇に香る嘘』『黙過』『同姓同名』で最注目の乱歩賞作家が放つ慟哭のミステリー!!
※この作品は単行本版として配信されていた作品の文庫本版です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
なんちゅうシチュエーションを考えるのか…
無理心中の生き残りとは…
それも2人。
無理心中され、唯一生き残る。
無理心中をはかったが生き残る。
主人公は、自分以外、家族全員亡くなった前者。
被害者と加害者という相反する2人やけど、これもいつひっくり返るか分からんねんな。
「"加害者"と"被害者"は紙一重」
復讐した瞬間から、加害者に…
復讐された瞬間から、被害者に…
でも、無理心中をさせるまで、追い込まれた、追い込んだ人らを何も責められる事なく、批判の嵐を起こす世間もええ加減で、何だかなぁ〜って感じ。
今も現在進行形で進んでいるネットでの炎上などやな。あんたらに関係ないやから、いちいち批判するな!って言いたいけど、関係ないからこそ容赦なくなんやろな。
最後に知った真実。
思いっきり、反転するんやけど、知ったからこそ、前を向けた。
自分の胸に手を当てて、被害者面して、加害者になってないかを見つめ直さなあかんと痛感する…
しんどいけど、面白い作品でした。
Posted by ブクログ
『あなたの罪は、生き延びてしまった事です』
一家心中の被害者と加害者、2人の女性が出会う時、いったい何が起きるのか。
作者の下村さんは、よくこの様なシチュエーションが生み出せますね、凄いです。
様々な思惑や過去の経緯など、見えていた景色が、ラストで一変します。
まさに、オセロで盤面が黒から白に一気に変わるように。
細かい伏線が後で効いて来ます、なるほどあそこはそういう意味であったのか!
一気読み必須の作品です。
Posted by ブクログ
幼い頃、両親による一家無理心中に巻き込まれ、ひとり生き残ってしまった女性。彼女は最愛の両親に殺されかけた記憶を抱え、他人への信頼や愛情を疑いながら生き続けた。
そんな主人公が偶然出会ったのは、無理心中で娘を殺害したが、自らは生き残り、懲役刑を終えた女性。主人公は自分の過去を隠し、彼女に接近する。
家族に殺害された女性と家族を殺害した女性。2人の心情の変化を軸に展開されるストーリー。途中、主人公家族の死の原因を作った男が登場。ここから、一気にストーリーは盛り上がり、意外な方向へ。
家族殺人に関わる登場人物たちの揺れ動く心情をしっかり描写しつつ、ミステリー性も両立している見事な作品。さらに、被害者は守られるべきで、加害者は叩かれるべきという安易な風潮を警鐘する社会性も盛り込む。
Posted by ブクログ
文庫帯に書かれている各感想が、決して誇張ではないと実感できる傑作。
圧巻なのは、終盤での墓場のシーン。
まさに、オセロで黒が白に次々と反転するかのよう。
さらに、主人公たちに希望を持たせる爽やかなエピローグ。
著者の巧まざる技と仕掛け(ある個所で、主人公と同様気づかなかった)に、やられた!との充足した気持ちに満たされた読後感。
一家心中の果てに生き残り、両親を加害者と思い、被害者意識を持ち続け苦しむ娘幸子。
子どもを巻き込む無理心中を図り生き残ってしまった母親の雪絵。
被害者と加害者ともいうべき二人が出会うことによって、事態が動き出す。
そして、雪絵の生き残った娘美香、両親を心中に追いやった加害者だと幸子が見做す高利貸しの郷田。
この二人の登場で、事態は加速度的に進展する。
ある登場人物が言う。
「今の世の中、誰もが何かの”被害者”になりたがっているのではないか。”被害者”であれば、遠慮もためらいもなく他人を一方的に攻撃できるからな。だからこそ、私は傷ついた、と大げさに被害を騒ぎ立て、自分の非を矮小化し、責任転嫁し、”被害者”になろうとする。他人を加害していた者がいつの間にか被害者ぶっていたりする」
「”加害者”と”被害者”は紙一重なのだと思い知った」
「『理性的な事実』は許されず、『感情的な正義』が先走る。
登場人物の口を借りた、著者の現代社会への告発・警鐘でもあるだろう。
Posted by ブクログ
腰壁のような帯には思わず読んでみたくなるようなコメントが散りばめられている。
読んでみたらまさにそのとおり!
主人公の幸子は一家心中の生き残り・・・
人と付き合うにも必ず自分の過去のネガティブな部分が邪魔をする。
自分の過去との訣別のため家族が眠る墓へと向かう。
そこには、過去に一家心中を図り生き残ってしまったシングルマザーだった雪絵がいた・・・
幸子は雪絵に自分の母を重ねてしまう・・・
加害者と被害者の物語
そして、本作には聖人と言って良い程の登場人物が降臨します。そんな人になりたいとも思いました。
Posted by ブクログ
下村敦史『悲願花』小学館文庫。
一家心中で生き残った被害者と加害者の双方の苦しみをテーマにしたミステリー小説。
後半の全ての予想を覆す展開には驚いた。そして、後を引くような結末。重いテーマなのに取りこぼしも無く見事に昇華させた著者の手腕には感服した。
夫婦のいさかいが絶えず、裕福でない家庭に育つ山上幸子に訪れた一時の夢のような時間。ある日、幸子の一家は遊園地でこれまで経験したことの無い贅沢な時間を過ごすが、両親は家に火をつけ、一家心中を図る。両親と兄妹を失い、たった独り生き残った幸子。
孤児院で育ち、工場の事務員として働き始めた幸子は忌まわしき過去と訣別しようと両親の墓を訪れると、そこで子供たちと一家心中を図るが生き残ってしまったという雪絵という女性と出会う。
本体価格700円
★★★★★
Posted by ブクログ
面白かった。ミステリーだけど、感動もある。幸子のように、残された側だって辛いかもしれない、けど私は、心中せざるを得ない状況にいた加害者たちの気持ちも何もなくわかる気がした。共感はできないかもしれないけど理解はとてもできる。だからこそ、私は雪絵や幸子の両親たちを全力を責めることなどできないなと思う。それがもちろん、当事者ではなく傍観者だからなのかもしれないけれど。
Posted by ブクログ
幼い頃、貧しい暮らしの中で家族と出掛けた遊園地。
両親はいつもと違い穏やかで、夢のような時間だった。
そして、幸せな時間の後に両親は一家心中を図った。
何かそのことに違和感を抱いていた幸子だけが生き残った。
17年後の幸子は事務員として働いていたが、両親への恨みを抱えたままだった。
お見合いパーティーで出会った男性と交際するも、心を開くことが出来ず、過去と決別しなければと両親の眠るお墓を訪れるが…
そこで出会ったのは、一家心中を図り生き残ったという母親の雪絵だった。
雪絵に出会い、また周りで出会う人たちに幸子は様々な思いをぶつける。
加害者と被害者との関係や憎しみや恨み。
幸子の思いは一体どこへ向かうのか…
辛辣な言葉の数々と衝撃的な展開に読むことをやめられなくなる。
2025.9.3
Posted by ブクログ
ある5人家族が火事による一家心中を図った。小学生の幸子が一人生き残った。十七年後に家族の墓で一人の女性・雪絵と出会うが、雪絵には子供3人と心中を図った過去があった。さらに子供のうち一人・美香が生き残っていた。被害者、加害者の立場で苦しむ幸子、雪絵。さらに衝撃の事実が明らかになる。
Posted by ブクログ
何かの被害に遭ったとき、腹を立てるのも、悲しむのも当然の感情です。苦しいのも当然です。しかし、憎しみからは決して平穏は生まれません。どうか、増悪に囚われ、大事なことを見誤らないでください。p254
Posted by ブクログ
一家心中で生き残った幸子の17年間の苦悩と再生のミステリー。
ずーっとずーっと自分の過去に囚われ前を向く事、幸せになる事から自ら遠ざかり、苦悩と向き合ってきた幸子の心の叫びが300ページ近く綴られている。
悲痛な叫びに読んでいて本当に苦しくなる。
このまま何の光も見えず終わってしまうのかと不安になったけれどラスト数十ページに救われた。
思わぬ展開になり少し驚いたけれど、このラスト数十ページこそおそらく作者が伝えたかった事だろうと勝手に解釈している。
加害者と被害者の思いがぶつかり合った先に見えた真実は残酷だけれど、それを知る事で前を向ける時もある。
その立場にならなければ分からない想いがある。
ただ自分は弱者、自分は被害者と思い詰める事でかえって自分を追い詰め頑なに殻にこもってしまい、人の温かさや本当の優しさを見失ってしまう事もある。
幸子さんがこれから先俯く事なく、真っ直ぐ前を向いて人生を歩んでいけたらいいな。
Posted by ブクログ
被害者気取りで加害者になっていないだろうか、自分の言動を見直す良い機会になった。
読みながら疑問に思った2点がしっかり回収され、とても満足。
少しだけネタバレを受けてしまっていたのが悔しいが、今回はトリック的なお話ではなかったので、驚き度は少なくても感動できたので良かった。
Posted by ブクログ
怒りと憎しみ、恨み、復讐、負の感情で支配されていく幸子。
ずっと暗闇の中。
読んでいて苦しかった。
元々、何か言われれば、否定的なことを思うし、恋愛に発展しても相手の言動一つ一つに緊張。
幸せになりたいのに、できない、いいのかと遠ざける。
自分の思いをぶつけることができる相手を見つけては、復讐心が加速する。
手紙にしても矛盾が、違和感があるのに、点と点を無理やり繋げて、自分の考えだけの物語の完成。
彼女が作った物語が崩れたときの葛藤。
幸子が見ていた景色が変わる。
雪絵、美香、郷田の告白。事実。
加害者、被害者、怒り、復讐、赦しとは。
Posted by ブクログ
ラストにかけて加速する伏線回収がとにかく苦しい。
主人公は、凄惨な境遇が故に全てを黒い側面で捉えることしかできなかったんだろうな。
郷田さんのような聖人君子ほど、顔の見えないSNSの世界では格好の餌食なのか。
被害者と加害者って紙一重だね。恐ろしい。
Posted by ブクログ
帯にいろいろ書かれすぎていたせいか
それほどではなかったです
展開はよかったですけどね
一家心中で生き残った娘が大人になり
そこで展開する物語
別な心中で生き残った母と娘が絡む
主人公の女の思いはおおむね理解できました
Posted by ブクログ
読み終えてさすが下村さんと唸る結末だった。
幸子が一家無理心中から一人生き残るところから始まるプロローグはあまりに重く、どこにもぶつけようのない暗い怒りを燻らせたままのその後の後ろ向きな生き方は読みながら本当に息苦しい。なので、この結末は加害者と被害者は紙一重の隔たりなのだと強く思い知らされ、それまでの景色がより一変する鮮やかな衝撃。
幸子にも雪絵にも寄り添えない。
でも、自分が上手く言葉に表せなかった育児生活の大変な面が綴られた雪絵の手紙は一読の価値あり。的確に本質を突いた子育て中の母親の叫びがここにある。
Posted by ブクログ
結構、複雑な話だった。
確かに幸子の行為は行き過ぎだと思ったし、結果的に間違ったことをしたわけだが、子供の時に負ってしまった傷はそれだけ大きかったということでしょう。でも知らなくても済んだかもしれない真実を知ってしまってこれからどう立ち直っていくのでしょうね。
Posted by ブクログ
大好きな下村淳史作品
…だったけど
どうしても幸子のことが好きになれず…
被害者は被害者という肩書の武器をもっているので
なんでも許されるのかというとそれは違う
ということ
共感と同情は違う
なんて考えながら
幸子にイライラしながら読んでた
最後までしっかり読んでるあたり
やっぱり面白かったんだと思います
Posted by ブクログ
よく考えられたプロット。文庫本の帯にあるように、最後見えていた光景がパタパタと反転する。
主人公は一家心中の生き残りの少女。大人になっても親への恨みを抱えているためか、主人公に感情移入がしにくい。主人公のその感情が物語のベースなので仕方がないのだが・・・。
Posted by ブクログ
こんな境遇で育った幸子の闇堕ちが見ていて辛かった。もう一方の親子は、そうであってくれ…と思った願いが通じてほんの少し胸を撫で下ろしました。
往復書簡の件は違和感ありまくり…からのなるほどな!とまた一つ学ばせてもらいました。
ラストで判明した事実がしんどくて考えさせられました。
〈“加害者“と“被害者”は紙一重〉
〈“被害者”と“加害者“を繰り返す負の連鎖〉かぁ、、、こわいなぁ、、、
日常の些細なことでもあるなって、、、
Posted by ブクログ
生き残りかぁ、周りには喜ばしいこととして扱われるのだろうが、本人的にはそれはそれで苦しい出来事なんだろう。
逆の立場の人間と出会ってしまったら、どういう心境だったのか確かめたくなるというものだろうな。うん。
それで納得できるのか。
Posted by ブクログ
一家心中の生き残りである幸子。同じ境遇のある親子と出会った事によって、幸子の歪んだ被害者意識は思わぬ方向に。いつでも被害者は加害者にもなりうるわけで。最後に幸子が怨んでいた郷田との墓地でのやり取りはやるせない思いになってしまった。郷田の言う通り誰かを怨んだままの方が良かったのか。幸子が少しだけ前向きになっていったところが救いでした。
Posted by ブクログ
202103/帯や書店ポップで驚きのドンデン返し展開が散々匂わされてたので、そういう目で読んでしまい、手紙の件も肝の登場人物氏も推測通りで驚けず(苦笑)。「闇に香る嘘」が良かったので期待でハードルあがったのもあるけど、物足りなかった。とはいえ、リアルに苛立ちを感じる登場人物描写の巧みさと一気読みしてしまう面白さは間違いない。希望ある結末も良かった。
Posted by ブクログ
一家心中の被害者と加害者。
2人の女性の出会いがもたらす社会派ミステリー。
自身の行動を正当化したくなる気持ちが分かるからこそ、改めてそれを文章で見せられると軽い嫌悪感を覚える。
終盤で明かされた真実には驚かされた。
その一方で、被害者と加害者って一体何なのか?について考えさせられた。