あらすじ
老いた元老書店主は朗読を通して青年を読書へと誘う。老人の読書案内は、そのまま人生の道案内でもあった! 本と友情、本と愛情……本は人と人を結び合わせる。老人介護施設で働き始めた18歳の落ちこぼれ青年グレゴワールは、本だらけの居室で本に埋もれるように暮らす元書店主のピキエ老人に出会い、まったく無縁だった本の世界に足を踏み入れる。体も目も不自由になってきているピキエ老人に朗読をするのが日課となり、それは他の入居者たちにも波及する。ある日はサリンジャー、ある日はラブレー、ある日はアレッサンドロ・バリッコ……。そして、二人は下水管を通して発禁本の朗読を希望者にこっそり聞かせるイベントまで企画する! 青年は本のソムリエのような老人の案内に従って様々な本に出会い、その魅力に取り憑かれていく。
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Posted by ブクログ
短文でテンポよいけど同時に文学的。映像がうかんでくる。物語は予想以上に色んなことがおきた。本に接していなかった青年が本にふれるようになる、それを通した成長というきれいごとばかりではなくて、老書店主のムッシュピキエの葛藤や辛さや、それをどう人生の中で消化して(消化できないで)きたかみたいなところもまた味わい深かった。人生辛いよね、ということを噛み締められる小説で、だけど同じくらい、いいこともあるね、ということもパッケージされてる小説で、面白かった。
Posted by ブクログ
『人を惹きつける朗読力・本のソムリエと共に…』
元書店主で老人ホームに入居中のムッシュー・ピキエと、ホームに勤める若者グレゴワールは、本と朗読を通じて交流を深めていく。老人の読書案内、チャレンジしてみようかな…
・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
・モーパッサン『装い』『トワーヌ』『ベロム師の獣』『売りもの』『メゾン・テリエ』『脂肪の塊』
・ナジャ『青い犬』
・ユゴー『徒刑場を訪ねて』
・アレッサンドロ・バリッコ『海の上のピアニスト』
・ルイ・アラゴン『イレーヌのコン』
・ギョーム・アポリネール『一万一千本の鞭』
・ベルナール・ノエル『聖餐城』
・モーリス・ジュヌヴォワ『十四年の人々』
・ジャン・ジュネ『薔薇の奇跡』
・ジョージ・R・R・マーティン『七王国の玉座』
Posted by ブクログ
本とは縁のなかったグレゴワールが、老人施設でムッシュー・ピキエと出会い、本とも出会っていく。
ムッシュー・ピキエのための朗読会は、広がりたくさんの人々に喜びを与え、何よりもグレゴワールが変わっていく。
人生を重ねた人がそれまでの得たものを若い人に手渡していく、そんな繋がりが好きだ。
ムッシュー・ピキエが聖人君子ではないのがまたいい。一人の人間のありのままの姿を見せるからこそ、グレゴワールと友情が芽生えたのだろう。
ムッシュー・ピキエの最後の願いを叶えるためグレゴワールは、フォントヴロー修道院までの旅をする。
そこには、王妃アリエノールが両手に開いた本を持った永眠の姿勢が刻まれている。
それは、本を愛する者であれば願う永遠の姿だ。
本から得るもの、本を通して繋がること、本と共に成長すること、本好きに喜びを与えてくれる良い話だった。
そんな好きな本もいつか読めなくなるのだろう。その時、グレゴワールのような人が身近にいたら、朗読会が身近にあったらいいな。
ラストがなんとも素敵!
Posted by ブクログ
面白かった。好きなものは好きでいい。生きていれば、それなりの苦しさや物悲しさはあるけれど、それでも人は生きていくし、好きなものが支えになる。人と人とのつながり、然り。まだまだ読んでいない本、知らない世界がたくさんあることを改めて知らされる。とても良い作品に出会えたなぁと思う。読んで良かった!
Posted by ブクログ
老いた書店主が朗読を通して人生を教えた若者に
自分がやりたかった旅を依頼する。
老人は自分の死が近い事を知っていた。
落ちこぼれの若者が成長していく物語。
老人の骨が本の中に、、、。
Posted by ブクログ
グレゴワールはバカロレア(高校卒業資格)も取れず、コネで入った老人ホームで調理場の下働きとして働いている。そのホームに三千冊の本と一緒に入居している元書店主のムッシュー・ピキエ、体も眼も不自由になって本を読むことができないピキエのために、グレゴワールは本を読んであげるようになる。老書店主は、グレゴワールに本を朗読するときに必要なことを教え、声が出るようにするためのトレーニング方法も教えてくれる。やがてグレゴワールは、ホームの朗読者となっていく。
老書店主ピキエの本への愛情がグレゴワールを変えていく。老人ホームで本を朗読する、日本の老人ホームでそんなことをしているところはあるのだろうか。ピキエとグレゴワールのチームワークにワクワクさせられる。体力の落ちた老人の未来は想像していたこととはいえ悲しい。でも、その遺言をひそかに実行するグレゴワールに拍手を送りたい。
Posted by ブクログ
高校を卒業したもののバカロレアに落ち、母の伝手で老人ホームの厨房の職を得たグレゴワール。入居者の元書店主ピキエと親しくなり、病気のため本が読めない彼のために本を朗読することになる。本書がデビュー作の著者は朗読家と紹介されている。職業なのかボランティアなのかわからないが、そうした経歴が本書の下敷きになっているのだろう。本など読まなかった青年が、老人のために朗読を続けるうちに本の虜になっていく。後半は一転してロードノベルとなるが、この過程もいい。